いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

違法販売はどこまで罰するか

2006年06月22日 21時59分53秒 | 法関係
最近、次々とドラッグストアの違法販売が明らかになりました。今まで報道で判明しているのは、イオン、マツキヨ、ダイエー、西友、スギ薬局といった流通チェーン系の大手ドラッグです。このような場合に、違法行為にどの程度まで責任を課すのか、という問題があると思います。


Yahooニュース - 毎日新聞 - <医薬品違法販売>スギ薬局12店舗処方せんなく 中部地方

(記事より一部抜粋)

抗アレルギー性精神安定剤の「アタラックスP」や虫下しの「コンバントリン」など。いずれも昨年4月の薬事法改正で処方せんが必要な薬品に指定されたが、同月から今年3月まで違法に販売していた。医薬品の違法販売はイオンや西友、マツモトキヨシなどで相次いで発覚している。




この問題を考える前に、まず簡単な例を考えてみましょう。

通常、一般個人がネットで薬品を販売した場合、薬事法違反で捕まってしまうでしょう。事実、過去にも逮捕された個人が存在していますね。特に多く見られるのは、向精神薬、睡眠薬や鎮痛薬などであったと記憶しています(そういうものじゃないと需要がないからでしょう。通常のOTC薬であれば、近くのドラッグストアなどで購入できますもんね)。まあ、販売している薬の中身は何でもいいんですが、要は違法販売で「逮捕される」ということです。その販売量には必ずしも比例していないと思います。多く売ると逮捕され、少ないと捕まらない、ということはなくて、量的違いは本来的関係ないはずだろうと思います。


では、大手のドラッグストアが違法販売をしていた場合には、どうでしょうか?上で見たように、一般個人には「刑事罰」が与えられるわけです。でも、法人とか大きな企業であると、刑事罰は免れるでしょうか?普通は、同じであろうと思いますね。杓子定規に法律を適用すると、「違法なものは違法」としか言いようがないのです。


規制の根拠となる薬事法を見てみましょう。
(処方せんの必要な薬品は厚生労働大臣の指定による、ということになっており、その指定は厚生労働省令とか告示であると思いますが、何処に記載されているかはちょっと判りませんでした。「日本薬局方」がそうだとしても、これが厚生労働大臣の指定にあたるかは判りません。)


薬事法  第49条  

薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方せんの交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者、医師、歯科医師若しくは獣医師又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に販売し、又は授与するときは、この限りでない。

2 以下略


この49条規定では、簡潔に言えば、「処方せんの交付を受けた以外の者」に対して、「正当な理由なく、販売又は授与してはならない」ということです。つまり、(厚生労働大臣が指定する)「処方せん医薬品」は、処方せんのある人だけに販売していいですよ、ということです。


今回問題となったのは、「処方せん医薬品」でありながら、「処方せん交付を受けてない者」に販売していた、ということです。この第49条に違反した場合には、次の条文によって罰則が適用されます。


薬事法  第84条

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1~12 省略
13 第四十九条第一項の規定に違反した者
14 以下略


このようにして、第49条違反がある場合には第84条第13号が適用となり、「3年以下の懲役、若しくは300万円以下の罰金」(場合により、両方の罰の組み合わせ)の処分を受けることになります。


ここで考えるべき問題としては、今回発覚した大手ドラッグチェーンの薬事法違反に対して、「刑事責任を追及するのが妥当なのか」ということですね。普通に考えれば、「条文通り」でしょう。そうなると、販売した店舗の薬剤師は全員逮捕、ということになってしまいます。他にも、行政責任は問われると思われ、少なくとも行政指導、悪ければ行政処分となってしまうでしょう。さて、悪質度という点ではどうでしょうか?意図的に悪巧みとか、そういうことではないでしょうね。指定区分が変更になり、以前は「処方せん医薬品」でなかったものが、改正で「処方せん医薬品」に指定された為に生じたミス、ということのようですので。


法の適用は、やはり弾力的に運用していくほかなく、四角四面で適用すればよいかというと、そうでもない場合もあるでしょう。だが、最初に例を挙げたように、一般個人が勝手に薬品を売買していたら、果たして刑事罰を与えないで済ませられるのかというと、これはやっぱりダメだろうと思う。危険性が違うと思うので、そういうことも考えて判断するということになるのかな?

今後も、チェーン系のドラッグストアでのミスが出てくる可能性はあるかもしれません。どうやって対策を講じるか、ということも考える必要があるでしょう。


ところで本題とは関係ないのですが、「アタラックスP」など、というような記事が出てましたが、一般人がそんな薬を指定して買いにくるのだろうか?以前に買ったことがあって、その後にも使ってる人がいたとか?それも珍しいようにも思うけどね。有名なカゼ薬とか、そういうのならば判るけど・・・。

「あたぴに、アタP下さい」

とか言わないでしょ?(さむ~、オヤジギャグでごめんなさい)

しかもこの薬は、「抗アレルギー性精神安定剤」と記事には書かれているけど、「抗アレルギー」と「精神安定剤」という全く別な病状に対して用いると思われ、主に「この精神安定剤をくれ」という微妙な?というか割と薬に詳しいマニアな人が買いに行ってたんじゃなかろうか、という勘繰りをしてしまいます。それとも、ドラッグストアの薬剤師さんが「これがオススメです」とか教えたのではないのかな。どちらにしても、ある程度の薬の知識がある人(薬剤師かマニアな人)が選択しないと、「アタラックスP」を買うというところまでは辿り着けないと思うけどね。

あと、「抗アレルギー」を主目的に使うとするなら、相当眠くなってしまい、日中の仕事とか車の運転は困ると思うけど、どうなんでしょ?