SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

探さずに見つける。

2023-12-11 14:12:00 | Essay-コラム

最近、谷川俊太郎さんの「ひとり暮らし」を読んでいて、なるほどと思ってしおりを挟んであったページがあるのだけど、そこには、とあるサウンド・アート展に谷川さんが行って、その後同じ日に、画家の難波田龍起展に行った時のことが書かれていた。


難波田さんの抽象は生きることの具体性から生まれてきたが、「サウンド・アート」の作家たちは、観念から出発して生きることの具体性に触れようとして触れ得ないでいるのだろうか」


この本は日記的また散文的で、答えのない、まさに詩のような感じなのだけれど、谷川さんの芸術に対する考えが、日々の生活の中に映し出されていて面白い。


先日、とある音楽を聴く機会があった。即興音楽であったが、聴きながら、音としても現代的で素晴らしいし、良くお互いが聴いている。楽器も上手く、どんなジャンルでも演奏できるキャパシティだってある。有名な人たちだし、経験豊かで、落ち着いている。しかしどう言う訳か聴いているうちに段々、元気がなくなってきてしまった。


で、ずーっと、この不完全燃焼な感覚って何なんだともやもやしていた結果、この谷川さんのしおりを挟んだページのことを思い出したのだった。


こうなってもいいけど、こうなっても良かったかも、という音楽。


音の表面のエキセントリックさとは逆に、何故かとても守備的に聴こえる。


こうも出来たけれど、自分はこの時こうしたかった、だからそれに正直になることが大事です、とかいう具合に。いつも探っていて、かつ逃げ場もいっぱいある。


最初は感心して聴いていたのに、だんだん、原因不明の鈍痛が心を覆っていく。



そのことを、親愛なるアフリカ音楽専門家の即興アトリエの同僚Cに話すと、


C「やっぱり音楽ってさ、これしかない!か、いやこれじゃない!か、どっちかじゃないか。アフリカでだって、師匠がこうだ!というのを演奏してみせて、そうであるのかどうか、そこが肝心だろ。」


「だよねー。こういうのって、個人的な「分析の探究」みたいになっちゃってない?「これしかない」っていうものがその人の直観から溢れ出てくる、そういうものが、私たちの求めているものだよね。」


C「そう、芸術とは、分析されたり、曖昧になることを拒む、唯一つのものなんだ。」


「私は探さない。私は見つける」、確かそうピカソは言ったっけ。


そうこうあって頭痛のする週末明けの月曜。 行きつけのフルートのアトリエの修理人Cさん(またしてもCだ!)のところに行くことにしていた。


何故かというと、先週娘のフルートの修理に行った時に、Cさんが「ミエ!今すごい中古のブランネン(注・アメリカのメーカー、ブランネン・クーパーのフルート)が手元にあるんだ!絶対ミエの気に入ると思うから、吹いてみな?」って言うから試奏したら、もうこれがブッ飛んでしまう程のすごい感覚で、どうしてもその感覚が忘れられないから、(頭で良いなぁと思うフルートはいっぱいあるけど、このブランネンの場合は、自分のフルートを吹いていてもその感覚が蘇ってきてもうもとにもどれないような、恋に落ちたような生々しい感覚)、もう一度吹きたいと、彼のアトリエに戻って来たのだった。


Cさん曰く


「これね、実は亡くなった偉大なフルーティスト、Dさんの遺品なんだ。どうしても他の人に渡したくないから買っちゃった」


だって!


「あーた、買ったの!?先週試した時はそんなこと言ってなかったじゃん!すんごい高いでしょこれ?狂気の沙汰じゃないの?!」


「そう、僕は楽器に関しては病的なんだ、、、箱を開けた瞬間に、これがすごい楽器だって分かるんだ。だからとにかく買ったんだ。それで満足なんだ。でも、この楽器が本当に素晴らしいと分からせてくれたのは、他でもない、君なんだよ。一週間前君がこのフルートを吹いた時、僕は確信したんだ。この楽器は特別であり、今買うべきであり、いつかはそれを君が吹くべきだと。」


なんたる話!

もう頭痛なんて吹っ飛んだがな。


私はこれまでにも、もう5年に渡って彼にお世話になった間、山ほど色んなフルートを彼の店で試してきたから、彼がお金儲けのためにこの話をしているのではない、直感の話をしているんだ、ということが良くわかる。


そしてそんな直観は、個人的な利益の範疇を越えるのだ。


Cさんは続ける。


「僕は探さない、僕は見つけた。いつだってこうなんだよ。だからこの楽器は、君のために僕がとっておく。」


…図らずも運命を共にしてしまった、Cさんのブランネン。


果たして本当に、この超高い楽器が、私に買える日が来るのだろうか?!


また冒険が始まった()


To be continue!!!!!お楽しみに。



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