メディアはなぜこうした「釣り」記事をもっともらしく載せたがるのだろうか?
評価が十分なものではないのに、「アルコールと運転の危険性」を関連付けて結論に持ってくるものも相当にオカシイと思うのだけど。もっと科学的な調査研究はたくさんあるだろうに。どうしても載せたいなら、結果だけ「素直に」載せればいいんだよ。「理系白書」の担当記者あたりに聞いてごらんよ。この記事がヘンだということを未だに気付かないのは、全然科学リテラシー向上には役立ってないんではないか?「理系白書」(笑)。
朝日と毎日を比べてみよう。
まず、毎日の記事から(一部抜粋)。
菊正宗:飲酒後2時間「怒り」高まる--清酒で調査-暮らし:MSN毎日インタラクティブ
調査は9月末に実施。同社総合研究所の研究員10人が自分で酔ったと感じるまで清酒を飲み、飲酒前と直後、30分後、1、2、3時間後に心理テストに回答。結果をポイントに換算し分析した。
その結果、「活気」を示す数値は飲酒直後は上昇したが、時間がたつにつれて下がった。1時間後には飲む前と同じ数値に戻り、3時間後には大幅に低下した。「抑うつ」「怒り」「混乱」の数値は飲酒直後にはすべて低下したが、30分後には上昇に転じ、2時間後には飲む前を上回った。緊張を示す数値は飲酒により低下し、その後も上昇しなかった。同研究所の溝口晴彦所長は「時間が経過しても、飲酒の反動でネガティブな精神状態になる人がいることが分かった。本人が酔いが覚めたと思っても運転には危険な状態と知ってほしい」としている。【脇田顕辞】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/apples.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/apples.gif)
続いて、朝日の記事。
asahicom: 飲酒で「緊張感」低下、3時間後も回復せず 菊正宗調査-関西
酔いからさめたつもりでも緊張感は低下、運転は危険――。菊正宗酒造(神戸市)は3日、飲酒後の気持ちの変化に関する調査結果を公表した。調査では、飲酒後3時間たっても緊張感を示す数値は回復せず、疲労感は一段と高まっていた。「酔い」を心理の面から分析した調査は珍しいという。
30~50代の社員10人を対象に、心理テストの一種、気分プロフィル検査(POMS)という手法で調査。1.5合~4合(1合は180ミリリットル)の清酒を飲み、緊張や混乱、怒りなど六つの感情面の変化を数値化した。
「緊張感」を示す値では、飲酒前の45.3ポイントから飲酒直後には37.3ポイントまで低下。3時間たっても40ポイントにしか回復しなかった。「疲労」では、飲酒前44.8ポイントから飲酒直後には38.9ポイントまで和らいだが、3時間後には51.8まで疲労感が募る結果となった。3時間後のアルコール血中濃度は0.01%前後で「ほぼ酔いを感じない」レベルだったという。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/apples.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/apples.gif)
朝日の記事の方がまだマシ。だが、「酔いからさめたつもりでも緊張感は低下、運転は危険」という一文を入れるのがオカシイのですよ。実験の結果を載せたいなら、その通り載せればいいですよね。そこで、なぜ「運転は危険」ということと「関連付けて」断定した結論を書くのでしょう?そういう「考え方」が根本的にオカシイと思いますよ、文系は(笑)。
「緊張感は低下したままで、3時間後でも回復しなかった」ということと、「運転は危険」ということは別の評価でしょ。せいぜい頑張って言えそうなことは(あくまで類推だけど、という意味で)、3時間経っても大脳の機能が「元通り回復しているとは限らない」ということくらいでしょ。なので、「運転は避けるべき」というアドバイスをするのでしょう?それ以上のことは言えないと思いますよ。
もっとヒドイのは毎日の記事。
記事中の、
『溝口晴彦所長は「時間が経過しても、飲酒の反動でネガティブな精神状態になる人がいることが分かった。本人が酔いが覚めたと思っても運転には危険な状態と知ってほしい」としている。』
この部分ですけれども、前段の実験結果の記事から、「運転には危険な状態」という結論をどうやって示せるのでしょうか?所長さんがどのような説明をしていたのかは判りませんが、編集せずにそのまま書いたのでしょうか?こういうのを「不思議に思わない」というリテラシーの無さを、記者さんは知っておいた方がいいと思うね。
『飲酒の反動でネガティブな精神状態』=『運転には危険な状態』
これがどうやって「判るのか」ということですよ。
「ネガティブな精神状態」の原因は「飲酒の反動」なんですと。まあ、それが本当だとして、「ネガティブな精神状態」は飲酒だけで起こるのですか?例えば、大失恋とかだったら?実験そのものを知らないから私には評価できませんが、「ネガティブな精神状態」を作り出すものであれば、何でもそうですよね。
今度は、「運転には危険な状態」というのは、どんな状態かを考えてみましょう。通常、自動車学校などで教わる運転というのは、「識別」「認知」「推測」→「判断」→「動作」「行動」みたいな感じではなかったでしょうか(資料がないので、不正確かもしれん)。つまり、これらの過程で「大脳の働き」が重要なので、大脳の機能が回復していないと「正しく認知できない」「正しく、素早く判断できない」「反応動作が遅れる」「動作を誤る」というようなことが起こる確率が高くなる、ということでしょう。こういうのが「運転には危険な状態」ということですよね?なので、運転の危険性を判定するのであれば、「認知能力」「判断能力」「動作反応時間」みたいなものを評価しないとダメってことですよね。
「怒りっぽい」という変化が運転しちゃいけない、とかってことになったら、相当数の人々が免許を取り上げられるかもしれませんよね(笑)。「緊張がたりない」とか「活気がない」というのも、必ずしも運転能力を左右するものかどうか判らんでしょ。「精神活動」のうち「心理」やら「情動」だかの変化を見るのと、「行動や動作の正確性、素早さ」を見るのでは、意味が違うと思うけど。なので、もっともらしい結論を安易に書かない方がいいんですよ。その実験から「言える(言えそう)」なことだけをきちんと選別して書くべきだね。
またヘンな喩えですまないが、簡単な例を書いてみよう。
対戦型格闘ゲームがあるとして、Aさんはいつも上手で強いが、Bさんはいつも下手で弱い。理由は、「認知(予測)・判断・操作(動作)」の全てでAさんがBさんより優れているからだ。ゲームが強い、というのは簡単に言うとそういうことだ。運転も同じようなものです。で、Aさんが酒を飲んでちょっと酔っ払っている時でも、シラフのBさんの能力を上回っているかもしれない。実際にゲームで対戦したりすると、酔ってるAさんにBさんはアッサリと負けちゃうかもしれないのだ。個人の能力差は必ずある。運転でもそう。高齢者の方が、案外と危険なこともある。別に酔っ払ってなくても。
だからといって、飲んで運転しちゃ絶対にダメですよ。どんなに自信があっても、大脳の機能が回復するには結構な時間がかかるので、「いつもの自分」の能力よりも落ちていることは確かだし、その結果事故の確率は高くなると思うよ、やっぱり。それに「いつもなら間に合う」とか「いつもなら正しくできてた」ことであっても、自分が思ってるより動作に時間がかかったり操作をミスったりするかもしれないからね。対戦ゲームをやると判ると思いますよ、多分(笑)。「あれー、いつもは上手にできてたハズなのに」とか、レバー操作の反応が遅れてしまった為に相手のクサい技にまんまとひっかかったりして、「おかしーな・・・」なんてことを思うかもしれないですよ。
飲酒後では、平常状態の自分からは「かけ離れた自分」に脳みそが勝手になってしまっているので、運転はダメですよ絶対に。
<休憩所:
一般的に言われているのは、アルコール自体は脳に対する抑制作用ですね。決して「興奮作用」ではないんですよ。見かけ上「うるさく」なったり「陽気に」なったり興奮しているように見えるのは、普段はそういう活動を「抑制系ニューロン」が抑えているのですが、この「抑制系ニューロン」がアルコールの作用で興奮系よりも先に「抑制」されるので、「ハメを外す」結果となってしまうのです(笑)。いつもなら理性が働いて「抑制する働き」があったものが、アルコールで「抑制する働き」そのものが抑制されてしまうのですよ。つまりは、某ウエ草氏のように、自分の欲望を抑制しておけなくなってしまったりするのです(笑)。でも、更に飲んで酔っ払うと、興奮系ニューロンも抑制が効いてくるので、だんだんと「静か」になり、「グッタリ」します。これはある意味、危険信号ですね。飲む量はホドホドに。って、それは私だな。歳のせいか、弱くなってしまって・・・・>
評価が十分なものではないのに、「アルコールと運転の危険性」を関連付けて結論に持ってくるものも相当にオカシイと思うのだけど。もっと科学的な調査研究はたくさんあるだろうに。どうしても載せたいなら、結果だけ「素直に」載せればいいんだよ。「理系白書」の担当記者あたりに聞いてごらんよ。この記事がヘンだということを未だに気付かないのは、全然科学リテラシー向上には役立ってないんではないか?「理系白書」(笑)。
朝日と毎日を比べてみよう。
まず、毎日の記事から(一部抜粋)。
菊正宗:飲酒後2時間「怒り」高まる--清酒で調査-暮らし:MSN毎日インタラクティブ
調査は9月末に実施。同社総合研究所の研究員10人が自分で酔ったと感じるまで清酒を飲み、飲酒前と直後、30分後、1、2、3時間後に心理テストに回答。結果をポイントに換算し分析した。
その結果、「活気」を示す数値は飲酒直後は上昇したが、時間がたつにつれて下がった。1時間後には飲む前と同じ数値に戻り、3時間後には大幅に低下した。「抑うつ」「怒り」「混乱」の数値は飲酒直後にはすべて低下したが、30分後には上昇に転じ、2時間後には飲む前を上回った。緊張を示す数値は飲酒により低下し、その後も上昇しなかった。同研究所の溝口晴彦所長は「時間が経過しても、飲酒の反動でネガティブな精神状態になる人がいることが分かった。本人が酔いが覚めたと思っても運転には危険な状態と知ってほしい」としている。【脇田顕辞】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/apples.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/apples.gif)
続いて、朝日の記事。
asahicom: 飲酒で「緊張感」低下、3時間後も回復せず 菊正宗調査-関西
酔いからさめたつもりでも緊張感は低下、運転は危険――。菊正宗酒造(神戸市)は3日、飲酒後の気持ちの変化に関する調査結果を公表した。調査では、飲酒後3時間たっても緊張感を示す数値は回復せず、疲労感は一段と高まっていた。「酔い」を心理の面から分析した調査は珍しいという。
30~50代の社員10人を対象に、心理テストの一種、気分プロフィル検査(POMS)という手法で調査。1.5合~4合(1合は180ミリリットル)の清酒を飲み、緊張や混乱、怒りなど六つの感情面の変化を数値化した。
「緊張感」を示す値では、飲酒前の45.3ポイントから飲酒直後には37.3ポイントまで低下。3時間たっても40ポイントにしか回復しなかった。「疲労」では、飲酒前44.8ポイントから飲酒直後には38.9ポイントまで和らいだが、3時間後には51.8まで疲労感が募る結果となった。3時間後のアルコール血中濃度は0.01%前後で「ほぼ酔いを感じない」レベルだったという。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/apples.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/apples.gif)
朝日の記事の方がまだマシ。だが、「酔いからさめたつもりでも緊張感は低下、運転は危険」という一文を入れるのがオカシイのですよ。実験の結果を載せたいなら、その通り載せればいいですよね。そこで、なぜ「運転は危険」ということと「関連付けて」断定した結論を書くのでしょう?そういう「考え方」が根本的にオカシイと思いますよ、文系は(笑)。
「緊張感は低下したままで、3時間後でも回復しなかった」ということと、「運転は危険」ということは別の評価でしょ。せいぜい頑張って言えそうなことは(あくまで類推だけど、という意味で)、3時間経っても大脳の機能が「元通り回復しているとは限らない」ということくらいでしょ。なので、「運転は避けるべき」というアドバイスをするのでしょう?それ以上のことは言えないと思いますよ。
もっとヒドイのは毎日の記事。
記事中の、
『溝口晴彦所長は「時間が経過しても、飲酒の反動でネガティブな精神状態になる人がいることが分かった。本人が酔いが覚めたと思っても運転には危険な状態と知ってほしい」としている。』
この部分ですけれども、前段の実験結果の記事から、「運転には危険な状態」という結論をどうやって示せるのでしょうか?所長さんがどのような説明をしていたのかは判りませんが、編集せずにそのまま書いたのでしょうか?こういうのを「不思議に思わない」というリテラシーの無さを、記者さんは知っておいた方がいいと思うね。
『飲酒の反動でネガティブな精神状態』=『運転には危険な状態』
これがどうやって「判るのか」ということですよ。
「ネガティブな精神状態」の原因は「飲酒の反動」なんですと。まあ、それが本当だとして、「ネガティブな精神状態」は飲酒だけで起こるのですか?例えば、大失恋とかだったら?実験そのものを知らないから私には評価できませんが、「ネガティブな精神状態」を作り出すものであれば、何でもそうですよね。
今度は、「運転には危険な状態」というのは、どんな状態かを考えてみましょう。通常、自動車学校などで教わる運転というのは、「識別」「認知」「推測」→「判断」→「動作」「行動」みたいな感じではなかったでしょうか(資料がないので、不正確かもしれん)。つまり、これらの過程で「大脳の働き」が重要なので、大脳の機能が回復していないと「正しく認知できない」「正しく、素早く判断できない」「反応動作が遅れる」「動作を誤る」というようなことが起こる確率が高くなる、ということでしょう。こういうのが「運転には危険な状態」ということですよね?なので、運転の危険性を判定するのであれば、「認知能力」「判断能力」「動作反応時間」みたいなものを評価しないとダメってことですよね。
「怒りっぽい」という変化が運転しちゃいけない、とかってことになったら、相当数の人々が免許を取り上げられるかもしれませんよね(笑)。「緊張がたりない」とか「活気がない」というのも、必ずしも運転能力を左右するものかどうか判らんでしょ。「精神活動」のうち「心理」やら「情動」だかの変化を見るのと、「行動や動作の正確性、素早さ」を見るのでは、意味が違うと思うけど。なので、もっともらしい結論を安易に書かない方がいいんですよ。その実験から「言える(言えそう)」なことだけをきちんと選別して書くべきだね。
またヘンな喩えですまないが、簡単な例を書いてみよう。
対戦型格闘ゲームがあるとして、Aさんはいつも上手で強いが、Bさんはいつも下手で弱い。理由は、「認知(予測)・判断・操作(動作)」の全てでAさんがBさんより優れているからだ。ゲームが強い、というのは簡単に言うとそういうことだ。運転も同じようなものです。で、Aさんが酒を飲んでちょっと酔っ払っている時でも、シラフのBさんの能力を上回っているかもしれない。実際にゲームで対戦したりすると、酔ってるAさんにBさんはアッサリと負けちゃうかもしれないのだ。個人の能力差は必ずある。運転でもそう。高齢者の方が、案外と危険なこともある。別に酔っ払ってなくても。
だからといって、飲んで運転しちゃ絶対にダメですよ。どんなに自信があっても、大脳の機能が回復するには結構な時間がかかるので、「いつもの自分」の能力よりも落ちていることは確かだし、その結果事故の確率は高くなると思うよ、やっぱり。それに「いつもなら間に合う」とか「いつもなら正しくできてた」ことであっても、自分が思ってるより動作に時間がかかったり操作をミスったりするかもしれないからね。対戦ゲームをやると判ると思いますよ、多分(笑)。「あれー、いつもは上手にできてたハズなのに」とか、レバー操作の反応が遅れてしまった為に相手のクサい技にまんまとひっかかったりして、「おかしーな・・・」なんてことを思うかもしれないですよ。
飲酒後では、平常状態の自分からは「かけ離れた自分」に脳みそが勝手になってしまっているので、運転はダメですよ絶対に。
<休憩所:
一般的に言われているのは、アルコール自体は脳に対する抑制作用ですね。決して「興奮作用」ではないんですよ。見かけ上「うるさく」なったり「陽気に」なったり興奮しているように見えるのは、普段はそういう活動を「抑制系ニューロン」が抑えているのですが、この「抑制系ニューロン」がアルコールの作用で興奮系よりも先に「抑制」されるので、「ハメを外す」結果となってしまうのです(笑)。いつもなら理性が働いて「抑制する働き」があったものが、アルコールで「抑制する働き」そのものが抑制されてしまうのですよ。つまりは、某ウエ草氏のように、自分の欲望を抑制しておけなくなってしまったりするのです(笑)。でも、更に飲んで酔っ払うと、興奮系ニューロンも抑制が効いてくるので、だんだんと「静か」になり、「グッタリ」します。これはある意味、危険信号ですね。飲む量はホドホドに。って、それは私だな。歳のせいか、弱くなってしまって・・・・>