思い込みから生じる勘違いがそれぞれに連鎖する。
だから、ずっと真実を別の思い込みが事実だと思い続けていく。
その死を巡って、居合わせたそれぞれが、
また、思い込みの連鎖を始めるのだ。
ベテラン刑事は、どこか違和感を覚えて、真の犯人へと……。
読んでいるこちら側も、登場人物たちの
思い込みから生じる「もしかして……」に惑わされる。
現実の中に過去の出来事が挿入される。
その出来事の断片が、実は思い込みから
真実を見誤っていたのだと、徐々にわかり始める。
そして、最後に気付かされるのだけれど……。
真実にたどり着くために、どれほどの時間を費やしたのだろうか?
痛みを抱えたまま、生きるしかなかった……。
真実を知っても、すべてが癒えるわけじゃない。
出来事をリセットすることはできないのだから……。
ラットマン 道尾秀介著