大前研一の名は二十年ほど前から目にしていたと思う。しかし、著書を手に取ることも主張に耳を傾けることもなかった。所謂、日本的な感覚から毛色の変わったあるいは主流でないものを感じたからだろうと思う。まあ、多少本は読んでも、医療しか知らない人間だったわけだ。しかし還暦を過ぎても人間は変わりうるというか、青春に回帰すると言うべきか、医療以外のことに目を向けるようになり、守備範囲も広くなった。
日本の論点という本は大抵は個人ではなく、複数の専門家が書いた形式の物が多い。正直、そうした形式のものは通読して理解するには不向きで、興味あるところを拾い読みにしたほうが分かりやすい。
大前研一の日本の論点はこの人が紐付きでなく自由な立場から物を考えているというのがよく分かる本で、所謂右寄り左寄りなところが綯い交ぜになっているが、大前研一という個人の統合性があるから矛盾なく、とても分かりやすい。それこそどこかの首相よりも俯瞰的に歴史的に物を見て考えている。それに科学的な力があるから、経済評論家とは一味違う見方が織り込まれている。私などはぼんやりと思い描いていた考えに明確な形を与えられた所も多く、成る程と目から鱗で読んだ部分も多かった。、
どうしてこうした分析と考え方が世に浸透しないかと思うのだが、それは私が嘗て染まり始めていた毛色の変わったというだけで退ける感覚、主流でないと感ずることで軽んじる感覚が多くの日本人に染み付いているからだろうか?。ラディカルな考え方は自らの身を危うくするから遠ざけるというのは分かるが、なぜ猫も杓子?もそうした考えを持つのか不思議だ。
本の内容は紹介しない、下手な内容の紹介は役に立たないと思う。手軽に読めます300ページ1700円プレジデント社。