SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

普段着コンサートvol.5 遠近両用の視点~homage to Chick Corea

2021-03-19 13:35:00 | Essay-コラム

大好きなチック・コリアが29日に亡くなってしまって、一曲は彼の曲を、感謝のためにも、私なりに何か今やってみたい、と思っていた。


彼らしいフレンドリーなやり方で、私を作曲へと背中をすっと押してくれた曲は「Cappucino 」というスティーブ・ガッドらと一緒の「Friends」というアルバムに入っている終曲だった。あえて即興の途中からいきなり曲に入るアイデア、そのあとの難易度4回転級の切り込むような速いフレーズの嵐、対照的にツーコードのみで奏者の目眩くモード即興を喚起するコーラス、怒涛の如く異様な転調を繰り返すコーダ。何という恐れを知らない知の自由さよ!ジャズの真髄にいながら、軽〜くジャズというボーダーを乗り越えてしまっている!


そして、こんな鬼のような曲に「カプチーノ」というお気楽なタイトルをわざわざつけて、フレンズ、というこれまたお友達との気軽なセッション、という軽いノリにしてしまう。彼が他と一線を画しているのはきっと、その遊びと知の結晶という相反する二面性の、高い次元での統合なんじゃないか、と思う。



星の数ほどある多作な作品の中から、今回の演奏に選んだのは「You’re everything」、シンプルで美しいメロディーライン、軽快なブラジリアンリズム、南から吹いてくる暖かい風のように心地よく耳当たりがよいこの曲は、実はまたしても知の境地で、かなり複雑な和声進行で出来ている。


このような和声進行の個性的な美しいグリーユ(私はこのフランス語で「格子」を意味するgrilleという言葉を和声構成という意味に当てはめるセンスが好きなのだけど、英語では何て言うんだろう?ワンコーラス、だとテーマ分の長さ、と言う意味になるので同じことを指すけど、ちょっと意味合いは違う)は、グリーユ、その和声進行自体を活かすように音を選ばなければならない。よってブルース進行みたいに自由に好き勝手に即興できる余白は少ない。


それはいたるところに障害物があるところで走るのと同じである。しかもその障害物は作曲者によって美しく配置されていて、踏み潰したり無視してはコースの良さが生かされない。


そこで、近視眼的に一つ一つの和声を鳴らす可能性そのものを探ること、そして遠視的俯瞰的になるべく遠くを見て、一つ一つに拘りすぎず、大きなデッサンを描くこと、この二つが必要になってくると思う。


昔、パウル・クレーの「アド・パルナッスム」という絵画(普段はスイス・ベルンのクレー美術館にあるのが、その時は東京に来ていた。とても大きな絵画で、クレーの傑作の一つ)を見てすごく心に残ったのだけど、その絵は、

遠くから見たらこの上なく洗練されたシンプルなラインが浮き上がり、近くで見ると緻密な様々な色彩の点が数限りなくびっしりと描かれている。異様なまでにマニアックな細部が、後ろに下がって全体を見ると、子供が描いたような純真な線による壮大なファンタジーになるところに、息をのんだ。


その絵はまさに、クレーの徹底した論理性の追求と、自由な子供の感性の解放、という相反する二つのディメンションの奇跡のバランスの上に成り立っている。


最近、超近視の私も歳をとって来て、「次回は遠近両用メガネに替えましょうね!笑」なーんて近所のメガネ屋さんに言われているから、今ならこのクレーのアイデアも、音楽的に掴みやすいかも知れない。


チックコリアの難曲に挑戦しながら、「アド・パルナッスム」を思い出し、こういう風にいつか即興が出来たらいいな、できれば老眼になる頃には、という目標を持てた。


めっちゃ難しいけど、まあ、今日失敗したって落ち込まないさ、明日があるさ、、、まだ完全な老眼じゃないし笑、とか

思う。

大体、即興なんてどれが失敗なのか、分かったもんじゃないし、繰り返すしかない。


何週間も学生の時みたいに練習したけど、まだまだ準備は出来てない。しかしブルガリアのペーターさんがコペンハーゲンで言ってたっけ、「我々はいつだって準備なんて出来てないんだよ。(だからいつだってやらねばならない。)」 


キース・ジャレットに言わせれば、「私は準備が出来ていない。しかし時刻が来たなら即興する」


そして彼は、その意味を解さないミュージシャンの楽屋の時計を、悪戯でワザと早めた。

(彼の本の中には、実名で誰か、書いてあるよ!)


つまりは即興とはこういうことなんだ。


人生そのものなんだ。


準備を誰よりもして、それも死ぬほどしなきゃならない。でもそれが「準備」になっているようじゃダメなんだ。


意味不明、矛盾、ですって?


そうなんですよ、、、即興とは、人生とは、意味がないからこそ、矛盾してるからこそ面白い!!


今日深夜0時よりパリはまたロックダウン()ということです。時刻が迫って来たので、iPhone で録画してしてみました。(使用ループペダルは、bossRC-300、左手のベースラインは、ヤマハ refaceDX )


それではまた、出来れば近いうちに。





1 Comments

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老眼、見事な歳の取り方だ・・歴史を動かす女の匂いがする☆ (昭和ナオフミルク♫)
2021-03-27 20:31:35
失敗を恐れるな。失敗することではなく、目標を低く掲げることが罪なのだ。大きな挑戦なら、失敗さえも栄光となる

俺も超近視(^^♪
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