物語が時間軸で進んでいく。
その中に、登場人物たちの独白が挿入される。
事件後に語るその独白が、主要人物の生い立ちとか、
人物像を浮き彫りにするかのようだ。
読み終えてみると……彼の本心とか、本来の性格とか、
はっきりと掴めない気がしてならない?
それでも、母に捨てられたというトラウマが要因なのか?
無意識の中で、本心を身近なひとには隠したり、
かと思えば、自分を知らない誰かには本心を吐露してしまう。
何かが屈折していて、また、鬱屈している……。
それでも、一瞬を女との共有という現実として捉えようとする。
男女がどんなかたちにしろ、出逢うことで、
そこから思いもよらぬことが起きる。
それは、人が人と向き合うことで、
予測できない本能が目覚めてしまうのかもしれない?
最後の彼女の独白は、物悲しい……。
そして思う……。
彼は現実の世界を生きていたのだろうか?
久々読みましたぁ~
本と向き合う時間も好いものです!
悪人 吉田修一著