世界中に熱狂的なファン(私もその一人ですが)を持つ近未来SF映画の、35年ぶりの続編(映画の中の世界では、前作の2019年(この映画は2017年封切りでもうすぐなんですけど、「2001年宇宙の旅」でも21世紀になった時に同様の感慨を持ったのですが、科学技術の発展は当時考えていたものとは違った方に進んでいるようです。一番違うのは、空飛ぶ車の実現かもしれません)から30年後が舞台)です。
新たな傑作への期待と、前作のイメージが壊されるのではとの不安とが、半々でしたが、結果としてはそのどちらでもなく「まあまあかな」といった感じです。
「ブレードランナー」と言えば、前作の監督のリドリー・スコットが作り上げた2019年のロサンゼルスの圧倒的なイメージ(デッドテック・フューチャー(退廃的未来)と言うんだそうです)が有名ですし、私も真っ先に大スクリーンに映された芸者さんによる「わかもと」のコマーシャル映像が浮かんでくるんですが、この作品でもセットにCGを加味して立体映像にして、より壮大なスケールで描いていてます。
前作を踏襲したロサンゼルスのダウンタウンや廃棄物処理区域などはそれほど感心しませんでしたが、ラスベガスを思わせるかつての歓楽都市の廃墟のシーンはヒネリがあって面白かったです(ただ、いろいろなシーンで、映画会社の親会社であるSONYのロゴが出てくるのには食傷されました)。
ドラマやアクションはまあまあといったレベルで、主人公がレプリカント(人造人間)であることもあって、「人間とは何か」という根源的なテーマに対する問いかけは前作より薄まった感じがします(レプリカントが生殖能力を持つことがこの作品のポイントなのですが、そのことの持つ意味合い(レプリカントの増産に役立つ?、人間とレプリカントとの生殖による新人類(イエス・キリストのような奇跡をもたらす存在)の創生?といったことが匂わされています)が、最後は単純なアクションシーンで締めくくってしまって中途半端なままに終わりました。
主役のライアン・ゴズリングは、「ラ・ラ・ランド」よりもずっとはまり役で、寡黙で控えめな演技が、従順な新型レプリカント(途中までは自分が人間とレプリカントとの生殖による新人類なのではないかと思っていました)にピッタリでした。
前作の主役だったハリソン・フォードは、今回もアクション・シーンなどを熱演していましたが、かつての若々しい彼の姿を知るものとしては、年取った彼(この映画ではそれを強調しているかもしれません)を見ると、やはりなんだか悲しくなってしまいました。
細かいところですが、一番印象に残ったのは、主人公の恋人がAIを持ったヴァーチャル・リアリティだったことです(前作では、人間とレプリカントの恋愛がテーマの一つでした)。
レプリカントと肉体を持たないヴァーチャル・リアリティの悲恋なのですが、その感情の動きは非常に人間的で私の心の琴線に触れてきました(そのヴァーチャル・リアリティの女性がすごく魅力的なこともあったでしょう)。
このあたりは、2049年まで待たなくてもすぐに実現して、今は二次元の恋人を持っている現代の若者たち(特に男性)にとっては、新しいより強力な恋愛対象になるでしょう(非婚化と少子化がさらに進んでしまうかもしれませんが)。
ディレクターズカット ブレードランナー 最終版(字幕版) | |
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