先日のブログでかけ算についてふれましたが、後で気づいたことがありましたので、補足したいと思います。合わせて、割算の指導についての 私見をまとめてみたいと思います。
○3×9 と 9×3 の違いと共通点
九九を指導する場面では、1あたり量を表すタイルを使って、かけ算の形態をイメージ化していきたいと思います。3×9であれば、3のタイルが9本横に並ぶイメージとなります。したがって、3×9と9×3では違ったタイルの配列となります。9×3では、1あたり量の9のタイルが、横に3列並んだイメージとなります。計算上は、答えは同じとなりますが、かけ算のイメージが異なることに子どもは気づいてくれるはずです。その際には、具体量の問題を提示し、一緒に考える場面を設定しておきたいものです。例えば、「3円の鉛筆を9本買ったら、全部でいくらになりますか。」という問題と「9円の鉛筆を3本買ったら、全部でいくらになりますか」という問題を提示し、その上で立式させながら、二つのかけ算の違いと共通点(合計の金額は、どちらも27円)について考えさせることで、理解を深めることができるのではないかと思います。
○割算の指導について
割算は、(1あたり量)×(いくつ分)となる かけ算の考えをベースにすると、求める答えによって ①(1あたり量)を求めるもの(等分除) ②(いくつ分)を求めるもの(包含除) と、大きく2つに区分することができます。例えば 30÷5 という式が成り立つ問題であれば、①30個のミカンを5人で同じように分けたいと思います。1人あたり何個のミカンになるでしょうか。 ②30個のミカンを1人に5個ずつ分けてあげると、何人の人に分けてあげられるでしょうか。 という二つの問題が考えられます。
私が現役だった頃の教科書では、割算の導入では、いくつ分を求める②の問題が取り上げられていたように記憶しています。現在は、どういう取扱いになっているかは確認していませんが、1あたり量が分かっていることで、5×1 5×2 … という 5の段の九九を使って答えが求めることができるという利点があるからなのではないかと考えました。割算の意味を理解するということより、答えの求め方にウェートを置いた取り扱いになっていたように記憶しています。
しかし、割算という計算に初めて出会う子どもにとって、割算の意味を理解するには どちらの方が適切かと考えならば、私でしたら①の(1あたり量)を求める問題の方を取り上げます。同じように等しく分けるということ(等分すること)が 割算の基本となるイメージと考えるからです。
①の問題を具体的に指導する場合には、初めにどうやって分けたらいいのか考えさせます。等分するというイメージを強調するために、適当に分けて見せながら、これでいいのかと問いかけてみるのも一つの方法です。次に、実際にミカンを使って、答えを求めてもらいます。30個のミカンと5枚の皿を、グループ分用意しておきます。グループ毎に分け方を発表してもらった後に、教師が分け方を実演します。
初めに1個ずつミカンを配ります。そして黒板に(1×5=5)と板書します。次に、jまだまだミカンがあるから、もっと分けてあげることができるね と話しながら、1個ずつ 配るミカン数を増やしていき、 2×5=10 3×5=15 4×5=20 5×5=25 6×5=30 と板書していきます。
さあ、これで5人に 同じ数だけ分けることができましたが、求める答えは何個でしょう。こう問いかけて、一人あたり6個で あることを確認します。その上で、この問題の式は、30個のミカンを5人に同じ数ずつ分けてあげたので、30÷5 と書き表すことができるということ、答えが6個なので 30÷5=6 答え(6個) と書くことを指導します。
次に、答えの求め方について考えさせます。板書した九九を手がかりに、5という分ける人の数が共通していることに着目して、5の段の九九を使って求めることができることに気付かせます。ただ、かけ算のイメージがしっかりできている子にとっては、(いくつ分)×(1あたり量)という考えになるので、混乱が生じるかもしれません。そのため、1個ずつ5人に分けていけば、5個ずつ増えていくということに気付かせながら、ていねいに取り扱う必要があるのかなと思います。
◆問題を液量にすることで、理解がしやすく、タイルへの発展も容易になるかもしれません。問題例:30デシリットルのミルクを5人で同じように分けたいと思います。1人分は何デシリットルになるでしょうか。 ただ、液量は 子どもにとって 正確に分けるという 操作段階での活動に難しい面があります。教師が最終的に確かめの分け方をやってみせることで、等分するという割算のイメージを印象付けたいと思います。
○等分除の有効性
余りのある割算や筆算を取り扱う時に、等分除の有効性を実感できます。
問題例:32個のミカンを5人で同じように分けたいと思います。一人あたり何個のミカンになるでしょうか。 これを先の方法と同じように、5つの皿を用意して分けていきます。答えは、1人分は6個になり、余りが2個となります。答えも余りも同じミカンの個数になります。
しかし、包含除の問題<32個のミカンを1人に5個ずつ分けてあげると、何人の人に分けてあげられるでしょうか。>となると、答えは6人となり余りが2個となるので、答えと余りが異なる単位となってしまいます。
等分除では、全体の数<32個>も、商も、余りも すべて同質のミカンの個数として取り扱うことができるので、タイルに置き換えて考えることができ、筆算の指導も混乱なく指導できるのではないかと思います。筆算の形態では、全体の数<割られる数>の上に商が立つことになります。同質の数<量>であることで、子どもたちも違和感なく筆算のイメージをつかむできるのではないかと思います。したがって包含除については、基本となる割算の指導(等分除による割算の意味の理解、立式と答えの求め方、分離量だけではなく連続量<長さ、液量、重さなど>も含めた等分除問題、筆算指導等)が終わってから、取り扱うようにしたらいいのではないかと考えます。