
きょうから5月。アヤメ属の花の季節です。

たとえば上の画像、2つのアヤメ属の花が一緒に写っています。
左がダッチアイリスで、右がジャーマンアイリスです。
アヤメ属の花は、似ているようで明瞭な区別点があり、それを知っているとだれでも簡単に見分けることができます。
ダッチアイリス


ダッチアイリスは別名「オランダあやめ」とも呼ばれ、花の色はこの濃いブルーがほとんどです。


それで識別点ですが、 花弁(★)の弁元にある模様に着目してください。ダッチアイリスのばあいは ここが黄色い班になっています。
(★) アヤメ属に共通の花の構造として、外花被片3枚と内花被片3枚、柱頭裂片(雌しべ)、雄しべからなっています。 上の説明で花弁と言っていますが、正確には下に垂れ下がった外花被片3枚の弁元のことです。

アヤメのなかまの花のつくり
(白岩先生の植物教室「アヤメのなかま」より借用)

これもダッチアイリスです。
花色は変わっても 外花被片弁元の黄色班は変わりません。
ジャーマンアイリス


さて一枚目の画像の右側にあったのがこのジャーマンアイリス(別名 ドイツアヤメ)です。
雰囲気は3種のアヤメ属の中で、一番華やかです。


見分け方ですが、やはり弁元をみます。
弁元にブラシ状の毛が密生しています。これがジャーマンアイリスの特徴です。


まぎらわしいのが、ブラシと一緒に そこから放射状に網目模様が広がっているジャーマンアイリス。この網目模様は 次に出て来るアヤメの網目模様にそっくりなのですが、アヤメには文目模様はあってもブラシ状の毛は付いていません。
ジャーマンアイリスと呼ばれているのは、南ヨーロッパや地中海沿岸部にかけて分布するアヤメ属の植物を交雑して作出された園芸品種群で、ジャーマンアイリスに野生種はありません。
この豪華な網目模様付きのジャーマンアイリスはもともとはアヤメの仲間を品種改良して作出されたグループなのかもしれません。
アヤメ


3番目はアヤメです。ですが、これは元祖アヤメではなくアヤメの園芸種「サキガケアヤメ」です。
アヤメの学名は Iris sanguinea
サキガケアヤメの学名は Iris Cristata とか Iris unguicularis
で、花はどちらも同じです。花ではアヤメとサキガケアヤメの区別はできません。
シベリアアヤメ(Iris sibirica)というアヤメの園芸種がありますが、花だけでの区別はやはり難しいです。


アヤメ(サキガケアヤメ、シベリアアヤメを含む)の花の特徴は 花弁の弁元に 名前の通りの「文目(あやめ)紋」があることです。
イチハツ


イチハツという名前の由来はアヤメの仲間では、いち早く花を咲かせるのでイチハツ(一初)なんだそうですが、実際は5月になればアヤメもアイリスも咲いています。


ご覧の通り、花弁(正確には萼片とか外花被片)の弁元に白い「とさか」状の突起が付いているのが特徴です。
シャガ


シャガ(学名 : Iris japonica)は日本各地の低地や人里近くの湿った森林に普通に見られる、常緑多年草です。
学名の種小名が japonica になっていますが、実際は中国南部原産の植物で、日本には古い時代に誰かが持ち込んだと考えられています。野生ではないとされる理由は、種子がまったくできないからです。
この事情はヒガンバナによく似ています。シャガもヒガンバナも3倍体といって細胞の染色体の数が異状であるため、一見正常に成長して花を咲かせても、花粉や胚珠(種子のもと)を正常につくることができないのです(種なしスイカは人為的につくられた3倍体)。
そして、シャガもヒガンバナも、中国に行くと、正常に種子ができるものがあることが知られています。
(以上、びわこ文化公園植物だより 〔β 版〕「シャガ」より抜粋して引用)
シャガの名前は、和名の「ヒオウギ」の漢名である射干(しゃかん)に由来します。(岡山県「第81回 森林研究所の散歩道(シャガ、ユズリハ編)」)
シャガは外花被片の白地に黄色と紫の個性的な模様がついています。
シャガ(中国産濃色花)

中国から導入された濃青紫色の多花性種です。


学名の最後の f. は form の略で、「品種」を意味します。
これまで同一地域帯で確認されていた植物とは形態が異なる場合に表記されます。あくまで自然発生的なものにつけます。(生息地が隔離されている場合は var. をつけます。)なお、栽培品種(園芸種)のばあいは (cultivar の略で) cv. をつけます。
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