駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

贈答文化が支えるもの

2016年07月23日 | 世の中

           

 時代の流れで、全く気にしていないが、たかだか四半世紀で患者さんからのお中元やお歳暮が半減、否三分の一に減った。以前は足の踏み場もないほど戴いて、職員と分けて持ち帰ったものだ。

  毎年M爺さんの呉れる梨はほれぼれするほど立派で、千疋屋に出しても引けを取らない品質だったが、五六年前から途絶えてしまった。今年九十歳になるMさんは三年前から一人では受診できなくなっており、果樹の世話ができなくなったのだと思う。職員一同、毎年楽しみにしていたので残念だが、申し訳なく梨はどうなりましたかとは聞かずじまいだ。

 馴染みの料亭も、お客さんがあってこそ座敷に上がるが、普段は年に数回昼に松花堂弁当を頂きに行く程度だ。グルメを自負しているが、所謂B級が主体で、A級の所に夫婦で出向くのは年に二三回、誕生日や記念日くらいのものだ。

 地方によって贈答習慣に濃淡はあると思うが、我々の年代は高級品には贈答やお相伴でしか手を出さないものだった。果たして今の若い人はどういう感覚なのだろう。食べ物に限らないが高級品には、高い技術も込められているもので、利用されなくなるとそうした技術も失われてしまう。次世代の人達は自分を褒めてあげるとかいって利用を続けるだろうか?。

コメント
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