状況が詳しく分かっているわけではないが、報道から分かる情報からふと思い浮かんだことのメモ、ということで。
>古書店の本棚倒れ姉妹ら下敷き、妹重体…札幌(読売新聞) - Yahoo!ニュース
大雑把な配置関係は下図のような感じらしい(上から見た図)。
(被)は被害者たちのいた通路で左手側は壁面に本棚、<壁側>というのは、完全な壁ということのようで行き止まり部分、倒れた本棚は3列で、便宜的にそれぞれA、B、Cと名称をつけておく(図では3つとも線が切れているが、本棚は列ごとに一体化されていて、1本に連結状態であったとのこと)。
本棚は高さ2.1mで、通路側だけが幅9センチ程度の板材で連結固定されていた。固定板を本棚と直角になっている横線で示している。
○図1
<壁側>
(被)A B C
| | |
| | |
| | |
_______ (固定板)
<通路側>
震度3程度?の地震でも倒れることはなく、問題なかった、というようなことらしい。だが、何故倒れてしまったのだろうか?
基本的には、本棚が独りでに倒れるということにはならないだろうと思う。本の重みで本箱が物理的に壊れてしまう、というようなことはあるかもしれないが、今回の事件では、そういうことは起こっていたということはないようだ。家の棚などを自分で付けたりして、強度不足で棚板がいつの間にか落下している、というような現象は自然に起こる場合はあるかもしれないが、今回の事件ではそういった「壊れた」というような現象が確認されてはいない、ということ。
他には、どのような理由が考えられるか?
本棚は自然に転倒しない、ということになると、答えは限られる。「力が加えられた」ということがあれば、倒れるかもしれない、ということはあるだろう。店内には被害姉妹以外の人間は存在していたか、というと、存在していたらしい。つまり、人間の行動などによって力が加えられた、という可能性はあるのではないか、ということだ。
さて、本棚の本の重量はハンパな重さではない。相当に重い。引越しの時に、よく経験すると思うが、何が一番苦しむかと言えば、本の重量だ。家具や家電類に比べても、格段にキツいよね。衣類とかなんて、軽い軽い。これはいいが、本棚を動かせるほどに力をかけられるかどうか、ということがあるだろう。
もし、人為的な力が加わってしまったのだとすると、この店内の本棚とか固定板の存在が影響していたことはあるかもしれない、とは思う。
まず、固定板から遠い地点に力が加えられた場合、これはテコの原理が働くと思うので、比較的弱い力であっても、本棚の変形を生じて転倒力が固定板を通じて伝わってしまうのではないか、と思う。本棚Bとか本棚Cの壁側に近い部分に力を加えると、支点までが遠い為に倒せる力となりえるかもしれない、ということ。図で示すと、図2のような感じ。
○図2
<壁側>
(被)A B C
| |←①|←②
| | |
| | |
_______ (固定板)
<通路側>
①や②の地点に誰かがいたのであれば、意図しないとしても転倒力を加える可能性が生じたのではないか、と思える。
要因としては、次のようなことがあるかもしれない。
ア)本棚の高さと奥行き
転倒の可能性が高まるのは、重心の位置が高い、ということがある。相撲なんかで言う、腰が高い、というのと同じだろう。上下2段で2.1mあったらしいので、かなり高いだろう。
力が加わるのが床から高い地点になればなるほど、弱い力でも転倒させる力を発生させやすい、というのは当然だろう。上まで本が積まれていれば重心はかなり高いとはずで、そこから距離の遠い高い場所になれば倒れる可能性は高まる、ということだ。
また、本棚の奥行きが狭ければ狭いほど、転倒しやすいのも当たり前。奥行きだけが異なるカラーボックスが2種類あって、30cmと10cmのものであれば、10cmの方が断然転倒しやすいよ、ということ。常識的に分かるはず。
本事件では、この両者が揃ってしまっていた、ということだと思う。
この高さの割りに奥行きが小さすぎる、ということである。奥行きはわずかに35cmしかなかった、ということのようだ。比率で言えば、高さ90cmのカラーボックスの奥行きが15cmしかない、というのと同じ。この箱の安定性の悪さがどの程度なのかは、実験してみればきっと分かるのではないかと思う。転倒力には弱い、ということ。比較的小さい力でも倒れてしまう、ということ。
イ)固定板の位置
これも壁側はなくて、通路側だけが連結固定されていた、ということだが、もし、壁側にも固定板があれば、ひょっとすると転倒を免れた可能性はあるのではなかろうか、と思ったりもする。
片側しか連結されていなかったことが、逆に3列転倒を招いた可能性があるのではないだろうか、と。図2で示したように、①の地点に力が加わり、本棚Bに転倒力が加わると、上部だけが連結されている為に、各本棚AやCにも「床から「一番遠い地点」に力が伝達されてしまう、ということになったのだろう。
ここでも「本棚の高さ」というのがマイナスに作用しているのだ。
削ってない鉛筆を立てておくと、長さ10cmのものと20cmのものであれば、どちらがより倒れやすいか、というと長い方だからね。短い鉛筆が倒れるギリギリの力の半分であっても、長い鉛筆の上端に力を加えると倒れるだろう。長い分だけ、テコの原理で半分の力で済んでしまうからである。
つまり、上から見た場合の①の位置と固定板までの距離(=本棚全体の横幅)が遠かったこと、水平的に見た場合の床から固定板までの距離(=本棚の高さ)が遠かったこと、この両者が揃ってしまったのが、転倒に弱い構造となっていたのではないだろうか、と。
ウ)通路の狭さ
本棚の間隔が約50cmとかなり狭かったようだ。これがカギを握るのかもしれない、と思ったのだ。
これまで見てきたのは、本棚などが物理的に崩壊するなどで転倒したのではなく、「人間が力を加えたからではないか」という推測に基づいているということだ。そもそも、そういう力が加わったかどうかは不明だが、通路の狭さ故に可能性はあるのではないだろうか、と考えたのである。
たとえば、自分の前面に本棚があって、本の出し入れなどの操作をしているとしよう。この時、自分がどのような位置に立っていて、作業をしているか、ということである。腕全部を伸ばせるほどの距離は必要ないかもしれないが、少なくとも、30cm程度は離れて立っている必要があるのではないだろうか。子供と大人では違いがある、ということはあるが、あまりに接近しすぎると作業が困難になるだろう。
なので、30cm程度離れて立っていたとすると、背後の壁面や本棚までの距離はどのくらい残されているであろうか?
踵の位置は、背後の本棚からどの程度の距離にあると思うか?
幅50cmなら、自分の前面側に30cmの距離があるとすれば、踵の位置は背後の本棚から10cm以内くらいのところにあったとしても不思議ではないのでは。
何が言いたいかというと、体のバランスを崩したりして後ろに倒れそうになった時に、バランスを回復するだけの余裕が殆どなかったのではないか、ということなのだ。体が傾いたり、倒れそうになった時、後ろに足を引いて体重移動を行ってバランス回復できるとして、後ろの余裕がまるでない場合であると体を支えきれなくなって、寄りかかるようなことが起こり得るのではないか。
もしそうだとすると、何かの作業中にうっかり体の後ろに体重がかかり、瞬間的に手で本棚を押さえたり、本棚に寄りかかる形になって体重を支えてしまったら、図2の①や②の部分に力を加えることが起こってしまうこともあるのではないか?
特に、腰よりも高い位置に力を加えることは発生するのではないか?これは、本棚の重心よりも高い位置を、押してしまうとか、体が寄りかかるとか、そういう事態ということだ。転倒力として効果的な場所に、人為的な力が加わってしまったということなのではないか?
最後に、幽霊の仕業とかの不可思議現象ということでもない限り、ひとりでに倒れたりはしないであろう。何らかの理由があるからこそ、事故が起こってしまったわけである。
倒れやすい構造、これがない限りは、倒れたりはしない。
これが違法なのかということの判断は、司法判断がなければ難しいかもしれない。設置構造に問題があるとしても、違法と言えるかどうかは私には分からない。が、最も倒れやすい部分に、効果的な力を加えることが起こってしまえば、何の偶然でもなく怪奇現象でもなく、普通に倒れ得るのではないかと思えた。
※追記(15日10時頃)
本棚同士の連結器具が破壊されていた、という報道があったみたい。だけど、連結具自体は、転倒後の衝撃で変形とか破壊される可能性は高いのと、救出作業時などにも、かなり破壊された可能性はあると思う。
事後的に破損したものであれば、本棚が自壊することによって倒れた、というようなことは推測しにくいのではないかな、と。
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大雑把な配置関係は下図のような感じらしい(上から見た図)。
(被)は被害者たちのいた通路で左手側は壁面に本棚、<壁側>というのは、完全な壁ということのようで行き止まり部分、倒れた本棚は3列で、便宜的にそれぞれA、B、Cと名称をつけておく(図では3つとも線が切れているが、本棚は列ごとに一体化されていて、1本に連結状態であったとのこと)。
本棚は高さ2.1mで、通路側だけが幅9センチ程度の板材で連結固定されていた。固定板を本棚と直角になっている横線で示している。
○図1
<壁側>
(被)A B C
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_______ (固定板)
<通路側>
震度3程度?の地震でも倒れることはなく、問題なかった、というようなことらしい。だが、何故倒れてしまったのだろうか?
基本的には、本棚が独りでに倒れるということにはならないだろうと思う。本の重みで本箱が物理的に壊れてしまう、というようなことはあるかもしれないが、今回の事件では、そういうことは起こっていたということはないようだ。家の棚などを自分で付けたりして、強度不足で棚板がいつの間にか落下している、というような現象は自然に起こる場合はあるかもしれないが、今回の事件ではそういった「壊れた」というような現象が確認されてはいない、ということ。
他には、どのような理由が考えられるか?
本棚は自然に転倒しない、ということになると、答えは限られる。「力が加えられた」ということがあれば、倒れるかもしれない、ということはあるだろう。店内には被害姉妹以外の人間は存在していたか、というと、存在していたらしい。つまり、人間の行動などによって力が加えられた、という可能性はあるのではないか、ということだ。
さて、本棚の本の重量はハンパな重さではない。相当に重い。引越しの時に、よく経験すると思うが、何が一番苦しむかと言えば、本の重量だ。家具や家電類に比べても、格段にキツいよね。衣類とかなんて、軽い軽い。これはいいが、本棚を動かせるほどに力をかけられるかどうか、ということがあるだろう。
もし、人為的な力が加わってしまったのだとすると、この店内の本棚とか固定板の存在が影響していたことはあるかもしれない、とは思う。
まず、固定板から遠い地点に力が加えられた場合、これはテコの原理が働くと思うので、比較的弱い力であっても、本棚の変形を生じて転倒力が固定板を通じて伝わってしまうのではないか、と思う。本棚Bとか本棚Cの壁側に近い部分に力を加えると、支点までが遠い為に倒せる力となりえるかもしれない、ということ。図で示すと、図2のような感じ。
○図2
<壁側>
(被)A B C
| |←①|←②
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_______ (固定板)
<通路側>
①や②の地点に誰かがいたのであれば、意図しないとしても転倒力を加える可能性が生じたのではないか、と思える。
要因としては、次のようなことがあるかもしれない。
ア)本棚の高さと奥行き
転倒の可能性が高まるのは、重心の位置が高い、ということがある。相撲なんかで言う、腰が高い、というのと同じだろう。上下2段で2.1mあったらしいので、かなり高いだろう。
力が加わるのが床から高い地点になればなるほど、弱い力でも転倒させる力を発生させやすい、というのは当然だろう。上まで本が積まれていれば重心はかなり高いとはずで、そこから距離の遠い高い場所になれば倒れる可能性は高まる、ということだ。
また、本棚の奥行きが狭ければ狭いほど、転倒しやすいのも当たり前。奥行きだけが異なるカラーボックスが2種類あって、30cmと10cmのものであれば、10cmの方が断然転倒しやすいよ、ということ。常識的に分かるはず。
本事件では、この両者が揃ってしまっていた、ということだと思う。
この高さの割りに奥行きが小さすぎる、ということである。奥行きはわずかに35cmしかなかった、ということのようだ。比率で言えば、高さ90cmのカラーボックスの奥行きが15cmしかない、というのと同じ。この箱の安定性の悪さがどの程度なのかは、実験してみればきっと分かるのではないかと思う。転倒力には弱い、ということ。比較的小さい力でも倒れてしまう、ということ。
イ)固定板の位置
これも壁側はなくて、通路側だけが連結固定されていた、ということだが、もし、壁側にも固定板があれば、ひょっとすると転倒を免れた可能性はあるのではなかろうか、と思ったりもする。
片側しか連結されていなかったことが、逆に3列転倒を招いた可能性があるのではないだろうか、と。図2で示したように、①の地点に力が加わり、本棚Bに転倒力が加わると、上部だけが連結されている為に、各本棚AやCにも「床から「一番遠い地点」に力が伝達されてしまう、ということになったのだろう。
ここでも「本棚の高さ」というのがマイナスに作用しているのだ。
削ってない鉛筆を立てておくと、長さ10cmのものと20cmのものであれば、どちらがより倒れやすいか、というと長い方だからね。短い鉛筆が倒れるギリギリの力の半分であっても、長い鉛筆の上端に力を加えると倒れるだろう。長い分だけ、テコの原理で半分の力で済んでしまうからである。
つまり、上から見た場合の①の位置と固定板までの距離(=本棚全体の横幅)が遠かったこと、水平的に見た場合の床から固定板までの距離(=本棚の高さ)が遠かったこと、この両者が揃ってしまったのが、転倒に弱い構造となっていたのではないだろうか、と。
ウ)通路の狭さ
本棚の間隔が約50cmとかなり狭かったようだ。これがカギを握るのかもしれない、と思ったのだ。
これまで見てきたのは、本棚などが物理的に崩壊するなどで転倒したのではなく、「人間が力を加えたからではないか」という推測に基づいているということだ。そもそも、そういう力が加わったかどうかは不明だが、通路の狭さ故に可能性はあるのではないだろうか、と考えたのである。
たとえば、自分の前面に本棚があって、本の出し入れなどの操作をしているとしよう。この時、自分がどのような位置に立っていて、作業をしているか、ということである。腕全部を伸ばせるほどの距離は必要ないかもしれないが、少なくとも、30cm程度は離れて立っている必要があるのではないだろうか。子供と大人では違いがある、ということはあるが、あまりに接近しすぎると作業が困難になるだろう。
なので、30cm程度離れて立っていたとすると、背後の壁面や本棚までの距離はどのくらい残されているであろうか?
踵の位置は、背後の本棚からどの程度の距離にあると思うか?
幅50cmなら、自分の前面側に30cmの距離があるとすれば、踵の位置は背後の本棚から10cm以内くらいのところにあったとしても不思議ではないのでは。
何が言いたいかというと、体のバランスを崩したりして後ろに倒れそうになった時に、バランスを回復するだけの余裕が殆どなかったのではないか、ということなのだ。体が傾いたり、倒れそうになった時、後ろに足を引いて体重移動を行ってバランス回復できるとして、後ろの余裕がまるでない場合であると体を支えきれなくなって、寄りかかるようなことが起こり得るのではないか。
もしそうだとすると、何かの作業中にうっかり体の後ろに体重がかかり、瞬間的に手で本棚を押さえたり、本棚に寄りかかる形になって体重を支えてしまったら、図2の①や②の部分に力を加えることが起こってしまうこともあるのではないか?
特に、腰よりも高い位置に力を加えることは発生するのではないか?これは、本棚の重心よりも高い位置を、押してしまうとか、体が寄りかかるとか、そういう事態ということだ。転倒力として効果的な場所に、人為的な力が加わってしまったということなのではないか?
最後に、幽霊の仕業とかの不可思議現象ということでもない限り、ひとりでに倒れたりはしないであろう。何らかの理由があるからこそ、事故が起こってしまったわけである。
倒れやすい構造、これがない限りは、倒れたりはしない。
これが違法なのかということの判断は、司法判断がなければ難しいかもしれない。設置構造に問題があるとしても、違法と言えるかどうかは私には分からない。が、最も倒れやすい部分に、効果的な力を加えることが起こってしまえば、何の偶然でもなく怪奇現象でもなく、普通に倒れ得るのではないかと思えた。
※追記(15日10時頃)
本棚同士の連結器具が破壊されていた、という報道があったみたい。だけど、連結具自体は、転倒後の衝撃で変形とか破壊される可能性は高いのと、救出作業時などにも、かなり破壊された可能性はあると思う。
事後的に破損したものであれば、本棚が自壊することによって倒れた、というようなことは推測しにくいのではないかな、と。