彗星なんとなくウラ話・その１３・稽古中は波乱万丈

本番中、長ゼリの迷走で、
迷惑をかけ散らかした私ですが、

実は、そのすぐ後の、ある台詞が、
心配で心配で仕方がなかった。

もしかすると、その前から、
その台詞を復唱してたのが影響したのかも（所詮、言い訳）

これもね～、また私がね～、
稽古の時は大丈夫だったのにね～、
場当たりでやっちゃったんですよね～。


いやもう、本当に、
場当たりで良かったと、どれほど安堵したか！


正面切っての長ゼリ（一度迷走したヤツ）が終わると、
私はすぐに２０歳になって、
ダンナ（徳造）の元へ駆け寄ります。


「雷太、これが俺の嫁さんだ」
「朝倉ナオです。はじめまして」

本人の気分もすっかりハタチ（怖っ！）。

が、自己紹介した途端に、

　　　なんか、周りの空気が変？
　　　ん？　どうかした？

ま、そんなことはお構いなく、
２０歳になったり７８歳になったりしながら、
例の嵐のシーンも過ぎて、１回カット。

場当たりなので、シーンを短めに切って、
そこで一度止まるのです。

よっしゃぁ、あとちょっとだー、と袖に入って、
目の前にいた舞台監督さんにニコっと挨拶。

と、
「北条さんと結婚しちゃいけないでしょ」

　　　へ？　どういうこと？

わからないまま、場当たりが終わったときに、
ヒカリに言われたのです。

「え？やっぱり気がついてなかったの？
　さっき＜北条ナオ＞って言ったんだよー」

　　　えええええっ！

そうかっ！
それで舞監さんが、あんなこと言ったんだ！
場の空気がおかしかったのは、それだったんだ！

ああああ、本番じゃなくてよかったーーー


でも、そこから・・・、
猛烈に怖くなってきたんです。

というのも、台詞の中で、
「北条さん」という台詞は、腐るほど出てくるのに、
「朝倉」という自分の名前は、この一言しか出てこない。

そりゃ「北条ナオ」って言っちゃうのも仕方ないでしょ！
って、居直ってる場合じゃない！


とにもかくにも、厳戒態勢。
何が何でも言ってはならぬ！

で、まず鏡前に朝倉ナオと貼り付け、


そして「ナオさーん」と呼ばれたら、
「はい、朝倉ナオでーす」とフルネームで返事！

あっち行っても「朝倉ナオでーす」
こっち行っても「朝倉ナオでーす」

もうほとんど、選挙運動（笑）


でも、それでも、怖かった！
一回言うと、クセがついちゃいそうで、
それで、その前の長ゼリから、ずっと緊張してて、

・・・で、長ぜりを飛ばした？

朝倉ナオの呪い？
いやいやいや、それはないな（笑）


　　　（つづく）




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