現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

チャップリンの殺人狂時代

2020-05-29 09:50:38 | 映画
 1947年のアメリカ映画です。
 1920年代にフランスに実在した殺人鬼をモデルにした映画化ということで、「市民ケーン」や「第三の男」で有名なオーソン・ウェルズの原案となっていますが、実質的には他の殺人鬼などの要素や独特のユーモアが加味された、チャップリンのオリジナルの作品です。
 最終的には15人も殺した罪で犯人は死刑になるのですが、映画中での殺人は2件だけで、家族への愛情や身寄りのない女性を助けたりと、犯人の人間的な部分を描くのに多くの時間を割いています。
 描かれた殺人も失敗の連続でユーモラスに描かれていて、残酷なシーンは全くありません。
 犯人は、30年以上働いていた銀行を不況で首になって、家族(体の不自由な妻と幼い息子)の生活を守るために、結婚詐欺と殺人を繰り返すようになります。
 1929年の世界大恐慌前後の騒然とした世情や、その後のナチスなどのファシズムの台頭を背景に、生きるために連続殺人を犯した男の悲喜劇を描いています。
 死刑執行直前に、犯人が吐く「一人を殺すと殺人者になるが、百万人を殺すと英雄になる」という有名なセリフは、家族の生活のために殺人を行った犯人と、国のためと称して戦争を起こした独裁者たちとどこが違うのかという、戦争への批判が込められています。
 この映画でのチャップリンは、チャーリー・チャップリンのチョビ髭にドタ靴のスタイルやスラップスティックな動きは捨てて、チャールズ・チャップリンとしてペーソスのある人情喜劇役者に徹しています。
 なお、この映画は、公開当時にアメリカの「赤狩り」にチャップリンが巻き込まれていたこともあって、アメリカでは興行的には大失敗(その他の国では評価されていました)で、本国で評価されるのはベトナム戦争が激化して平和運動が活発になった1960年代になってからでした。



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