新春大回顧ということでーー
30年前インドネシアのスラウェシ島に4か月半滞在したとき(1992-93) の滞在記(執筆は1994年)が出て来ましたので、4回に分けて公開してきました。きょうはいよいよ最終章です (^^)/
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ずっと以前、東マレーシアに調査に行ってきた同僚から聞かされました。マレー語では《めしはナシ、めん(麺)はミン、魚はイカン、おまけに人はオラン⋯あぁ何ンにもない》。
まあ、そう覚えるといい、ということなんでしょうが、麺は正確には ”ミー” です。ミー・ゴレンといえば中華焼そば風めん、ナシ・ゴレンとは炒め御飯の類です。
そして、肉類は<アヤム ayam>(鶏)がメインです。ミーゴレンやナシゴレンを問わずあらゆる料理に<かしわ>が潜んでいるし、街のそこかしこにある肉屋の店先のウィンドウには巨大なミンチのケルンが置いてあります。モスレム(回教徒)は当然ブタは食べません。スマトラ島のある地区では、なんと<アンジンanjing>すなわち犬を最高の食肉とする人達がいるのです。ほんとうにこの国の犬はかわいそう・・・。

動物の中で待遇がよいのは猿で<Orang Hutan オランフータン>とは「森のひと」なのです。
そしてこれほどまでの<とり>の氾濫・・・
実を言うと、ぼくは好き嫌いがはげしく、犬は当然のことながら、かしわも駄目なのです。同じASEAN諸国でもタイですと、中華風の麺類や「激辛」食があったりして、結構選択肢があるのですが、そんなわけで、インドネシアでトリを喰わない(喰えない)ということは 致命的なことだとも思われます。
ぼくもはじめは努力しました。

Google Earth 2023-07-Rosari-Beach
ウジュンパンダン市は、スラウェシ島のkの字のたて棒の下の方に、西を向いてある人口100万の街ですが、美しい夕日がみられるロザリービーチには「世界一長いレストラン」があります。それは沿道に沿ってずらっと並んだ「屋台」のことなのです。
三々五々、ロザリー海岸にたむろし、屋台のミーゴレンでも喰いながらマカッサール海峡に沈む夕日を眺める ・・・・ 一般観光客の気分で・・・・ これをはじめての日曜日に実践してみたのです。
翌朝、みごとに仕返しを<おなか>に受けました。事務所に行ってそのことを話したら、はじめのうちは「それはおめでとう。あなたも今日からインドネシア人」なんて言っていた海外経験の豊富な人たちがやがて「なにぃ!屋台のミーゴレンを喰っただって! 底なしの✖✖だな。レジデント(常駐している人)だって屋台のめしは喰わないヨ!!」
以来、3日を置かずホテルの隣にある日本料理屋に駆け込むことになりました。

他のレストランで料理を注文する時、こんなエキセントリックな胃腸構造をしていると、たとえば「ナシゴレンとチュミチュミ・ゴレン(Cumicumi Goreng いかの照焼き)を半分ずつ合計一皿分」その時「ナシ・ゴレンには"Tidak pakai Ayam(とりを使わないで)"!」のように特別注文しなければなりません。
そんなこと20〜30語ではとても説明できるものではありません。そこで、ぼくの好き嫌いがよくわかったエディ達がいれば、納得のいく料理を注文できるというわけです。彼らと切っても切れない仲になったのは、こんな喰えない訳もあったのです。

最後になりました。
ぼくは自分がどうして ayam(とり)がダメなのか、インドネシアに来てそのロジカルな?根拠が少し解りました。私すなわち<Kanayama>((注)アブリルの本名)は、実は<Kanayama>だったのです。
外を向き異文化に接するという行為は、<おのれ>を明らかにする哲学者の所作でもあったわけです。
(完)
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30年前インドネシアのスラウェシ島に4か月半滞在したとき(1992-93) の滞在記(執筆は1994年)が出て来ましたので、4回に分けて公開してきました。きょうはいよいよ最終章です (^^)/
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ずっと以前、東マレーシアに調査に行ってきた同僚から聞かされました。マレー語では《めしはナシ、めん(麺)はミン、魚はイカン、おまけに人はオラン⋯あぁ何ンにもない》。
まあ、そう覚えるといい、ということなんでしょうが、麺は正確には ”ミー” です。ミー・ゴレンといえば中華焼そば風めん、ナシ・ゴレンとは炒め御飯の類です。
そして、肉類は<アヤム ayam>(鶏)がメインです。ミーゴレンやナシゴレンを問わずあらゆる料理に<かしわ>が潜んでいるし、街のそこかしこにある肉屋の店先のウィンドウには巨大なミンチのケルンが置いてあります。モスレム(回教徒)は当然ブタは食べません。スマトラ島のある地区では、なんと<アンジンanjing>すなわち犬を最高の食肉とする人達がいるのです。ほんとうにこの国の犬はかわいそう・・・。

動物の中で待遇がよいのは猿で<Orang Hutan オランフータン>とは「森のひと」なのです。
そしてこれほどまでの<とり>の氾濫・・・
実を言うと、ぼくは好き嫌いがはげしく、犬は当然のことながら、かしわも駄目なのです。同じASEAN諸国でもタイですと、中華風の麺類や「激辛」食があったりして、結構選択肢があるのですが、そんなわけで、インドネシアでトリを喰わない(喰えない)ということは 致命的なことだとも思われます。
ぼくもはじめは努力しました。

Google Earth 2023-07-Rosari-Beach
ウジュンパンダン市は、スラウェシ島のkの字のたて棒の下の方に、西を向いてある人口100万の街ですが、美しい夕日がみられるロザリービーチには「世界一長いレストラン」があります。それは沿道に沿ってずらっと並んだ「屋台」のことなのです。
三々五々、ロザリー海岸にたむろし、屋台のミーゴレンでも喰いながらマカッサール海峡に沈む夕日を眺める ・・・・ 一般観光客の気分で・・・・ これをはじめての日曜日に実践してみたのです。
翌朝、みごとに仕返しを<おなか>に受けました。事務所に行ってそのことを話したら、はじめのうちは「それはおめでとう。あなたも今日からインドネシア人」なんて言っていた海外経験の豊富な人たちがやがて「なにぃ!屋台のミーゴレンを喰っただって! 底なしの✖✖だな。レジデント(常駐している人)だって屋台のめしは喰わないヨ!!」
以来、3日を置かずホテルの隣にある日本料理屋に駆け込むことになりました。

他のレストランで料理を注文する時、こんなエキセントリックな胃腸構造をしていると、たとえば「ナシゴレンとチュミチュミ・ゴレン(Cumicumi Goreng いかの照焼き)を半分ずつ合計一皿分」その時「ナシ・ゴレンには"Tidak pakai Ayam(とりを使わないで)"!」のように特別注文しなければなりません。
そんなこと20〜30語ではとても説明できるものではありません。そこで、ぼくの好き嫌いがよくわかったエディ達がいれば、納得のいく料理を注文できるというわけです。彼らと切っても切れない仲になったのは、こんな喰えない訳もあったのです。

最後になりました。
ぼくは自分がどうして ayam(とり)がダメなのか、インドネシアに来てそのロジカルな?根拠が少し解りました。私すなわち<Kanayama>((注)アブリルの本名)は、実は<Kanayama>だったのです。
外を向き異文化に接するという行為は、<おのれ>を明らかにする哲学者の所作でもあったわけです。
(完)
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