1957年公開のアメリカ映画です。
1954年に作られたテレビドラマの映画化です。
ほとんどが、陪審員室の中で、評決をするために議論する12人の男を描くだけで、一本の映画ができています。
その点で、優れた脚本と俳優の演技さえあれば、費用をかけなくても優れた映画ができる手本としてよく語られます。
スラム街の少年による父親殺しの事件の、12人の陪審員たちは、ほとんどが有罪に傾いていました。
ただ一人陪審員8号だけは、少しも話し合わずに有罪(それは死刑を意味します)にすることにためらいを持ち、話し合うために無罪を主張します(全員一致でないと評決できません)。
それからは、12人の個性と個性がぶつかり合う中で、ひとつひとつの証拠や証言が吟味されて、やがては全員が無罪の評決をします。
その過程で、感情的だったり、論理的だったり、御都合主義だったり、日和見的だったりする陪審員同士のやり取りが、密室劇にもかかわらず(あるいはそのせいで)、非常にスリリングに展開されます。
縁もゆかりもないスラム街の少年のために、懸命に議論する互いに全く関係のない男たち。
評決後、裁判所を去るときに初めて名乗り会う陪審員8号と9号の老人のラストシーンが鮮やかです。
この映画は、良くも悪くもアメリカの陪審員制度を語る上で、よく引き合いに出されます。
ヘンリー・フォンダが演じた陪審員8号は、まさに「アメリカの良心」とでも呼ぶべき、静かだけど強固な意思を感じさせ、一人の典型的なアメリカのヒーロー像として、高く評価されています。