お陰様をもちまして、聖トーマス教会に於ける「マタイ受難曲」公演は成功裡に終わりました(写真は開場直前の撮影)!
高野さんが心配されていたボクの遅めのテンポの件も、オーケストラのリーダーであるハルトムート・ベッカーさんによれば、「マエストロが、何故このテンポなのかを皆に説明してくれたので、楽員も歌手たちも全員納得し、共感して演奏できた」「マエストロが楽員を信頼して(拘束したり、強制しない)指揮をしてくれるのが分かって、楽員たちも誇りをもって演奏できた」「体幹がぶれない指揮なので、指示がストレートに伝わってきて、腕や身体の表情から、どんな音が求められているかが伝わってきたので弾きながら迷いがなかった」。さらには、「バロックとか、そうでないとかは関係ない。マエストロの音楽は世界で唯一のものだ」とまで、評価して頂けたのは光栄なことです。
オーケストラの感興豊かな演奏、情感、技術ともに最高レベルの独唱陣のお力を借りて、合唱の東京ジングフェラインも実力以上の歌声を披露してくれました。もちろん、トーマス教会という神聖な空間が、我々に力を与えてくれたことは言うまでもありません。しかし、まだ本当に実力があるわけではないので、東京ジングフェラインの団員諸氏には浮かれることのないよう、厳しく申し伝えておきます(笑)。
終演後の聴衆の反応も暖かさを超えて熱烈ですらありました。オール・スタンディングオベーションだったことに加え、その拍手は随分長い間途切れることはなく、中でも感極まったロシアからのご婦人は、宿へ戻るための合唱団を乗せたバスに乗り込んできて、感動の言葉を滔々と(ドイツ語で)述べたてたほど。話し終えたところにボクが到着すると、「マエストロ、本当に素晴らしかった。こんな感動はほかにあるだろうか?」といって熱く抱擁されてしまいました(笑)。ひとりの女性をそうした振る舞いに突き動かすほどに大きな感動を与えることのできた「マタイ受難曲」だったということです。
以上、「どこがどうだった」「誰がどんなだった」など、演奏の具体的なことは、いまは客観的に書くことが難しいため、まずは内外からの評価の一部をご紹介させて頂くことにしました。
とまれ、四旬節に於ける(バッハ・フェスト期間ではなく)日本人指揮者および合唱団による初の聖トーマス教会の「マタイ受難曲」公演という重責を果たすことができたことは、大いに歓ぶべきことだと思います。日本よりご声援を送って頂いた皆様にも心より感謝致します。