「ロシア科学アカデミー図書館所蔵 川原慶賀と植物図譜」
講演会レポート!
講演会レポート!
(撮影:弊社スタッフ)
4月23日(日)は東京大学名誉教授 大場秀章先生の講演会がありました。
たくさんの方に来場頂き、会場の椅子を追加する場面も...
多くの方に足を運んで頂けましたこと、心より御礼申しあげます。
講演会では、植物学者である大場先生が川原慶賀の植物図譜についてお話し下さいました。
その中で私が面白いなあと思ったことを少しご紹介しますね。
川原慶賀の描いた植物図譜は細部まで描き分けられ、その植物の特徴を捉えています。
つまり植物学的であると同時に芸術的であり、類似種から区別する特徴を明確に描き分けているのです。
ただ、慶賀はシーボルトに出会う以前から植物学的に正確な絵を描くことに長けていたのではなく、
長崎でシーボルトや画業の心得のあるシーボルトの助手ドゥ・ヴィルヌーヴ(de Villeneuve*)に出会い、腕を磨いていきました。
ドゥ・ヴィルヌーヴは植物画の優れた技量を持ち合わせていましたが、慶賀にヨーロッパ的な植物画の技法を強要するのではなく、
むしろその画力を認めて、慶賀の描いた作品の余白に慶賀が描かなかった果実や花の解剖図などを描き足すことで植物画としての完成度を高めました。
川原慶賀「 ビワ」
ロシア科学アカデミー図書館所蔵
このビワの果実、とても立体的だとは思いませんか?
日本的な表現とヨーロッパの技法が一枚の絵の中に存在しています。
125点ある植物図譜は全て違う植物が描かれていますが、
日本的な色や配置、遊び心を感じるものから、光を描き込んだ立体的でヨーロッパ的なものまで様々な表現をみることが出来ます。
シーボルトは画業の心得のあるヴィルヌーヴに描かせるのではなく、慶賀に描かせました。
ドゥ・ヴィルヌーヴもヨーロッパ的技法を慶賀に教えるのではなく余白に描きいれました。
きっとシーボルトもドゥ・ヴィルヌーヴも慶賀の絵に魅力を感じ、残したいと感じたのではないでしょうか。
美しい色彩で葉脈の一筋まで精密に描かれた慶賀の植物図譜を見ているとついそんな風に想像してしまいます。
みなさまはどう思われますか?
まだご覧になってない方はぜひ美術館に足を運んでみて下さい。
埼玉県立近代美術館で5月21日(日)まで開催しています
*de Villeneuveの日本語表記については諸説あり、ドゥ・ヴィルヌーヴあるいはデ・フェレニューフェと表記される場合があります。
埼玉県立近代美術館
〒330-0061埼玉県さいたま市浦和区常盤9丁目30-1
■会期
2017年4月8日(日) ~ 5月21日(土)
■開館時間
10時00分 ~ 17時30分 (入場は17:00まで)
■休館日
月曜日(5月1日は開館)
■アクセス
・JRをご利用の場合
JR京浜東北線北浦和駅西口より徒歩3分(北浦和公園内)
JR東京駅、新宿駅から北浦和駅まで、それぞれ約35分
・バスをご利用の場合
国際興業バス、西武バスとも北浦和駅西口前下車徒歩3分
・お車でお越しの方へ
当館に専用駐車場はありませんが、提携駐車場「三井のリパーク 埼玉県立近代美術館東」では
駐車料金の割引があります。(企画展観覧で300円引き、MOMASコレクション観覧で100円引き)
展覧会内容の詳細は下記URLをご覧下さい
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=358
巡回情報
■下関市立美術館
2017年8月5日(土)〜2017年9月24日(日)
■長崎歴史文化博物館
2017年10月7日(土)〜2017年11月26日(日)