去年が「ルパン100年」というメモリアルな年だったということを、どれだけの方がご存知か心もとない限りだが、ルパンの祖国フランスでは国を挙げて映画まで作る力の入れ方だった。
もっともその映画の紹介スチールをみて、私の中のルパンイメージが、ガラガラ崩れ去ったのも事実。この映画、なかった事にしようと勝手に思っていたら、何の話題も聞かないまま、「ルパン100年」は静かに終わってしまった。
小学校高学年で、ルパンシリーズに熱中した。バスを乗り継ぎ日曜毎にいった私立の図書館で、ポプラ社のルパンのシリーズを順次読みふけった。ルパンを愛するあまりフランスびいきになった。
6年生の春には修学旅行で伊勢志摩に1泊したが、その前に借りたのがシリーズの1冊の上巻本だったので、頭の半分は「はやく下巻が読みたい!」という思いが渦巻いていた。いまだに小学校の修学旅行といえば、『三十棺桶島』の後半はやいこと読みたかったなあ、というのがまず思い出される。
『三十棺桶島』といえばヒロインが恋愛して結婚を父に反対され駆け落ちまでしたのに、相手の男はとんでもない奴で・・・というのが導入部分なので、「結婚するまえには、冷静に相手の男をみるべし」という教訓を学んだ本でもある。
ルパンのシリーズのうちいくつかでは、ルパンは勇敢で陽気で剽軽なスペイン貴族「ドン・ルイス・ペレンナ」という名で登場する。私はことに彼に思いっきり参ってしまった。『三十棺桶島』もそのひとつ。フランスに次いでスペインびいきになったのは、いうまでもない。
しかし小学生の空想なのだが、「はたして私がヒロインたちのように危機に陥った時、ルパンは助けにきてくれるか?」と考えたとき、「否」という答しかでてこなかった。
なぜならヒロインは魅力的な美女ぞろいだったから。こんな東洋の果てまで美女でもないひとを助けにはこないだろうな。
そしてひととおり「アルセーヌ・ルパン・シリーズ」を読み終えた頃、テレビで『ルパン三世』がスタートした。当時視聴率の低かったらしい『ルパン三世』の1回目のテレビシリーズをすべて熱心に観た、というのが私の自慢である。もちろん再放送も欠かさず観た。2回目以降の『ルパン三世』のテレビシリーズは、世間の人気とは裏腹に熱はかなり醒めていたけれどね。
私の次なるヒーローは「どくとるマンボウ」こと北杜夫さんでした。中学生の頃、初めてファンレターを出した作家さん。今に至って唯一無二です。ファンレターを出した作家さんって。しかもサイン付きお返事ハガキがきて! 嫁ぎ先にも持って来た宝物です。