金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【民主主義の賞味期限④】 台湾の動きは八重山諸島へ波及する!?

2021-02-26 06:44:27 | 金融マーケット

【昨日の続きです】

 

 昨日は、朝鮮半島こそが、民主主義の将来を左右するキーになることを申し上げました。本日のテーマは台湾です。この台湾も同じく、民主主義の行く末を決める歴史の分岐点となる候補であります。

 「台湾はもともと中国の一部であり、ここが中国本土と統一されたところで、日本に関する影響は限定的」などと考えていると大きな間違いを起こします。もともと中国の一部というのは正しいのですが、「じゃ、沖縄は?」「八重山諸島は?」についてはいかがでしょうか?

 琉球王国はそもそも独立した海洋国家でしたが、中国との関係では明・清とは冊封関係、すなわち臣下の関係であり、また17世紀からは薩摩の直接支配を受けた国でした。つまり主筋が2つある存在であり、明治以降、その領有については日本と清国で長きにわたり協議事項となっていました(実効支配は日本でしたから、今の北方領土問題とは異なりますが‥)。

 明治12年に明治政府が琉球王国を強制併合して沖縄県とした後、それに異を唱える清国との協議が続き、明治13年には日本から清国に対し、八重山諸島・宮古島は清国、沖縄本島は日本、という案を提案してほぼ合意しかけましたが、清国内部や沖縄からの反対もあり調印には至りませんでした。その後、日清戦争が勃発、結局は明治28年の日清講和条約で台湾が日本に割譲されたため、先般の協議内容はうやむやになりました。

 現在、対中国、対台湾の間で領土問題は尖閣諸島だけですが、もし台湾・中国が統一される事態になった場合、中国は日清戦争前の話をぶり返してくるのは必至と考えるべきです。

 いやいや、台湾が中国へ帰属する訳はない、第一、アメリカが許すはずはない、と言う方がたくさんいると思います。確かにそのとおり。もし、台湾が中国に統一されれば、それはアメリカが負けたことと等しい。しかし、アメリカが考える優先順位が変わって、例えば、朝鮮半島を取るか、台湾を取るか、と考えて、台湾を譲歩するということは有り得ます。

 実は2017年の秋あたりは危なかった、という人が何人かいらっしゃいます。評論家の寺島実郎氏は、この時期、トランプと習主席の間で、北朝鮮をめぐってビッグディールが成される可能性がある、と色んなところで講演されていました。寺島さんのビッグディールとは、習主席が北朝鮮の核開発を終わらせる見返りに、アメリカが台湾から手を引くかもしれない、という意味だったと思います。

 万が一、台湾が中国本土と統一されれば、民主主義の最前線は、単に尖閣諸島だけでなく、八重山諸島(与那国島・石垣島・西表島等)と宮古島そのものになります。我々日本人が、その矢面に立たされることを認識しなければなりません。もっと、民主主義の危機について、僕らは深刻に考えるべき存在であり、追い込まれつつある存在だということを忘れてはなりません。


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【民主主義の賞味期限③】 トリガーは朝鮮半島か!?

2021-02-25 06:57:22 | 金融マーケット

【昨日の続きです】

 

 世界の民主主義が崩れ落ちていくトリガーは、どこで起こるのか。すでに香港で動きが始まっていますが、これがそのまま世界に広がるとは思えません。ミャンマーでの軍部クーデターも中国の影がチラつきますが、ここもトリガーまでにはならないでしょう。しかし、朝鮮半島や台湾は、そのトリガーとなる危険地帯であると言えます。ここで、オセロの石が白から黒に変わることで、世界の情勢は一変します。なぜなら、アメリカの敗北を意味するからです。

 アジアの地政学リスクは、少し前までは「北朝鮮リスク」と呼ばれていました。核開発や大陸間弾道ロケット実験をテーマに、北朝鮮対関係5か国という図式で、このリスクへの対応が考えられていました。この時は、とにかく北朝鮮を孤立化させ、経済的に兵糧攻めのような状態に追い込み、彼らが弱り、ヘタるのを待つのが作戦で、5か国の連携も悪くありませんでした。

 しかし、2017年に発生した金正男暗殺事件や核開発の実質的な完了、それから2018年のペンス副大統領演説を契機とした米中対立構造により、状況が一変してきています。孤立していた北朝鮮が、今や中国と連携しながら、自らのシナリオ通りに周囲を動かす、まるで演出家のようです。今や、むしろ隣国である韓国が、中国か、アメリカか、の二者択一に追い込まれており、米韓同盟を維持しながら、中国との適距離を保つという、従来からの戦術が取り得ないで藻搔いている状況と言えるでしょう。

 中国は一昨年のペンス演説以来、北朝鮮に替わってアメリカの攻撃の第一目標にされていますが、トランプ政権が終焉して、バイデン政権の本音を見透かしながら、老獪な姿勢を維持しています。果たしてバイデン政権が、トランプ政権を後ろから制御していた共和党保守派ほど、強権的な施策を続けることが出来るかを、ジッと観察している感じ。

 韓国と並んで、最も危険な状況にあるのが日本だと言えます。日韓両国の関係悪化は今さらここで論じるつもりはありませんが、この状況を一番喜んでいるのが北朝鮮と中国。韓国と米国・日本との関係がますます薄くなってきていますが、米韓同盟が壊れてしまえば、韓国の文政権は、そのまま中国陣営へ奔る可能性が大。そうなると、北朝鮮に吸収される形で朝鮮半島が統一される可能性すら有り得ます。

 今の韓国の民主主義は極めて危うい状況にあって、一般民衆は、自由と国民主権は所与の権利で侵されるものではないと信じ切っている。中国陣営に入って、北朝鮮との統一に向かえば、世界で最も自由とは無縁の、独裁国家の捕囚になるのは明らかなのに‥。それでも北朝鮮との統一を希望する世論があとを絶たないのは、ひょっとすると、今の韓国の極端な格差社会に、既に希望を失っており、それより悪くなることはないと、タカをくくっているのか。しかし、北朝鮮には「市民」という概念すらなく、「民衆」は単なる「国家の所有物」に過ぎません。しかも、統一後は暫く「自由を要求する市民の粛清」が数多く行われるのも間違いありません。

 日本にとっては、韓国が中国陣営に鞍替えするということは、世界における民主主義社会(自由主義社会)の境界線が、38度線から対馬沖に書き換わるということ。その意味するところは、何か有事が発生するとすれば、日本の国境線上で起こるということに他なりません。

 以上から、民主主義の将来を左右するのは「韓国の動向」ということになります。隣国の韓国を、絶対に中国陣営に行かせてはならないということ。もう一度、我々日本人が最重要事項として認識すべきことだと考えます。(続く)


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【民主主義の賞味期限②】 ノブレス・オブリージュの不在と衆愚政治

2021-02-24 06:51:09 | 金融マーケット

【昨日の続きです】

 

 民主主義を安定させるためには、優秀な政治的リーダーを安定供給させるためにも、教育が行き届いた、ある程度の上層階級の形成が必要になりますが、そのような特権階層を一般市民に是認させるための前提条件が、この階層の「リーダーとしての矜持や自己犠牲の精神」、すなわち「ノブレス・オブリージュ」であると前回述べました。

 実際、19世紀の英国やフランスの貴族の若者たちは、世界各地で発生する紛争に対して、自ら進んで従軍し多数の戦死者を出しています。また、ついこの間まで、アメリカの大統領候補になるためには従軍経験が必須でした。父ブッシュは太平洋戦争でグラマンのパイロットであり、ゼロ戦に撃墜されたにも拘らず、無事生還したエピソードが有名でした。共和党候補になったマケイン上院議員はベトナム戦争時に捕虜になり、長期にわたる拷問を受けたながら、これもまた無事生還した国家の英雄でした。

 しかし、現在の世界各国の政治リーダーや官僚・企業経営者・富裕層はどういう状況でしょうか?

 従軍経験の乏しさはもちろんのこと、資本市場の合理性の帰結として、あまりに行き過ぎた格差拡大を是認するばかりで、「取り残された人々」への配慮に欠ける国家リーダーが多数になっています。

 取り残された人々の閉塞感とは、「真面目にコツコツ働き」「戦争があれば国のために命を懸けて戦い」「国外で苦労する人々がいれば、積極的に移民として受け入れ」「それなのに、自分たちは、親よりも子が、子よりも孫が、豊かになっていくことが実感できない」というもの。正義の最前線で闘っていたのに、その人々を取り残したばかりか、ウォール街の強欲者たちばかりを持てはやしていると、不満が溜まりに溜まっている感じ。

 一方で、特権階層ともいえるリーダー層・富裕層には、いざとなったら命を懸けて自分たちを守ろうというノブレス・オブリージュの精神が見えないばかりか、ぜいたくな暮らしをただ満喫しているだけの存在に見える。それなら既存のエリートの言うことなんか信じるものか、となって、ヒラリー・クリントンは負けた訳ですし、この不満を煽るだけ煽って、大統領になったのがトランプ。さすがに、ボロが出て1期で終わりましたが、国民の分断を利用した「ポピュリズム政権」の代表的事例となりました。

 民主主義の賞味期限を延ばしていくためには、時間がかかっても、ノブレス・オブリージュの精神が溢れるリーダー層を育てていくしかありませんそれが間に合わなければ、過去の歴史と同様、独裁的な帝政の時代へ向かうことになると思います。民主主義と一党独裁の国家主義、現在、分が悪いのは民主主義の方です。共産党一党独裁の中国国家資本主義が、世界を支配する次のスーパーパワーになるのかもしれません。この危機感が、絶対的に日本人には足りないのです。

 ちなみに、ポピュリズムにより民主主義が壊れかけている危険地帯は、世界中に幾つかありますが、我々にとって最も身近な地域が朝鮮半島です。民主主義の最前線が38度線のままか、対馬沖になるのか、ここは改めてテーマにしたいと思います。(続く)


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【民主主義の賞味期限①】 ノブレス・オブリージュは何処に?

2021-02-23 08:50:08 | 金融マーケット

 本ブログの初期に掲載した記事で、「民主主義の賞味期限」シリーズは、今でも多くの方からアクセスを頂いています。改めて再掲載したいと思います。

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 我々は歴史教育の中で、古代民主主義が理想に溢れていたと習った一方で、その崩壊過程については詳しく教わっていません。古代民主主義が廃れていった歴史の実態は、数多くの優秀なリーダー達が、初期民主主義の日々の運営に苦労した挙句、プラトンなどは「こりゃ駄目だ、衆愚政治だ!」と断じたうに、有力貴族との共同統治手法である共和制という形で延命したのち、結局は、独裁制である帝政へと変貌することで、その儚い歴史を閉じることになります。

 私は近代民主主義も同じような変遷を辿っていると考えています。民衆の不満が爆発して革命を生んだ直後は、当然ながらガバナンスは安定せず、数多くのリーダー達が短期間で入れ替わります。そして多くのリーダー達が、クロムウェルやロベスピエールのように、混乱の中で命を落としていきます。

 民主主義が安定し始めるのは、財力・知力・権威を兼ね備える貴族階級/上層階級の一部が、自由と国民主権の考え方に共鳴して、これを支え始めてからになります。彼らは、時代によって、「元老院」という名だったり、あるいは「貴族院」、あるいは「上院」のメンバーとして、民主主義を支えていきます。

 また、彼らは、一般市民との間には気の遠くなるほどの経済格差を有していながら、不思議なことに、市民からは誹謗中傷の対象にならず、むしろ民衆の尊敬を集める存在でした。その理由は、いざ国外との戦争となれば、彼らが真っ先に参戦して命を捨てる覚悟や責任を宣言する存在だったからです。この精神こそが「ノブレス・オブリージュ」です。

 民主主義を安定させるためには、優秀な政治的リーダーを安定供給させるためにも、教育が行き届いた、ある程度の上層階級の形成が必要になりますが、そのような特権階層を一般市民に是認させるための前提条件が、この階層の「リーダーとしての矜持や自己犠牲の精神」、すなわち「ノブレス・オブリージュ」なのだと自分は理解しています。

 しかし、21世紀の今日、各国をリードする政治家・官僚・企業経営者・富裕層の中に、このノブレス・オブリージュの精神がどれほど残っているのでしょうか?

 一般市民から見て、ノブレス・オブリージュの精神がほとんど感じられなくなったことが、現在のポピュリズムが蔓延する原因であると私は考えています。(続く)


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【GⅠ回顧】 フェブラリーS・ダイヤモンドS・京都牝馬S・小倉大賞典

2021-02-22 06:48:47 | 競馬

 まずは阪神の京都牝馬S。好スタートから絶妙のペースで逃げたイベリスが、そのまま直線でも差を詰められることなく完勝。酒井学騎手の好騎乗だったと思います。2着のギルデッドミラーは追いかける脚を使ってしまい、最後は脚が上がっていました。

 次は府中のダイヤモンドS。好位置から1番人気のオーソリティが押し切るかと思いましたが、中団から長く良い脚を使ったグロンディーズが差し切りました。天皇賞春に向けて良いレースが出来ました。後半1000mを消耗戦に持ち込めれば面白い存在に。

 日曜日の小倉大賞典勝ったのは7歳牡馬のテリトーリアル嬉しい重賞初勝利でした。この2月末で定年を迎える西浦勝一調教師にも良いプレゼントになりました。石川騎手のファインプレーだったと思います。

 

 そしてGⅠフェブラリーS勝ったカフェファラオは、理想的な位置取りから、逃げたエアアルマスを早めに捕まえて、後方から差してくるエアスピネルやワンダーリーゲルを抑え込んで完勝でした。さすがルメールという騎乗でした。1分34秒4の時計は速いものですが、最後方からの追込みが効くほどのハイペースではなく、少なくとも4~5番手くらいにはいないと厳しい展開だったと思います。

 これでカフェファラオは、新たなダートチャンピオンになった訳ですが、ワンターンの府中1600mだけでなく、コーナー4つのダートGⅠ、特に大井の2000mでの実績が、真のチャンピオン就任には必要な条件になりそう。夏の帝王賞が楽しみです。

 

 おまけで、3歳ダートのリステッド競走のヒアシンスS勝ったのはペルーサ産駒ラペルーズ。後方から見事に差し切りました。勝ちタイム1分36秒8も、上りタイム35秒0も立派の一言。中山1800mでも府中1600mでも強さを見せましたので、現時点で3歳ダートNO.1と言って良いのではないでしょうか。2着に逃げ粘ったトランセンド産駒プロバーティオも立派でした。単なるダート短距離路線の馬ではありません。個人的には、これでペルーサの種牡馬復活に繋がらないかと期待しています。


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