先日,イギリスがEUからの離脱をEU側に正式に通告して,離脱交渉が始まりました。前代未聞の出来事ですが,イギリスは近現代史のなかで数々の先行事例を提供してきた国です。今回の離脱も政治・経済における先行事例となるかもしれません。ゼミの専門とは異なりますが,ゼミ生には注目して欲しいと思います。新聞や雑誌の関連記事をよく読んでください。
今回の事件でイギリスという国に関心を持った人が多いようです。私は,僅差の投票で離脱が決まれば,分裂を抱えながらも,すぐさまそちらに動いていくその国の政治の大胆さに驚き,その背景となる社会制度や文化に関心を持ちました。
イギリス文化・社会に関心のある学生におすすめの映画があります。「炎のランナー」(Chariots of Fire)です。封切られたのは1981年(日本では1982年)とずいぶん昔なので,それを観たことがある学生はごく少数かもしれません。私は,中学生の頃この映画が封切られ,ヴァンゲリスが作曲したそのサウンドトラックがヒットしたことを記憶しています。実際に映画を観たのは大学生の時です。
この映画の主人公は,1924年パリ・オリンピックで金メダルを取った2人のアスリートです(実在の人物)。一人は移民の子でケンブリッジ大に所属するユダヤ人学生,もう一人はスコットランドのプロテスタント聖職者。ユダヤ人学生は,人種差別・偏見に憤り,周囲を見返し,イギリス人としてのアイデンティティーを獲得するために走ります。プロテスタント聖職者は,信仰の発露,布教活動の一環として走ります。
ユダヤ人選手は,アメリカチームに倣って,プロのコーチについて訓練しますが,それがアマチュアリズムに反するとして大学学長から批判されます。それでも,そのコーチと二人三脚でオリンピックに挑みます。聖職者選手は,安息日に走ることを拒否し,国家の威信をにおわせる皇太子の説得にも応じず,日曜日開催のオリンピック予選出場をキャンセルします。同チームメンバーの貴族の選手が,自分の出場枠を譲り,聖職者選手はその枠で専門ではない種目に出場することになります。こういうエピソードが続き,最終的にユダヤ人選手と聖職者選手は,それぞれ100メートル走と400メートル走で金メダルを獲得します。
最初この映画を観た時には,つまらないという感想を持ちました。アスリートが主役なのに,暗く,ゆっくり,淡々と物語が進むからです。主人公2人が競い合うシーンはほとんどありません。いわゆるスポ根ものではないのです。しかし,最近再度観てその面白さに気づきました。この映画は,アスリートを通して,イギリス社会を描いているのだと。
人種,宗教,階級が入り組んで社会が構成されていることが暗に示されています。異端者である移民の子のユダヤ人学生とスコットランド人のプロテスタント聖職者が,周囲との軋轢と助力を経験しながら,イギリス(大英帝国)を代表してメダルをとるということこそ,当時のイギリス社会の複雑さ,緊張,寛容を示しています。
この映画で最も印象的なシーンは,ヴァンゲリスの曲が流れるなか,聖職者,貴族,ユダヤ人を含む選手たちが,雲が垂れ込めた灰色の空の下,海岸を一斉に走る冒頭と最後です。選手たちは様々な表情しながら,国旗のしるしの入ったユニフォームを着て,走ります。炎の戦車(chariots of fire)が行く。イギリス社会を象徴しているようなシーンです。
DVDや動画配信等で手軽に鑑賞可能です。時間があるときにぜひ観てください。私が最初に観た時のように,学生の感性ではつまらないかもしれませんが,観て損はありません。
今回の事件でイギリスという国に関心を持った人が多いようです。私は,僅差の投票で離脱が決まれば,分裂を抱えながらも,すぐさまそちらに動いていくその国の政治の大胆さに驚き,その背景となる社会制度や文化に関心を持ちました。
イギリス文化・社会に関心のある学生におすすめの映画があります。「炎のランナー」(Chariots of Fire)です。封切られたのは1981年(日本では1982年)とずいぶん昔なので,それを観たことがある学生はごく少数かもしれません。私は,中学生の頃この映画が封切られ,ヴァンゲリスが作曲したそのサウンドトラックがヒットしたことを記憶しています。実際に映画を観たのは大学生の時です。
この映画の主人公は,1924年パリ・オリンピックで金メダルを取った2人のアスリートです(実在の人物)。一人は移民の子でケンブリッジ大に所属するユダヤ人学生,もう一人はスコットランドのプロテスタント聖職者。ユダヤ人学生は,人種差別・偏見に憤り,周囲を見返し,イギリス人としてのアイデンティティーを獲得するために走ります。プロテスタント聖職者は,信仰の発露,布教活動の一環として走ります。
ユダヤ人選手は,アメリカチームに倣って,プロのコーチについて訓練しますが,それがアマチュアリズムに反するとして大学学長から批判されます。それでも,そのコーチと二人三脚でオリンピックに挑みます。聖職者選手は,安息日に走ることを拒否し,国家の威信をにおわせる皇太子の説得にも応じず,日曜日開催のオリンピック予選出場をキャンセルします。同チームメンバーの貴族の選手が,自分の出場枠を譲り,聖職者選手はその枠で専門ではない種目に出場することになります。こういうエピソードが続き,最終的にユダヤ人選手と聖職者選手は,それぞれ100メートル走と400メートル走で金メダルを獲得します。
最初この映画を観た時には,つまらないという感想を持ちました。アスリートが主役なのに,暗く,ゆっくり,淡々と物語が進むからです。主人公2人が競い合うシーンはほとんどありません。いわゆるスポ根ものではないのです。しかし,最近再度観てその面白さに気づきました。この映画は,アスリートを通して,イギリス社会を描いているのだと。
人種,宗教,階級が入り組んで社会が構成されていることが暗に示されています。異端者である移民の子のユダヤ人学生とスコットランド人のプロテスタント聖職者が,周囲との軋轢と助力を経験しながら,イギリス(大英帝国)を代表してメダルをとるということこそ,当時のイギリス社会の複雑さ,緊張,寛容を示しています。
この映画で最も印象的なシーンは,ヴァンゲリスの曲が流れるなか,聖職者,貴族,ユダヤ人を含む選手たちが,雲が垂れ込めた灰色の空の下,海岸を一斉に走る冒頭と最後です。選手たちは様々な表情しながら,国旗のしるしの入ったユニフォームを着て,走ります。炎の戦車(chariots of fire)が行く。イギリス社会を象徴しているようなシーンです。
DVDや動画配信等で手軽に鑑賞可能です。時間があるときにぜひ観てください。私が最初に観た時のように,学生の感性ではつまらないかもしれませんが,観て損はありません。
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