紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

ドクター・スズキ、ワンス・モア

2007-10-02 22:28:43 | 読書
昨日、もうずっと以前に届いた高校や大学の同窓会報を読んでみた。

 高校の会報には、体育の先生と古文の先生の訃報と追悼文があり驚く。あのグラサンの似合う口の悪い先生が? あの「鉄仮面」(ニキビ跡が激しいことによりつけられた渾名。)が? と心の中で反問するが、どうしてもピンとこない。記憶が消去されるのが得意技な私にしては、けっこう覚えている先生たちである。
 ことに人の良かった「鉄仮面」は女子高生たちの口車に乗せられ、まんまと自分の片思い話で1時間古文の時間をつぶしたりしていたっけなあ。謹んでご冥福をお祈りしたい。

 一方、大学の同窓会報を読んだときには、仏教ミッション系の大学だったのでよく授業などで話題に上った鈴木大拙(だいせつ)のことを思い出した。鈴木大拙は、禅を英語で世界に紹介し、海外に日本の禅文化を広めた偉大な仏教学者(文学博士)である。1966年に他界されている、ちょっと前の人である。

 私はしかし、彼の著作をほぼ読んでいなかった。だが大学時代ハマった『ライ麦畑』の作者、サリンジャーが禅に傾唐オ鈴木大拙の影響も受けていることを知る。それで卒業直後当時バイトをしていた大学図書館の書庫に、職権を利用し仕事中にそっと潜り込み、穴蔵のような底冷えのする森閑とした書庫で、ついに鈴木大拙体験をするのであった。

 それは偶然手にした本に付いた写真の数々である。それも「あんたは内田百けんか?!」というくらい、スズキ先生は、猫とお戯れなのである。しかも「あんたは爆笑問題の田中か?!」というくらい猫にメロメロ。相好崩しっぱなし。相好崩れたスズキ先生は、私の心の壁も容易く崩してしまわれた。ええやん!!スズキ先生! 究極の癒し系ジイさま。写真だけでひと目惚れである。

しかも面唐ュさそうに目を閉じた猫を機嫌良くしたら、かくや、というくらい、猫にもそっくり! 飼い主に似ないで、猫に似る飼い主。ええやん!

 あのときのスズキ先生の猫とお戯れの写真が、あまりに鮮烈な記憶なので、本日ネット間を映像を探して彷徨ったが見つからない。諦めつつも、まさか鈴木大拙写真集、なんてないよね、ジャニーズじゃあるまいし、とほんのシャレで本検索をしたら、瓢箪から駒!ありました。↓
相貌と風貌@髢リ大拙写真集 上田閑照・岡村美穂子 平成17年11月15日発売

 そういう訳でスズキ先生にいたく興味を持ち始めてしばらく後、西田幾多郎その他の著名な哲学者や宗教者3名ほどの方たちと、スズキ先生が、対話をされている本を読んだことがある。地面を這うように苦しい煩悩を断ち切るためには・・・と諸先生方がふかーく真面目に語り合っているときに、スズキ先生は「しかしですなあ」とのんびりと切り出すのだ。

 「煩悩も、ないよりあった方が面白いですがなあ。煩悩がない人生はつまらんですわ」みたいなことをおっしゃり、西田先生たちを慌てふためかせていた。「それは先生が、煩悩がないから・・・」と取り繕っていらっしゃった。私にはその場面がありありと目前に浮かんできそうになった。爆笑問題の太田みたいにかわいい人ではないですかぁ。ナニをいいだすことやら。惜しむらくは、その場にナイスつっこみの田中みたいな人がいなかったことだ。
 
 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば、スズキ先生エピソードとしては、こんなのがある。

鈴木が没した時、ニュースを読み上げるアナウンサーが原稿に禅と書いてあるのを蝉と読み違えて「蝉の研究で有名な鈴木大拙さんが亡くなりました」と読み上げたことは、全国に当時大きな反響を呼んだ。

天国(極楽?)のドクター・スズキも屈託なく爆笑されたに違いない。そういうお方だと信じております。