当院の最高齢の患者さんは103歳だ。実際には施設に移られ104歳で亡くなったので、104歳と言ってもよいかもしれないが通院できていたのは103歳までだった。今現在103歳2か月で通院しておられるお婆さんが居られるので、果たして104歳まで通って記録を破れないものかと密かに期待している。杖を使われるが自力歩行が可能だ。さすがに耳が遠く、大声でないと聞こえないがちゃんと返事が返ってくる。
きりがいいのでそう感じるだけかもしれないが、人間には十歳ごとに山というか川というか越えなければならない壁があるような気がする。これは何万人もの患者さんを診てきた医者の実感だ。四十年前の老いの壁は八十歳だったが、今は九十歳になった。八十半ばまでは一人で楽々通院できる患者さんがたくさんおられるが、87,88,89と90に近づいてくると杖や付き添いが必要な方が増えてくる。まあ実際には十歳ごとの変化ではないと思うが、四十歳、五十歳、還暦、七十歳と気持ちだけでなく身体にも変化が出てくるように思う。欧米には還暦などないと思うが、十歳ごとの変化という感覚があるだろうか。