あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

死刑囚だった島秋人という歌人について

2010-05-20 08:39:55 | インポート

本の整理をしていて学生時代に読んだ短歌集を見つけ、改めて読み返してみました。死刑囚であった島秋人という人の短歌を集めた「遺愛集」というタイトルの歌集です。 ※「遺愛集」東京美術選書9 東京美術社より発行

○この澄めるこころ在るとは識らず来て

                 処刑まつひととき温(ぬく)きいのち愛(いと)しむ

 この句は、死刑が執行される前日に書かれた辞世の短歌です。

 この短歌に続いて彼は、次のことを書き遺しています。

 「処刑前夜である。人間として極めて愚かな一生が明日の朝にはお詫びとして終わるので、もの哀しいはずなのに、夜気が温かい感じ得る心となっていて、うれしいと思う。…」

遺愛集は、本人が処刑された後に発刊された歌集です。歌人の窪田空穂の序文によると、島本人が、遺族の思いをくみ取り、歌集の発刊は自分の死後という約束があったようです。

 死刑囚である島秋人(本名ではありません)が、なぜ短歌を書くようになったかというと、そのきっかけは教育者との関わりにあったようです。

 獄中から彼(島秋人)は、これまでで唯一の良い思い出であった、中学時代の恩師であり図工の時間に絵の構図がすばらしいとほめてくれた先生に、手紙を出します。その先生の返書には、彼が見たいと依頼した子どもの描いた絵とその先生の奥様が書いた短歌が3首添えられていました。この短歌が島秋人の心を打ち、短歌をつくり続けるきっかけとなりました。

 島秋人が信頼し遺愛集の原稿を託した、前坂さん(獄中に高校生の時から花の差し入れをし、島を励まし続け、やがて高校の教師になります)の書いた後書きに、彼からもらった手紙を紹介した箇所があります。前坂さんが先生になることを知り、島秋人が送った手紙の一節です。

「 教師は、すべての生徒を愛さなくてはなりません。一人だけを温かくしても、一人だけを冷たくしてもいけないのです。目立たない少年少女の中にも平等に愛される権利があるのです。むしろ目立った成績の優れた生徒よりも、目立たなくて覚えていなかったという生徒の中に、いつまでも教えられたことの優しさを忘れないでいる者が多いと思います。忘れられていた人間の心の中には、一つのほめられたということが一生涯繰り返されて憶い出されて、なつかしいもの、たのしいものとしてあり、続いていて残っているのです。」

彼自身の体験をもとに、前坂さんにはこんな先生になってほしいという願いが込

められています。

○ほめられしひとつのことのうれしかり いのちの愛しむ夜のおもひに

 島秋人の人生の中で、その先生の出会いとその一つのほめられたことがどんな

に大きいものであったかが、短歌から読み取れます。

 小さい頃に母を亡くし、病弱で学校の成績も悪く、犯罪者への道をたどって

しまった彼にとって、一つのほめられたということが一生涯の思い出として残

っていたのですから。

 すでに教職は離れましたが、教師として子どもたちと関わっていく上で、最

も大切にしなければならないこと(すべての子どもを平等に愛し、一人ひとりの

思いを真摯に受け止め、その子のよさや個性を認めていくこと)を改めて教えら

れたような気がします。

 その後、島秋人は歌人として、やわらかな感性をもとに、刑死するまでの間

にたくさんの短歌をつくり続けます。

 自分の犯した罪や遺族の方への思い、命あるものに対する愛しい思い、亡き

母や老父への思い…一つ一つの思いが短歌となり、島秋人という人の内面を豊

かにそして澄んだものに清めていきます。

※島秋人のプロフィール

昭和9年6月28日生まれ。幼少を満州で育ち、戦後父母と共に新潟県枕崎市に引き揚げたが、母は疲労から結核になりまもなく亡くなった。本人も小さい時から病弱で、学業成績も悪く、周りからうとんじられるとともに性格がすさみ、転落の生活をおくるようになり、少年院にも入れられたことがあった。

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私の理想郷でもあったS小時代のこと

2010-05-14 22:14:11 | インポート

なつかしい人に再会する機会があり、かって勤務していたS小時代のことを思い出しました。

S小は、全校児童37名(赴任当時)の学校で、他の学校にはない行事として『全校合宿』と『全校ピクニック』がありました。

『全校ピクニック』は、日帰りで近くの山まで出かけ、バーベキューを食べながら楽しく過ごす行事でしたが、『全校合宿』は1年から6年までの全校で自然の家などの施設に泊まり、活動する行事でした。その合宿の活動内容を決める『児童総会』で、結論が出ず何時間も話し合ったことがありました。

それは、宿泊する日の夜に予定していた『肝試し』をやるかどうかについての話し合いでした。1年生のK君から、自分は夜に外を歩くのはとても怖いので、『肝試し』をやめてほしいという提案がありました。それに対して、自分は楽しみにしているのでやってほしいという意見やK君の気持ちを考えると別な活動内容にしてもよいといった意見が出され、やるかやらないかということについて議論が続きました。その中で、K君の気持ちをもう一度聞いてみようということになり、改めてK君は涙を浮かべながら、自分がとてもこわがりで夜にトイレに行くのも一人では行けないということを話しました。

その時から、話し合いの方向が一つになっていきました。K君の気持ちを理解し、K君も楽しくなるような活動にしていこうという感じになったのです。

結論としては、『肝試し』の前に、花火大会をやり、その後に、『肝試し』にやることになりました。K君については、参加できそうだったら参加してもらい(先生と一緒に)、もし参加できなかったらその間先生と一緒に花火をしたりして待つということになりました。

実際にはどうだったかというと、ちゃんとK君もみんなと一緒に参加することができたのです。

この話し合いは、2時間の予定の総会では結論が出ず、さらに臨時の総会を開き、合計で4時間ぐらいかけて話し合ったように記憶しています。K君以外の1年生の子どもたちも含め全員が自分の意見を語り、納得する形で一つの結論を導き出すことのできた話し合い活動だったように思います。

一人はみんなと みんなは一人と 一つに心が結びついた話し合いでした。子どもたちはもちろんですが、先生方も子どもたち一人一人の考えを大切に受け止め、どの子も納得できる結論が導き出せるよう温かく見守っていたように思います。

子どもの 子どもによる 子どものための 学校

そのイメージが具体的に想い浮かぶ出来事だったように思います。

スペインには、子どもたちがつくるべンポスタ共和国があり、そこでは大統領は子どもで、子どもが大人を雇い、教師や共和国を支援する仕事に従事しています。収入は、子どもたちだけで演じるサーカスのチームをつくり、世界中で公演して得た収益金で賄っているとのことです。

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田んぼに 水が入り始めました

2010-05-13 21:08:31 | インポート

田んぼに水が入り、文字通りの水田の風景が見られるようになりました。

今週末あたりから田植えが本格化するのでしょうか。

水の匂いが風に乗り鼻先まで届く季節がやってきそうです。

この匂いを、私は小さい頃から好きでした。

春なんだという実感を、水の匂いや田植えをする人々の姿、

太陽の光を反射して輝く水田の風景を通して、強く感じたからです。

この季節になると思い出す詩があります。

私が中学生の頃に国語の教科書に載っていた詩だと思うのですが、

草野心平の『たまごたちのいる風景』という詩です。

その一節(繰り返される)を今でも覚えています。※現代仮名遣いで表記します。

   みずはぬるみ。

   みずはひかり。

   あちこちの細長い藻はかすかにゆれる。

   ゼラチンの紐はそれぞれ黒い瞳をとじ 親蛙たちは姿をみせない。

   流れるともなくみずは流れ。

   かわずらを。

   ああ雲が動く。

   ……

  

水田に映る 春の雲の姿が目に見えるようです。

栗駒山の姿も、雲の向こうの青い空も 水田に映り

遠くの水田は、春の光を反射してきらめいている… 

田植えをする人々の姿と一緒に そんな景色が目に浮かんできます。

水の匂いも 春の風と一緒に その景色を包みこんでいます。

蛙の卵たちも そこで働く人々の姿も その景色に命を吹き込むように 春を演出しています。

なつかしい『卵たちのいる風景』が見られるのも もうすぐですね。

  

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雨の日ですね!

2010-05-13 00:14:21 | インポート

雨の日であっても、雨雲の向こうには青い空が広がっているのでしょうね。

見えるものだけにとらわれていると、その向こうにあるものの存在を忘れて

しまう時があるように思います。

本当に 大切なもの かけがえのないもの 尊いもの かんじんなもの

のことを 想像力を大にして 見つめなおしてみたいものです。

かんじんなものは 目では見えない 心で探さないと…

また、星の王子様の言葉にもどって考えてみたい 雨の日です。

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みずみずしい緑の世界

2010-05-10 22:11:33 | インポート

今の時期の木々の緑がいいですね。

どの木も、それぞれの色彩と枝の広がりを持ち、新鮮な生命力をその姿に内包し春を演出しています。

生き生きとした立ち姿を通して、みずみずしい生命力を感じます。

命あるものの輝きがまっすぐに心に伝わってくるからでしょうか。

多様な方向に伸びる枝々が形作る空間の美しさ。青い空が背景にあることで、立体的な空間の奥行きや深さも感じられます。

風に揺れる一枚一枚の葉が、命の輝きを表現し

その一つ一つの色彩が、命の広がりを表現しているかのようです。

一本の木と向かい合うことで

自分自身が生命力という水で、洗い清められているような印象がします。

しばし 黙して 木と向かい合う時間を共有したいと思います。

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