昨日、貸金の団信について書いたのですが、今度は連帯保証について見ることにします。本当は昨日書こうと思っていたのですけど、寝てしまいました。
ちょっとその前に、質問を頂いたことについて少しお答えしたいと思います。まず、私自身も消費者金融から借りた経験はないので、正確なことが言えないのですけれども、住宅ローンの団信から「代位弁済」と保険の関係について見ることにします。
貸金業の団信の効果
公庫の説明が分かり易いので、載せておきます。
公庫団信のご案内
「保証協会」があって、保険会社との保険契約を締結し、保証協会が受取人です。保証協会は住宅ローン債権者に「代位弁済」するということになるかと思います。で、債務者は保証協会との「債務弁済委託契約」を締結しておく、ということです。
住宅ローンの場合には、保証協会の「保証OK」という審査をクリアできなければ融資は実行されず、「貸し手」の判断以外に審査を受けるということになっており、無闇やたらと貸し出すことは避けられる(まあ、銀行貸出でそういうことは基本的に少ないと思いますけど)ということになると思います。保証協会は保険加入による代位弁済を行うのと同時に、「融資審査」という部分において一定の役割を果たしているのではないでしょうか。稀に断られることがあるそうですので。
これが貸金の場合だとどのようになるかと言えば、保証協会と債権者が同一ということになるのではないかと思われますが、実際どうなのか不明です。貸金業界の中にもこれに類する「保証協会」みたいな団体を作っておいて、仕組みは同じようになっている可能性はあるかもしれません。
もしも貸金業者との契約が、保証協会のような中間組織がなく債権者と保険契約者が同一である場合、借り手は貸金業者と死亡時保険金による債務弁済契約を締結しているのではないかと思います。生保会社が「代位弁済」の契約を債務者と締結しているわけではないはずで、あくまで団体生命保険の提供であろうと思います。
次に連帯保証ですけれども、「連帯保証は悪くないんだ」という理屈を言うのも判る面はありますが、その一方では、何を奇麗事言ってるんだよ、とか、世間知らずの坊ちゃん連中に何が判るの?とか、ちょっと思ったりしますね。
貸金に限ったことではなく、連帯保証というのは色々な場面で利用されています。販売関連のクレジットでもそうですよね。それはごく普通で、そんなことも知らない人は逆に少ないのではないかと思えます(お金持ちはあまり縁がないかも)。なので、連帯保証の存在そのものが「悪い」と言ってる人は少ないと思いますけど。そういう発想そのものが、借金をしたことのない坊ちゃんだと思うのですよ。
また例で考えてみましょう。
今年卒業したての若者がいるとします。欲しい車があってどうしても購入したいのですが、少しの頭金程度しか持ってないとします。このような場合に、販売店側は「提携ローンがありますよ」とか教えてくれます。キャンペーンなどでローン金利を優遇(2.9%とか、1.9%とか)して購買意欲を高めるという場合もあったりしますね。通常の自動車ローン金利が現在どの程度なのか判りませんが、5~7%程度ではないかと思います。そういうローンならば、キャッシュを持っていない若者でも車が購入できる、ということですね。
で、ローン契約ということになると思いますが、若者は今年勤務を始めたばかりで年数も経っていないし、収入もそれほど多い訳ではないことが多いので、「信用力」ということで見れば「不安」というのがあるかと思います。すると、ローン会社は、「「連帯保証を付けてくれ」という条件を出してくるわけです。金利は変えないが、保証人を付けるならローン契約を締結してもいい、ということです。もしも連帯保証人を付けられない場合には、「融資が実行されない」ということになります。自動車ローンでは、無担保融資ではなく「有担保」ですよね。それでも、別に連帯保証を必要とされる場合が有り得る、ということだと思います。このような若者は、親に頼み込んで保証人になってもらえれば、通常は自動車ローン契約は可能だろうと思います。
個人事業主の銀行融資の場合にも、「保証協会の保証」や連帯保証人を数人(借入金額にもよると思います)、といった条件が附されることは少なくないと思います。制度融資の場合にも、予め「連帯保証人2名」といったような条件が設定されているものは多分あったでしょう(現在もそうなのかは判らないけど)。これらの連帯保証は、貸金の「狙ってる」連帯保証とは意味合いが異なります。
貸金にとっての連帯保証の目的は、「より大きな債務」に育ててから一緒に背負ってくれればいい、ということです。これには二つの側面があります。①ある程度に増えるまでは連帯保証を求めない、②将来債務(支払額)に対して連帯保証を負わせる、ということです。
①は、通常の貸金からの借入で、最初から「連帯保証人を付けてくれ」という条件は出されないだろうと思います(笑)。1社目に連帯保証人を求められて保証人を付けてあれば、貸出に対する返済の延滞があったら即連帯保証人に弁済を求められるので、2社目以降に借りる必要性は減り、債務者の返済する姿勢も改善されるでしょう。でも、そうじゃないんですよ。貸金は、大きく育てるまではなるべく借入額を減らさないようにしたいのです。必ずしも1社だけで育てられないのですけど、30万円が50万円に、それが100万、200万と、大きくなっていくに従って、「獲得利益」もそれなりに期待できるようになるんですよ。このように債務額が膨張するのは、債務者の資金需要額などではなく、実際には金利分が積み重なっていく為です。金利負担が重いので、それを上回る新たな返済余力(資金)見つけ出して返済を続けない限り、増加を食い止めることはできません。
で、ある程度の大きさに膨らんだとします。4社200万円としましょうか。200万円になるまでには、それなりの額を返済してきたんだろうと思いますけど。でも、これを返せる見通しなどないので、「おまとめ」プランなんかを持ちかけるんですよ。もう次からは借りられないですよ、もっと返済しやすくしてみてはどうでしょうか、とか持ちかけるんですね。でも、それには連帯保証人の条件を付けるのですよ。すると、連帯保証人がいるので貸倒確率は減らせるし、今後支払が滞ったりして債務総額が増加していっても、連帯保証人から取り立てられればそれで済むからね。連帯保証人を立てて新規に契約し直せば、200万円まで膨らませたということが、より大きな利益をもたらすのですよ。他の貸出順が後の、「貸し込み」してきた業者も勿論、貸金全員が儲かっているのですよ。
まとめることが悪いわけではないですよ。低金利に借換契約できれば、確かに負担額は減らせるからね。でも、借り手の問題はあるのだけれど、これまで債務額を増やしてきたのは、貸し込んできた結果だからね。そうやって連帯保証人をとることができれば、貸した側は儲かるという仕組みなんですよね。これが、30万や50万円程度で連帯保証人を取るなら、利益も大したことないので要求したりしないんでしょう。
結局、貸金でなぜ連帯保証人が必要になるかと言えば、「負債総額が大きいから」というのがもっともらしい理由だが、本当の意味は「でかくして儲けろ」ということだ。「貸し込み」が合理的な戦略となり、十分儲かるビジネスになるからだ。
次は、②を考えてみる。この問題が有名になったのは「商工ローン問題」の時だ。所謂「根保証」ってヤツだね。
最近では規制強化でできなくなっているかもしれない。でも、「根保証」は連帯保証の「基本的トラップ」と言ってもいいだろう。大雑把にいうと次の通り。借り手に300万円の事業資金を融資するという場合、連帯保証人を付けさせて「根保証」契約をしておく。で、契約内容は、「~ビジネスローン」の上限1000万円の「根保証」みたいな条項をこっそり入れておくのだ。そうなると、借り手が返済できずに借入残高が膨らんでいったりすると、上限1000万円まで到達してしまい、この債務返済を求められる、ということになるのだ。要するに、契約時点で「将来借入残高」の返済を求めるという、全くの不確実な契約となっているということだ。
先に見た自動車ローンとか銀行融資なんかは、連帯するべき債務額としての「支払総額」は契約時点で決まっており、連帯保証人は自分の責任の限度額というのは理解できるのである。ところが、こうした貸金系の連帯保証というのは、払えずに増加してしまった将来キャッシュに対しても連帯保証の責任を負わされる可能性があるのである。「おまとめ」で連帯保証を付けたとして、その後債務者が払えなくなると連帯保証人に返済を求められるが、最初は「200万円」の連帯保証であったものが、払えずに残高が増加してしまっていれば増えた分も返済を求められるかもしれない。一括返済という別な条項が入れられていて、一括で全額払えなければ遅延損害金を求められるかもしれない。そうやって、次の生贄が作られるのだ。「1粒で2度オイシイ」のが、貸金の連帯保証なのです。
挙句に、連帯保証を取ったからといって、銀行カードローンなみかそれ以下の貸出金利になるかと言えば、そうじゃないんですよ。連帯保証を取られているにも関わらず、高金利を適用されるんですね。こりゃ、オイシイわな。要するに「カモられる人たち」は、トコトンやられるんですよ。そうやって、ドツボにはめられるんです。