32歳、独立を志す。
が、すでに奥さんと小さい子どもが2人いて、それなりの報酬を得ていた。
本心を言えば自由にゼロから勝負したかったし、何の営業でも食べていく自信もあった。(蓄えはなかったが)
それでも奥さんや子どものことを考えると「絶対に失敗できない」。
だから社内ベンチャーという道を選んだ。安易だが失敗しても雇用は保障される。家族は守れる。
考え続け現在のビジネスモデルをDNP本社に提案し道が拓けた。無我夢中だった。
ただDNP本社のありがたい起業支援と失敗できる挑戦という大変恵まれた環境の引き換えは過酷だった。
肝心の事業には「おまえにできるわけない」「裏切り者」「恩知らず」「卑怯者」・・。
心の中であてにしていた誰も協力してくれなかった。いまだからこそ言えるがかなりの妨害に悩まされた。
私の事業は多くの社内ベンチャーが「以前の部署でやっていたことを切り出す」のではなく「本当のゼロ」からのスタート。
(このことが社内ベンチャーのほとんどが失敗する原因を避けられたのだが、その当時は本当に辛かった)
誰にも頼ることのできない、むしろマイナス環境のその先の失敗は目に見えていた。
「絶対失敗できない」からこの道を選んだのに「失敗」したら
たとえ雇用は保障されていたとしても「無謀な失敗者」として何十年も歩まねばならない。家族に顔向けできない。
(今になればDNPは失敗しても再挑戦できる懐深い企業だと思いますが、当時はそんなこと知るよしもない)
そのときに自分の甘さを思い知った。結局これも「絶対に負けられない戦い」だと。しかも独立より状況は悪い。
そのときから夢見てた大きな成功は頭から消し去り、小さくても必ず勝つにはどうしたら良いかを考え続けた。