「マタイ受難曲」本番後の最大のお楽しみであったヤンソンス&ベルリン・フィルの演奏会初日。メインは、ショスタコーヴィチ「10番」であったが、これほど失望させられるとは思いもしなかった。
ベルリン・フィル楽員の個人技、或いはアンサンブル能力は確かに凄まじい。しかし、どこを切ってもベルリン・フィルのゴージャスなサウンドばかりが耳について、ショスタコーヴィチが沈黙していた。血の滲むような心の叫びや疼きがまったく聴こえてこないのだ。ただ、楽器を完璧に鳴らすことだけに快感を覚えているような虚しい演奏であった。
ベルリン・フィルがそういうオーケストラだ、と言ってしまえばそれまでだが、それを許しているヤンソンスにも責任はあると思われる。ボクなら許さないぞ(笑)。
明日、二日目の切符も手配済みなのだが、なんだかもう聴かなくてよいかな? という限りなく後ろ向きの気分である。
しかし、我が心の隙間風とは裏腹に、聴衆は沸きに沸いた。拍手と喝采の嵐。皆、何を聴いているんだろう? あのトーマス教会にいらしたロシアのご婦人が今宵のベルリン・フィルを聴いたなら、なんと言うだろうか? 尋ねてみたい気がする。