深く抉られるような感覚がいつもそこにある……。
きっかけは確かに静人の中に芽生えていて。
それがまたあるきっかけにより行動へと繋がっていく。
読んでいてふと思ったのですが……。
彼もいつかは悼むことに区切りをつけなくちゃいけないはずだ。
家庭を持って、夫となり父となっていくのだろうから……。
彼の行為を理解するのはなかなか難しいように思える。
それでも、悼むことで、そこで亡くなったそれぞれの存在が
いかされていくような感覚はあるかもしれません。
どこかで人生に迷い込んでいくことがある。
時に、静人の行為が奇異に見える瞬間は確かにあると思う。
それでも、彼のその行いを考えずにはいられないひともいる。
それは人生を振り返るきっかけがそこにあるからかもしれない。
存在や生きる意義とか、さまざまなことを彼を通してだろうけれど。
考え、そして答えを見つけていく……。
きっと時間はかかっても終着し、またそこから始まるのだろうと……。
静人自身も最愛の人を悼むことで、
終着し、新たな始まりを迎えたように思えました……。
★悼む人 上・下
天童荒太著