紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

途中下車不可。

2007-10-04 23:55:01 | 読書
 図書室としては邪道なのかもしれないが、うちの職場の図書室にはマンガも図書同様選書して入れている。それにしてもマンガの回転の良さは群を抜いている。「ベストセラー」といわれるものだって、回転数では人気雑誌やマンガの敵ではない。

 そして、職員、スタッフ、ボランティアさんたちが軒並み撃沈されるストーリーマンガがある。1冊借りたら、もう最終巻(40巻近い!)まで一直線。ジェットコースターのように降りられず終点まで怒濤の勢いで読まざるをえない。

 そのマンガとは深見じゅんの『悪女(わる)』だ。テレビドラマにもなったので、ご存知の方も多いと思う。

 三流大学出身で、成績優秀でもない、けれど下流なコネで大企業の片隅の吹きだまりに所属する一介のOLさんが、一目惚れした同じ会社の男性に巡り会うため、出世?の階段をワンステップずつ、あたかもコンピュータのRPGのように知恵と努力と持ち前の明るいキャラと周囲の人々の助けを借りて(もしくは強引に巻き込み)登って行く、というライトかつ滋味深いマンガである。笑いとシリアスとほんわり加減とじんわり感動と可愛らしさのバランスが絶妙だ。しかもストーリーの力は絶大な握力で、しつこいようだが一度捕まったら逃れられない。

 注目すべきは、彼女の行く所で彼女の壁となる人々は、彼女との確執や戦いの末、自分の道を新しく見つけたり、脱皮したり、幸せになったりする。ホワイトマジックの世界なのだ。

 一昔まえの少女小説みたいだが、これは精神衛生上とてもいい。これほど健康的なマンガはいまどき珍しい。でいて、ひたすら読ませる。正統なストーリーマンガの世界に、安心してどっぷりとはまりこむ快感ったらない。

 タイトルの『悪女(わる)』は、一回はまったら目が離せない主人公「麻理鈴(まりりん)」のことなのか? 「悪女」どころか、爽快で豪快な「ええやつ」なのだが、読み始めたら頭の中が麻理鈴のことで手いっぱいになり、他の事がどうでもよくなるから「悪女」なのだろうか? 未だに謎だ。

 先日本屋さんに行った時、同じ作者の『くるみ』が出ている事を知り、さっそく発注リストに上げて、本日問題なくスルーして購入予定本となった。慶賀の至りである。

 深見じゅんは、現代には一見なじまないように見えるオーソドックスな作風なのに、圧涛Iな支持を得ているのがうれしい。きっとこういうのを描くのは、目新しい不可思議な作風以上に、かなりのテクニックを持った大変な力技なんだろうな。

* * * * *

 追記:ご心配をおかけしましたが、夕方仕事の帰り道、病院に立ち寄ったら、母はきのうよりはるかに元気そうでした。明朝退院です。