想定外の野田首相の決断により、来月16日が投票日となる衆議院選挙が実施されることになりました。決められない政治から決めることのできる政治への転換を意図した 大いなる覚悟の決断なのかなと思いました。議員定数の削減、一票の格差の問題等については、改善の方向で自民・公明との合意ができたようですが、「0増5減」は区割り作業が間に合わず違憲状態のまま選挙は行われることになります。議員自体の痛みが伴う定数問題が後回しされて選挙が行われるところに、政治への不信が消えない面もあるのですが……。
選挙が行われることになり、あわただしく 新党が結成されたり、野合と批判される合流や連携が進められたりと、政治状況も大きく変わりそうな動きが出てきました。各新聞の世論調査では、自民党が政権を奪取する支持率を獲得し、第三極と呼ばれる日本維新の会を中心とした勢力の躍進を予想しているようです。民主党にとっては、政権党であるが故に厳しい選挙戦になるのではないかと予想されます。実現できなかったマニュフェスト、消費税率の引き上げ、東日本大震災や原発事故への対応や尖閣諸島等の領土問題等、政権を担ったが故に背負うことになったリスクを引き下げて選挙戦に臨むことになります。鳩山元首相は、「政権交代は間違いではなかったかと、国民は思い始めている。それは許されることではない。」と、野田首相に注文をつけ、引退の決意を表明したとのこと。
しかし、一方では民主党だからこそできたこともあったのではないかと思えるのです。高校授業料の無償化や官僚依存ではない事業仕分けの実施等、リベラル色を出した政策もありました。その功罪を含めた冷静な評価が必要なのかなと思います。今後は、各政党の選挙公約が公表されるはずです。それぞれの方針や政策を吟味しながら、選挙に臨みたいと思います。
原発の問題、TPPへの参加問題、対中、対韓の問題を含めた外交・軍事政策、消費税の値上げ問題、教育政策(教科書検定制度を含めた)、憲法改正問題、経済政策(日銀との関係も含めた)等、個々の政策に対する方針の違いを視野に入れながら、日本の未来を託せる 政党や人物を選びたいものです。
ただ私が今憂えるのは、尖閣諸島の問題が発端となって 世の中の重心が右方向に傾いているような印象を覚えることです。内向きに思考が働き、愛国心を強調した主張が幅を広げ、これまで培ってきた身近な国々との信頼関係までもが、失われてしまうのではないかという心配です。経済や文化面では国境を超えた交流や信頼関係が確立されています。世界に開かれた日本であるためには、どんな政策や考えが必要なのかについても、じっくりと考えてみたいと思います。