結局のところ、「JAL再生タスクフォース」の法的根拠はどうなったんでしょうか?(笑)
彼らの権限は何に基づくもので、根拠法は何でしたか?
日本航空の出した自主再建計画案を、前原大臣は「白紙撤回」として突っぱねましたよね?
では、代わりに何の大臣権限を発動したのですか?
復習がてら、もう一度タスクフォースの設置について見てみましょうか。
国土交通省の発表は次の通り(便宜的に、ア~エを割り振っています)。
・再生計画は、日本航空が自主再建を図るための計画であり、日本航空自らが策定し実行する(ア)。
・日本航空は、再生計画策定のために、新たに、本タスクフォースが妥当と認めた外部専門家と、日本航空の社内スタッフを選定する(イ)。
・日本航空は、本タスクフォースの直接の指導・助言のもとで、再生計画立案のための調査と策定作業を行う(ウ)。
・国土交通大臣は、上述の手順を経て提出された再生計画案について、日本政策投資銀行及び関係民間金融機関の意見聴取を行い、本タスクフォースによる妥当性評価報告を受けた上で、再生計画の妥当性の確認を行い、その実行について日本航空を指導・監督する(エ)。
国土交通大臣とタスクフォースは、何の、どういった根拠で「指導・助言」とか、「指導・監督」といった権限行使を行うのでしょうか?
元々は(ア)にあるように、日航側の自由意思でもって再建計画策定とそれを実施する、ということなら、国交大臣権限なんて何もないと思いますけど。
6月に資金投入が決まったのは、前政権下であったわけですが、所謂危機対応融資の枠組みか何かだったのではないでしょうか。
そもそも本タスクフォースは如何なる法の根拠でもって、日本航空とかその他銀行等にも意見聴取や命令だか指示だかを行っていたのか、というのが全く不透明。
企業再生支援機構を使う、ということでならば、支援機構に事前相談が必要ということになりますわな。
因みに、機構の案内によれば、
『事前相談の段階で企業名等を公表することは一切ありません』
って書かれていましたけれども、JALは思いっきりバレバレにされてしまいましたけれども。おかしくないですか?(笑)
タスクフォースのヤツラが、どの法を使うか、救済の枠組みをどうするか、みたいなことが判ってないなら、はじめっから「非公式協議」という形をとって、日航側の申出に応じて調整しています、というのが当たり前なんじゃないのか?
企業再生支援機構を利用する場合でも、事前相談というのは厳密に言えば非公式な協議なので、いきなり国交大臣が登場してくるというのはちょっとおかしい。最初から機構の利用が判らなかったから、というのがあるとしても、それなら尚更「将来の不確実性」というのがあるのだから、慎重さが必要だったであろう。
前原大臣が白紙にした日航側の再建計画案は、何に基づく申請だったのかが気になるな。
もしも「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」ということであったのであれば、所管大臣の権限というのはあることにはあるが、これも特定事業活動として産業革新機構の利用ということを考える、ということになるだろうか。正しい略称が法令検索には出てなかったので判らんのですが、とりあえず「産業活力再生特措法」と短めにしてみるよ。
○産業活力再生特措法 第2条第14項
この法律において「特定事業活動」とは、自らの経営資源以外の経営資源を活用し、高い生産性が見込まれる事業を行うこと又は新たな事業の開拓を行うことを目指した事業活動及び当該事業活動を支援する事業活動をいう。
他にも色々な場合(事業再構築とか)があるが、特定事業活動の支援ということであれば、やれないことはないのかもしれないが、これは経済産業省の色が濃いということになるので、イマイチ賛同が得られなかったということなのかな?
あと、再生ADRとか利用といっても、政府が金を出すか保証を付けるという枠組みがない、ということで、これも頓挫したわけだ。
で、結局、企業再生支援機構を利用するしか残った手がない、ということに行き着いたんじゃないですかね。
マヌケだな。
条文を見てみると、次の通り。
○株式会社企業再生支援機構法 第25条
(前略)
7 機構は、再生支援をするかどうかを決定しようとするときは、あらかじめ、主務大臣にその旨を通知し、相当の期間を定めて、意見を述べる機会を与えなければならない。
8 主務大臣は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、その内容を事業所管大臣及び第六十一条に規定する場合における同条の各省各庁の長(次項において「事業所管大臣等」という。)に通知するものとする。
9 事業所管大臣等は、前項の規定による通知を受けた場合において、過剰供給構造(供給能力が需要に照らし著しく過剰であり、かつ、その状態が長期にわたり継続することが見込まれる事業分野の状態をいう。)その他の当該事業者の属する事業分野の実態を考慮して必要があると認めるときは、第七項の期間内に、機構に対して意見を述べることができる。
ここから判ることは、国土交通大臣は事業所管大臣としての権限は行使可能であるが、それは支援決定前に主務大臣に通知、それが事業所管大臣に通知(まるで伝言ゲームだな、笑)され、そこで初めて国交大臣が意見を述べる機会が生ずる、ということである。
なので、
機構に事前相談
→主務大臣に通知
→事業所管大臣に通知
→事業所管大臣は意見を機構に述べる
ということだ。
日航や銀行団などが機構に事前相談する前なのに、どうして事業所管大臣が色々と口出しをするのか、という話になるわな。ましてや、タスクフォースの連中なんて単なる部外者でしかない。
上記(エ)の国交大臣が指導監督を行う、みたいな話って、一体何に基づくものを想定していたんでしょうか?
因みに主務大臣というのは、原則的には、総理、総務大臣、財務大臣、経産大臣の4名(部分的に厚生労働大臣も含め5名)、ということになってるわけだ。どこに国土交通大臣が入っているのか?(笑)
しかも、企業再生支援機構の設置関係の事務が内閣府に置かれていたことで判るように、総務大臣、財務大臣、経済産業大臣というのは関与してはいるものの、実質的なモロモロ関係は内閣府でやるってなことになってたわけで。総理が主務なんだけど、これは実質的に金融庁担当大臣へとなってるわけだ。つまりは、亀井さん。こんなところにも、亀井大臣の強権が関与してしまうわけだ(笑)。
なので、企業再生支援機構を使おうと考えていたのであれば、真っ先に前原大臣の所などではなく、亀井大臣の下へと急がねばならなかった、というわけです。
これは、条文上でも明らかなんですよ。
○第58条
この法律における主務大臣は、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣及び経済産業大臣とする。ただし、第二十四条、第二十五条第七項、第八項及び第十項、第二十八条第四項、第三十一条第二項、第三十三条第一項及び第二項、第四十五条並びに第四十六条第一項に規定する主務大臣は、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣及び経済産業大臣とする。
2 第四十六条第一項に規定する主務大臣の権限は、前項ただし書の規定にかかわらず、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣又は経済産業大臣がそれぞれ単独に行使することを妨げない。
3 この法律における主務省令は、内閣府令・総務省令・財務省令・経済産業省令とする。
○第59条 内閣総理大臣は、前章の規定による権限を金融庁長官に委任する。
ほらね。
だとすると、前原大臣は一体全体、何の権限で日航に介入していったのか、タスクフォースの面々は何を根拠に日航内部の社長解任を求めるとか帳簿類をひっくり返してたりしたのか、説明をするべきだろうね。
あの、中間報告みたいな報道にあったのは、一体何だったんでしょうか?
もの忘れの酷い大臣やタスクフォースの連中の為に、再掲しておきますか?
【日航、新再建計画のポイント】
一、2500億円超の債権放棄を主力銀行に要請
一、公的資金と民間出資で約1500億円の資本増強を実施
一、人員削減を9千人超に拡大
一、西松遥社長は退任。最高経営責任者(CEO)は外部から招き、最高執行責任者(COO)は日本航空内部から昇格させる
一、3千億円超の新規融資を要請
一、企業年金関連債務を1千億円に圧縮する
で、高木と冨山が役員入りでしたか?(笑)
参考記事:
鶴の恩返し~その2
混迷するJAL問題~前原大臣の”逆噴射”
彼らの権限は何に基づくもので、根拠法は何でしたか?
日本航空の出した自主再建計画案を、前原大臣は「白紙撤回」として突っぱねましたよね?
では、代わりに何の大臣権限を発動したのですか?
復習がてら、もう一度タスクフォースの設置について見てみましょうか。
国土交通省の発表は次の通り(便宜的に、ア~エを割り振っています)。
・再生計画は、日本航空が自主再建を図るための計画であり、日本航空自らが策定し実行する(ア)。
・日本航空は、再生計画策定のために、新たに、本タスクフォースが妥当と認めた外部専門家と、日本航空の社内スタッフを選定する(イ)。
・日本航空は、本タスクフォースの直接の指導・助言のもとで、再生計画立案のための調査と策定作業を行う(ウ)。
・国土交通大臣は、上述の手順を経て提出された再生計画案について、日本政策投資銀行及び関係民間金融機関の意見聴取を行い、本タスクフォースによる妥当性評価報告を受けた上で、再生計画の妥当性の確認を行い、その実行について日本航空を指導・監督する(エ)。
国土交通大臣とタスクフォースは、何の、どういった根拠で「指導・助言」とか、「指導・監督」といった権限行使を行うのでしょうか?
元々は(ア)にあるように、日航側の自由意思でもって再建計画策定とそれを実施する、ということなら、国交大臣権限なんて何もないと思いますけど。
6月に資金投入が決まったのは、前政権下であったわけですが、所謂危機対応融資の枠組みか何かだったのではないでしょうか。
そもそも本タスクフォースは如何なる法の根拠でもって、日本航空とかその他銀行等にも意見聴取や命令だか指示だかを行っていたのか、というのが全く不透明。
企業再生支援機構を使う、ということでならば、支援機構に事前相談が必要ということになりますわな。
因みに、機構の案内によれば、
『事前相談の段階で企業名等を公表することは一切ありません』
って書かれていましたけれども、JALは思いっきりバレバレにされてしまいましたけれども。おかしくないですか?(笑)
タスクフォースのヤツラが、どの法を使うか、救済の枠組みをどうするか、みたいなことが判ってないなら、はじめっから「非公式協議」という形をとって、日航側の申出に応じて調整しています、というのが当たり前なんじゃないのか?
企業再生支援機構を利用する場合でも、事前相談というのは厳密に言えば非公式な協議なので、いきなり国交大臣が登場してくるというのはちょっとおかしい。最初から機構の利用が判らなかったから、というのがあるとしても、それなら尚更「将来の不確実性」というのがあるのだから、慎重さが必要だったであろう。
前原大臣が白紙にした日航側の再建計画案は、何に基づく申請だったのかが気になるな。
もしも「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」ということであったのであれば、所管大臣の権限というのはあることにはあるが、これも特定事業活動として産業革新機構の利用ということを考える、ということになるだろうか。正しい略称が法令検索には出てなかったので判らんのですが、とりあえず「産業活力再生特措法」と短めにしてみるよ。
○産業活力再生特措法 第2条第14項
この法律において「特定事業活動」とは、自らの経営資源以外の経営資源を活用し、高い生産性が見込まれる事業を行うこと又は新たな事業の開拓を行うことを目指した事業活動及び当該事業活動を支援する事業活動をいう。
他にも色々な場合(事業再構築とか)があるが、特定事業活動の支援ということであれば、やれないことはないのかもしれないが、これは経済産業省の色が濃いということになるので、イマイチ賛同が得られなかったということなのかな?
あと、再生ADRとか利用といっても、政府が金を出すか保証を付けるという枠組みがない、ということで、これも頓挫したわけだ。
で、結局、企業再生支援機構を利用するしか残った手がない、ということに行き着いたんじゃないですかね。
マヌケだな。
条文を見てみると、次の通り。
○株式会社企業再生支援機構法 第25条
(前略)
7 機構は、再生支援をするかどうかを決定しようとするときは、あらかじめ、主務大臣にその旨を通知し、相当の期間を定めて、意見を述べる機会を与えなければならない。
8 主務大臣は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、その内容を事業所管大臣及び第六十一条に規定する場合における同条の各省各庁の長(次項において「事業所管大臣等」という。)に通知するものとする。
9 事業所管大臣等は、前項の規定による通知を受けた場合において、過剰供給構造(供給能力が需要に照らし著しく過剰であり、かつ、その状態が長期にわたり継続することが見込まれる事業分野の状態をいう。)その他の当該事業者の属する事業分野の実態を考慮して必要があると認めるときは、第七項の期間内に、機構に対して意見を述べることができる。
ここから判ることは、国土交通大臣は事業所管大臣としての権限は行使可能であるが、それは支援決定前に主務大臣に通知、それが事業所管大臣に通知(まるで伝言ゲームだな、笑)され、そこで初めて国交大臣が意見を述べる機会が生ずる、ということである。
なので、
機構に事前相談
→主務大臣に通知
→事業所管大臣に通知
→事業所管大臣は意見を機構に述べる
ということだ。
日航や銀行団などが機構に事前相談する前なのに、どうして事業所管大臣が色々と口出しをするのか、という話になるわな。ましてや、タスクフォースの連中なんて単なる部外者でしかない。
上記(エ)の国交大臣が指導監督を行う、みたいな話って、一体何に基づくものを想定していたんでしょうか?
因みに主務大臣というのは、原則的には、総理、総務大臣、財務大臣、経産大臣の4名(部分的に厚生労働大臣も含め5名)、ということになってるわけだ。どこに国土交通大臣が入っているのか?(笑)
しかも、企業再生支援機構の設置関係の事務が内閣府に置かれていたことで判るように、総務大臣、財務大臣、経済産業大臣というのは関与してはいるものの、実質的なモロモロ関係は内閣府でやるってなことになってたわけで。総理が主務なんだけど、これは実質的に金融庁担当大臣へとなってるわけだ。つまりは、亀井さん。こんなところにも、亀井大臣の強権が関与してしまうわけだ(笑)。
なので、企業再生支援機構を使おうと考えていたのであれば、真っ先に前原大臣の所などではなく、亀井大臣の下へと急がねばならなかった、というわけです。
これは、条文上でも明らかなんですよ。
○第58条
この法律における主務大臣は、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣及び経済産業大臣とする。ただし、第二十四条、第二十五条第七項、第八項及び第十項、第二十八条第四項、第三十一条第二項、第三十三条第一項及び第二項、第四十五条並びに第四十六条第一項に規定する主務大臣は、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣及び経済産業大臣とする。
2 第四十六条第一項に規定する主務大臣の権限は、前項ただし書の規定にかかわらず、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣又は経済産業大臣がそれぞれ単独に行使することを妨げない。
3 この法律における主務省令は、内閣府令・総務省令・財務省令・経済産業省令とする。
○第59条 内閣総理大臣は、前章の規定による権限を金融庁長官に委任する。
ほらね。
だとすると、前原大臣は一体全体、何の権限で日航に介入していったのか、タスクフォースの面々は何を根拠に日航内部の社長解任を求めるとか帳簿類をひっくり返してたりしたのか、説明をするべきだろうね。
あの、中間報告みたいな報道にあったのは、一体何だったんでしょうか?
もの忘れの酷い大臣やタスクフォースの連中の為に、再掲しておきますか?
【日航、新再建計画のポイント】
一、2500億円超の債権放棄を主力銀行に要請
一、公的資金と民間出資で約1500億円の資本増強を実施
一、人員削減を9千人超に拡大
一、西松遥社長は退任。最高経営責任者(CEO)は外部から招き、最高執行責任者(COO)は日本航空内部から昇格させる
一、3千億円超の新規融資を要請
一、企業年金関連債務を1千億円に圧縮する
で、高木と冨山が役員入りでしたか?(笑)
参考記事:
鶴の恩返し~その2
混迷するJAL問題~前原大臣の”逆噴射”