SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

感謝!!日本の皆さまへ。

2023-11-07 19:12:00 | Concert Memories-コンサート旅行記

高知は桂浜にて。高知公演リハ後、雨上がりに虹がかかった。


生まれ故郷の多度津の海の見えるレストランにて、セロニアス・モンクの「セロニアス・ヒムセルフ」がかかっていたのだけれど、(それは私が初めて買ったジャズのCDだった)あの時のこの音への憧憬がありありと蘇ってきた。



中学生の頃、テレビなんかでかかっているアイドルの大量消費音楽を周りの友達がハマっていてあんまり勧めるから、色々聴いてみたけど、気に入ったものは殆ど皆無で、深夜のラジオ番組を聴いているうちにジャズに目覚めて、初めて買ったアルバムがモンク。


深夜に、宇宙の中心にひとり向きあっていくようなモンクのピアノは、みんなが聴いて熱狂している音楽に馴染めなかったひとりぼっちの私に、深く浸透していったんだな、と多度津の海を5年ぶりに眺めながら、感慨深い思いだった。



多度津の夜の路地



今回日本での最終コンサート、岸和田こなから音楽祭に聴きに来てくれていた、私の衣装をいつも創って下さっている服飾デザイナー安藤福子さんの言ってくれたところの「雑味のない音」という感想、きっとそれは、個人の感性から宇宙に繋がっている、深いピュアな音のことではないかな。


そんな音は、小さな音であっても、この世界の儲け主義や権威主義に飼い慣らされたハリボテ音楽や、思考停止を呼びかけ、多数派に迎合させる日本のテレビの甲高い叫び声に掻き消されない強い力を持っている、そう信じたい。



岸和田こなから音楽祭は、大阪最古の杉江能楽堂にて

99パーセントの混沌の中で1パーセントの光を見つけることが出来る、と福子さんは言いました。


だからこの行き場を失った世界で、そういう思いで追求してきた音を放てるということは、とても貴重で重要なのだと。


私の体力気力の限界により、自主主催ツアーはもうやりませんが、企画を誰かに一手に任せられるのであれば、日本での活動も今後も出来ることがあれば続けても良いのではないか、何故かと言うと、このような音を待ち望んでくれている人が本当に実際に日本にいるんだ、という実感を今回、初めて心から感じたからでした。



パリで学んだ生徒たちに支えられた埼玉県入間市の武蔵ホールにて。高知、多度津、高松公演は佐藤洋嗣のコントラバスとのトリオ

各地で聴きに来てくださった多くの方から「こんな次元の違うものは初めて聴いた」、「こんなに色んな音をフルートが出せるとは知らなかった」、「こんな凄いものが聴けるとは思ってもいなかった」という嬉しい感想を頂いた。


そして、パリで教えている即興アトリエの日本初上陸!四国高松で初めての試みの「即興ワークショップ」でも、子供からプロを目指す学生、大人まで、地元の先生方との協力により、世界の音とリズムを体感しながら即興入門に扉を開けました。




一から十まで決められた通りに演じ、上手く演奏するため、また人から評価されるための演奏ではなく、自分が本当に感じていることを音にできること。それこそが音楽の真髄で、その為に楽器のテクニックや音楽のスタイル、基本を徹底的に理解しなければならないのだ、ということを、私は即興という言語を通じて伝えられると思っています。


混沌として根っこを無くした現代社会では、すぐ自分の近くにそういう音を分け合える人がいるとは限らないが、これからはワールドワイドに、欲しい音を求めるもの同士が繋がって、そういう音を伝えていく時代ではないのか。



渋谷の佐藤紀雄プロデュースシリーズでは、日本在住のブルガリア人ガドゥルカ奏者のヨルダン・マルコフを迎えて。



その思いとは逆に、コロナや戦争で世界は分断、信じられないほどのインフレでますます日本への行き来は難しくなっているから、もうこれ以上無理なのではないか、と半ば腕を下ろしかけていた。でも、これまでの方法つく返して、なんとか本物の音を伝えようとしている人たちが、日本でもがいているのを目の当たりにして、私の考えも変わりました。


自分で何とかしようと躍起になるのでなく、分業って大事で、人にはそれぞれに見合った場所があり、本当の芸術の振興のためにはそれぞれが自分のやるべきことを分かって、与えられた場所で信頼し助け合うべきなのだと。


集客やチケットのシステムなども、従来の方法ではもう芸術は生き残れない局面に来ている。


だから私たちはチームになって本当の意味でインテリジェントになり、各人が知恵を絞り、現在の世界の成りたちを理解し、一方からの見方に拘るのでなく、多角的に柔軟に考えなければならない。





現代と過去の対比の美しい東京


パリでずっと考え温めてていたことが、今回日本での経験でよりクリアーになったと思います。


そのような大切なことを私に分からせて下さったのは、日本で超多忙にも関わらず、この難しい状況を打破しようと走り回って下さって、心から私たちの音楽をより多くの人たちに届けたいと、助けて下さった人たちなのです。



屋島から望む高松



現在パリに向かう飛行機の中でこれを書いています。この場を借りて、日本各地(東京渋谷の佐藤紀雄さんチーム、東京江東の金庸太さんチーム、埼玉武蔵ホールの高城いずみさんチーム、高知の佐伯北斗さんチーム、多度津の小倉英子チーム、高松の岸上美保さん、並びに大山まゆみ先生と佐柄晴代先生チーム、岸和田の吉川真澄さんチーム)での7回のコンサート企画、広報に真摯に関わって下さった方々、またご来場下さった方々に、心よりお礼申し上げたいと思います!本当にありがとうございました!!



post a comment