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すみすさん、経済学院生さんへのお答え

2006年05月06日 20時10分53秒 | 俺のそれ
「経済学院生」さんより、興味深いコメントを頂きました。

貸金業の上限金利問題~その10

それについてお答えしたいと思います。また、「すみす」さんへのお答えの中で、「薬剤との対比」ということを書きましたので、そこから書いてみたいと思います。


正確に言うと実際とは異なっていますが、仮に、次のようなことが知られているとします。

一般的な薬物の効果に影響する生体の反応を考えます。通常、投与された薬物は次のような変化をするとします(とりあえず注射や点滴のような血中投与とします)。それぞれの薬物の種類や量によって、当然異なります。


代謝条件:

①投与された薬物の20~50%は直ぐに血中タンパクと結合して不活性化される
②肝臓を通過した薬物は、単位時間当たり30~60%が分解される
③肺を通過した薬物は、単位時間当たり5~10%が呼気中に排泄され体外へ出る


これが生体の基本的反応であるとします。ここで、次の薬物を投与するものとします。薬物の作用(薬効)は、分解されたり不活性化されたりせずに血液中に残存している薬物の量に比例するとします。

・血圧を上昇させる薬物A,B,C,D(他の作用や副作用はないものとする)
・上昇作用はAが5%、Bが10%、Cが20%、Dが30%
・各薬物の投与量はランダム
・種類の組み合わせもランダム
・投与期間、投与時期もランダム

以上の薬物を投与されている人に
・薬物?(A~Dのどれか)を量・時期はランダムに投与
・場合によって、更に薬物?を追加投与
・投与からある時間経過後、調査
・薬物投与された人たちを脳血管の「破裂群」と「非破裂群」に分類
・脳血管破裂は個人差(血管弾力性による違い)があるので破裂限界は不明


脳血管破裂は血圧上昇によるもので、他の疾病の要因は皆無であるとします。件のペーパーのような結論を出せば、

・薬物投与量、種類は、破裂群ではやや多かったが、非破裂群と明確な違いがみられなかった
・途中で投与した薬物?は、原因と言えなかった
・最も大きな影響を与えたと考えられるのは、「個体差」である


このモデルを見て、「そうでしたか、個体差による影響が一番だったのですね」という結論である時、これは、どのような科学的意味がありますか?生体の薬物代謝能力の違いによる、というのは、当たり前です、と言っているのです。投与された薬物の薬効自体を変える要因が、「個体差」しかないのですから。破裂限界も個体差ですし。薬物の影響を調べるのに、このようなモデルは不適切です、と何度も言っているのです。借金返済の場合にも、時間経過とともに増減するのは、「収入」と「支出」だけなのですよ?代謝条件①、②などと、同じ意味合いであると思います(むしろ、ペーパーの場合には、この条件すら無視或いは未知)。


個体差は条件①~③の組み合わせによって、各々変わっていきます。この程度はどのくらいかは、事前に予測は困難です。しかも、刻々と変動します。で、破裂群では「血中タンパクが以前よりも減ったから」「肝臓の機能が最初よりも落ちてしまったから」「肺循環の低下があったから」という理由が破裂原因の主なものです、ということであるならば、薬物のリスク評価や、追加投与した薬物の評価がどうしてできるのでしょう?上記モデルは、本当に科学的だと言えるのでしょうか?


このような証拠を持ってきて、「破裂したのは、薬物を投与したせいではない」と何故言えるのですか?そのような思考に疑問を感じる、と言っているのです。初期投与や追加投与の薬物のリスクを評価するのであれば、もっと別な条件を設定して検証するべきで、上記モデルで説明要因は、「個体差である」って、モデルの根本的発想が間違っている、というのが私の主張です。更に、この論文を「上限引下げ」反対の論拠として用いることが正しいとも思いません。金利水準に何らかの判断を与えるものではないからです。

これを正当であり、科学的結論だと信じている、と言われるならば、これ以上、説明のしようがないです。「経済学の世界」では、それが「常識」なのだろう、と解釈するしかありません。


「経済学は科学である」と力説する人々がいなくとも、多分「科学的」な学問であろうと素人ながらに思ってはいましたが、その信頼性は大きく揺らいでいますね。


それから、「経済学院生」さんのコメントを一部引用させて頂きます。

『失われるであろう信用による逸失利益と、販売による利益を比べて、信用を損なうことによる不利益のほうが大きければ販売をとりやめるだけです。』

実際、三菱自動車はリコールせず、アイフルは違法取立てを行っていたわけで、どちらも行政の介入となってしまったと思います。現実世界では必ずしも合理的判断を優先するとは限らない、ということではないかと。これは裏を返せば、「市場」が不完全である、ということなのではないでしょうか?是非経済学をご専門にされている人々に、そう仰って頂ければ有難いです。介入の必要性もあるかもしれない、と。

情報の非対称性とのかかわりについては、改めて記事に書いてみたいと思っています。


『「風呂オケ」モデルを用いて、どのようなことを伝えようとしているのですか?
坂野ペーパーは、
1.借金を一度したら、過剰融資で借金漬けにされてしまって、自己破産した
2.借金の後減収によって借金が返せなくなって、自己破産した
というふたつのケースのうち、どちらがより重要か検討しているペーパーだってわかってる?』


1について:
今まで、「ライフイベント」そのものについて、それは違う、と否定したことなどありませんが?それは以前の記事をお読み頂ければお判りになるかと思います。「風呂オケ」モデルは、記事の続きを是非お読み頂きたく思います。

また、件のペーパーでは、データ提供会社による初期貸付及び追加貸付が無理(過剰)な融資となっていなかったかどうかが検証されているだけ(上記モデルでは薬物?の初期投与+薬物?の追加投与)であって、その後には大半が(破産群も非破産群も)他社からの融資が増額されているわけで、世間一般で言う「過剰融資」の否定でも何でもないと思って読みましたが?経済学では、ある融資実行後に別会社からさらに融資された場合には、借入総額が何倍かに増大しても「過剰融資とは定義しない」ということでしょうか?それが経済学では普通なのでしょうか?上記モデルでいえば、他の誰かはその後にA~Dのどれかの薬物を投与していることにかわりはないようにしか思えませんけれども。


2について:前述した通りです。


『bewaadさんにこてんぱんに言い負かされているのは、あまりかっこよくないと思います。経済学の知識がないってことは自分でわかってますよね?だったら、少なくとも教えを請う姿勢が必要でしょう。』


それは勿論判っておりますよ。こてんぱんでも、かっこ悪くても私はかまいませんが、全てを答えてないことに違いはないと思います。いくら私のことを「かっこ悪い」と言ってみても生産的ではありませんし、私なんかよりもはるかに知識の多い、経済学の本職であるところの経済学院生さんが代わりにお答え頂けるなら、嬉しく思います。

以前の記事(その9)に書いたように、ナゾが未だに解けないのです。


それは再掲しますと、次のようなものです。


1)「消費者金融顧客の自己破産の分析~その特徴と原因」について

①「破産」「非破産」群の区分が不適切であり、特に「非破産」群では追跡調査が何も示されておらず、不適切な区分の群間を比較検討したところで、そこから得られる結果というのは信頼に値しないものではないか

②仮に、本モデルを採用したとしても、「金利水準」についての分析結果を与えているものではないので、「初期貸付額」とか「追加貸付額」の分析で「有意差がなかった」という結論が出ていたとしても、「金利水準」に何らかの判断を与えるものではない

それから、bewaadさんからご回答頂いた次の部分。

『多い数をとっても多重債務者は10%以下でしかありません。「破産」寸前は多重債務者以外にもいるとして、安全を見て倍の数字をとっても約18%。「破産」寸前の者を除去した際、仮に「非破産」と「破産」に有意な差が1や2において存在するとしても、それはごくわずかなものだと推測可能です。』

で、私の疑問は、
「非破産群」中の9~18%が破産寸前かどうかを推定することは可能とは思えず、その後に破産する割合を推定するのが困難なことに違いはないと思われますが。


2)「上限金利規制が消費者金融市場と日本経済に与える影響」について

①「上限金利引下げによって、借入不能になる層が出てくる」というのが、論文の示した結果が正しいのであるとすれば、貸出口座数や信用供与額は減少すると推測され、過去の引き下げ(83年、86年、91年、00年)でその通りの現象がどの程度観察されているのか

②マクロ経済への影響については、「上限金利引下げでGDPが減少する」というシミュレーションをしているが、同じく過去の引き下げ後にGDP統計上では必ずしも減少にはなっていない。他の要因によって相殺されたとも考えられるが、信用供与額の減少によってGDP減少が起こるならば、信用供与額減少ということが見られるはずではないか


3)「上限金利引き下げの影響に関する考察」について

①闇金の増加と金利上限引下げの関連性については、「引き下げられれば、闇金市場へ流入する層が増加する」ということが述べられているが、「金利上限引下げが闇金業者の増加をもたらす」とする理由が不明確


経済学のご専門の方であれば、きっとすぐに答えが判るでしょう。もしもよろしければ、是非ともご教示頂ければと思います。


個人的な希望を述べますと、経済学大学院生の知的水準の高さを実証して頂けるならば、「経済学院生」さんの言説は、まことに説得力のあるものとして真摯に受け止めたいです。