大した問題とも思われない事柄を針小棒大に伝えることで、一体何を「リカバリー」(笑)しようというのか?
首相「誤った報道」撤回、漆間発言を「認識のずれ」と修正(読売新聞) - Yahooニュース
この記事中には、
『首相は同日午前の委員会では、「発言が誤って報じられた」と語り、漆間氏の発言に関する報道が誤りだとする見解を示していたが、修正した。』
と書かれているのだが、テレビニュースでこの答弁の場面を放送していたのを見たけれども、記事中にある通り「誤って報じられた」ということだった。
ところが、「報道が誤っていたんですか、(記者たちの方が)間違っていたということですか」みたいな物言いというのは、明らかにオカシイわけで、日本語の能力を疑いますね。麻生総理の答弁が悪いとか、言葉の間違いが多いとか、そういった個人的非難を含むものなのかもしれませんが、たとえそうであるとしても、答弁からは新聞記事のような解釈をひねり出して来るというのは困難であり、意図的な捻じ曲げみたいなものとしか思われない。麻生総理が「過った報道」と答弁したという事実があるのでしょうかね。
また例で書いてみるよ。
ある封筒に書類が入っていて、甲さん宛てのものでしたが、会社の同僚乙さんが過って自分宛てと思い込みうっかり開封してしまいました。この時、乙さんは、甲さんに言いました。
「誤って開けてしまいました、ごめんなさい」
この「誤って」というのは、本来開けるべきでないものを「間違えて」開けてしまった、ということですね。麻生総理答弁の「誤って報道された」というのは、本来報道されるべきでない発言が「間違えて」報道されてしまった、ということを言っているまでです。報道の中身が間違っていた、とかいう解釈には、どう考えても受け取りようがないはずです。「誤って開封してしまいました」とか言うとき、「書類が間違っているということか!」みたいなツッコミは出てくるはずがないのです。
「誤って報道された」というのを「誤った報道」と勝手に解釈し、撤回も何もないはずのものを、「報道内容が間違いだということか」みたいに質問する側の読解能力に著しい問題があるとしか思えないわけだが。日本語として、普通にオカシイでしょ。例えば「名前の漢字を間違えて報じられた」というのであれば、漢字(の内容)が間違っていたんだな、という話にはなるけれども、「誤ってレイプ被害者の名前が報じられた」という時、被害者の漢字とか名前の中身が間違っていた、とかいうことではなくて、「報じられた」という事態そのものが「過誤」である、発表するつもりではなかったのに(うっかり)公表されてしまった、ということを言うのでしょ。
こうした文脈から判断する能力というのは、ごくごく普通だと思うのだけれども、「誤って名前が公表されてしまった」とかいう時に、「発表した名前が間違ってるっていうのか!」とか凄まれても困るだけですね。
漆間元警察庁長官には
言語道断事件でネガティブなイメージしか持っていないし、肩を持つべき理由もないのだが、今回の一件では「重大な落ち度があった」とは思われない。
そもそもオフレコで発言というのは、「表に出ないから、ちょっとしゃべるよ」という暗黙の了解事項であろうし、まさか「表に出さないでね」というつもりで発言した中身について「責任問題だ」とか取り上げられるのは、フェアじゃないでしょ。報道機関側も、いってみれば「紳士協定違反」でしょうよ。
ある事件があって、今後の捜査見通しとか事件の見立てについて非公式見解を尋ねられた時、
(A)元検察庁のお偉いさん(検事総長、次長検事、検事長、特捜部長、等)の弁護士が、「他の容疑者逮捕には広がらないのではないかな」と回答
(B)元警察庁のお偉いさんの公務員が、「他の容疑者逮捕には広がらないのではないかな」と回答
だとしよう。
(A)のケースで回答した弁護士に対して、「お前は検察内部に情報源を持っているから、そういう回答をするんだろ、さては通謀しているな」とか言ったりするのだろうか。元職である、というだけで、「必ず内部と繋がりがある」みたいな大前提でも置かないと、そういうことにはならないわけで。元検弁護士(特に特捜出身者)がマスコミでは重宝されていて、誰も「元検だから」みたいに批判はしてないと思うけど。
(B)のケースだと、特捜部や検察幹部が情報を流してこない限りは当該公務員に判りようがないわけで、もし「検察幹部が内部情報を渡して、それを聞いた公務員が守秘義務違反で漏らしたのだ」ということなら問題があろうかと思いますが、あくまで個人的見解と断った上で予断を非公式に述べただけなら、何か問題があるのでしょうか?
もし、秘密漏洩の問題がある、ということなら、マスコミ連中は特ダネ取りに「たかる」のは、今後一切やめるべきでしょう。これまでに散々警察や検察(特捜含め)やら、法務省幹部や防衛省幹部にだって「情報をクレ」といって、公務員に秘密を漏らさせてきたわけでしょう?実際、裁判にまでなって、公務員の秘密漏示が報道の問題になってきたわけでしょう?そういった手法をとってきて、情報を漏らすことを唆してきたのに、ここに至っては「情報の中身」ばかりではなく「情報ソース」すらも信義則に反して漏らしている上に、「漏らしたあなたが悪いんだろ」と叩く側に回っている、というのも、どうなのよ。
「誤って~」の意味も取り違え、オフレコ情報の中身をバラす、情報源もバラす、という、最低のマスコミが生んだこじつけ報道みたいなものなんじゃないの。
紳士協定なんて、もう存在していないのでしょう、きっと。
追記(13時過ぎ):
「誤って~」というフレーズは、見出しも含め、報道では割と一般的でしょう。
誤って公表(発表)
誤って破棄
誤って注入
誤って停車
誤って発送
誤ってネット公開
誤って送信
いくらでもあるよ。
これらは要するに、(本来破棄すべきでないのに)間違って破棄した、ということで、行為そのものが「誤り」を言うでしょう。「誤って」は、行為に懸かる語だよ。
本来注入すべきでないのに…(以下略)
本来停車すべきでないのに…
本来発送すべきでないのに…
本来送信すべきでないのに…
が、「誤って~(以下略)」だよね。
で、『本来報道すべきでないのに報道された』という答弁が、どうして「報道内容が間違ってたと言うのか!虚偽内容だと言うのか!複数の記者の方が間違ってると言うのか!」みたいな方向に行くわけ?
日本語の理解がオカシイんじゃないか?
解釈や受け止め方を間違うような水準のことではないでしょう?
正しい日本語だの文だのとかいうことに本来正確であるはずの人たちが、揃いも揃ってこんな言いがかりみたいなことを言うのって、おかしくないか?