泊ったホテルの玄関わきで,夜に煙草を吸っていた時のことです。
近くでバタバタバタバタという音と気配を感じ,何だろうと思ってあたりを見回しました。
玄関の支柱のそばの地面に,大きな蛾がいて,羽をバタバタと動かしていたのです。コマのように回りながら,必死に舞いあがろうとしているのですが,体は地面から離れることができません。よく見ると,広げた羽のあちこちに穴があき,何度も地面に打ちつけたために羽の外側がボロボロに傷んでいました。
街灯に引き寄せられてどこかから飛んできたのでしょうか。そして帰ろうとしていたのでしょうか。
打ちつける羽の音が,命の鼓動のように胸にひびきました。蛾という姿の向こうに命が見え,音を通して確かな命の重さを感じました。
次の朝に同じ場所に来てみると死んでいました。生きていた証のように,羽の一部が風に吹かれてわずかに揺れていました。
どんな生き物にも命があるということ,一生があり死があるということ,そして確かな命の重さがあるのだということを強く感じました。
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