紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

くるみ

2008-02-05 23:56:47 | 読書
 昨日のリベンジである。とはいえ、昨日はほとんどウトウトしながら書いたものだから、核心にまで至らなかった。とはいうものの、だから今日こそ核心に至れるかと言えば、それもはなはだ心もとない。しかし、しっかりとお昼寝をしたので、少なくとも目はぱっちりである。

 深見じゅんのコミックス『くるみ』(講談社/現在第9巻まで既刊。以下続刊)である。こんな感じで始まる。

31歳主婦、冒険に旅立つ
くるみは結婚3年の平凡な主婦。口癖「私なんか」。
突然そんな自分がいやになった。愛と勇気を胸に出かけよう!

 作者の深見じゅんについては、昨年10月に『悪女(わる)』で紹介した。作者は、クリアにクレバーな人なので、読んでいて大変爽快である。

 主人公くるみの愛と勇気についてはナウシカに匹敵するのだが、相手は巨大なダンゴムシ!?でなく、とても傷ついた(被害者)、もしくはひどく傷つけた(加害者)記憶を持つ人間なので、ナウシカの場合よりシビアかも。

 ひとりの人間の中には天翔る善も、底なしの悪もなんでもあること。真実は拍子抜けするほどシンプルなこと。『ちりとてちん』で順ちゃんが言っていた「一生懸命なアホ」の素晴らしさとはこういうものなのか、と再確認できたこと。お金がすべての拝金主義は、いつしか魂を抜かれお金のしもべとなること。

 いじめも虐待もドメスティック・バイオレンスも職場でのさまざまなハラスメント(嫌がらせ)も戦時下の悲惨な出来事も、もしかすると同根かもしれないとふと思う。人間の存在が軽くなればなるほど、世の中はどんどん不幸に傾いて行くようだ。

 他者である人と、その人の人生の重みを知ることは、同様に自分と自分の人生の重みを知ることでもある。誰かの人生を軽んじることは、自分の人生を軽んじることなのだと、肝に銘じて噛みしめたい。どんなに地の底からでも、勇気さえ持てば人生はやりなおせるということも。その勇気を手に入れる方法も、ぜひ考えてみたい。だから、とくに若い人たちに読んで欲しいマンガなのだ。

 ついでに言うと、「敵と友だちになるのが極意」という合気道の精神も「こういうことなのかも!?」と納得できる。くるみはどんな悪い人も断罪しない。たぶん私はそこに一番ぐっときたのだ。