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検察審査会の有する問題点について~3・検察審査会は違憲?

2010年10月17日 19時57分01秒 | 法関係
4)裁判員に比べ極端に閉鎖的な検察審査会

組織が行政機関ではないことから、行政機関情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)の対象にはならない。刑訴法266条第二号のみなし公訴であれば、誰が決定を下したか、というのは、「当該下級裁判所の裁判官」というふうに特定が容易であるが、検察審査会の場合には、そうなっていない。
裁判員裁判において、裁判員は基本的に公開されている。裁判員に不服がある場合には、拒否すら可能である。

ここで、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(略称はないが、本稿では「裁判員裁判法」と呼ぶことにする)の規定を取り上げてみる。

▼裁判員裁判法 第八条  
裁判員は、独立してその職権を行う。

検察審査会法3条の「独立してその職権を行う」という規定と同じで、裁判員においてもその独立性は変わりはない、ということである。

▼裁判員裁判法 第一条  
この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法 (昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。

一方で、裁判員は刑訴法や裁判所法の諸規定に拘束される、ということである。検察審査会法では、そのような規定は見られない。
法律上の独立性が同程度であって、裁判員の情報に関しては公開対象となるのに、検察審査員は完全秘匿というのは、その理由というものがはっきりしない。

▼裁判員裁判法 第三十一条  
裁判長(第二条第三項の決定があった場合は、裁判官。第三十九条を除き、以下この節において同じ。)は、裁判員等選任手続の期日の二日前までに、呼び出した裁判員候補者の氏名を記載した名簿を検察官及び弁護人に送付しなければならない。
2  裁判長は、裁判員等選任手続の期日の日に、裁判員等選任手続に先立ち、裁判員候補者が提出した質問票の写しを検察官及び弁護人に閲覧させなければならない。


このように、候補者氏名の記載された名簿を送付し、質問票の閲覧をさせる義務があるわけである。被疑者側が見ることができる、ということである。

▼裁判員裁判法 第三十六条  
検察官及び被告人は、裁判員候補者について、それぞれ、四人(第二条第三項の決定があった場合は、三人)を限度として理由を示さずに不選任の決定の請求(以下「理由を示さない不選任の請求」という。)をすることができる。
2  前項の規定にかかわらず、補充裁判員を置くときは、検察官及び被告人が理由を示さない不選任の請求をすることができる員数は、それぞれ、同項の員数にその選任すべき補充裁判員の員数が一人又は二人のときは一人、三人又は四人のときは二人、五人又は六人のときは三人を加えた員数とする。
3  理由を示さない不選任の請求があったときは、裁判所は、当該理由を示さない不選任の請求に係る裁判員候補者について不選任の決定をする。
4  刑事訴訟法第二十一条第二項 の規定は、理由を示さない不選任の請求について準用する。


つまり、理由を提示せずとも不選任(の決定)請求ができるわけである。


▼裁判員裁判法 第四十二条  
前条第一項の請求を却下する決定に対しては、当該決定に関与した裁判官の所属する地方裁判所に異議の申立てをすることができる。
2  前項の異議の申立てを受けた地方裁判所は、合議体で決定をしなければならない。ただし、前条第一項の請求を受けた裁判所の構成裁判官は、当該異議の申立てがあった決定に関与していない場合であっても、その決定に関与することはできない。


また、裁判員の解任請求が裁判所に一度は却下と決定された場合であっても、なお異議申立てが可能であり、前回決定者(却下を決定した裁判官)以外の裁判官が新たに合議体で検討し決定をする、ということになっている。
では、検察審査会はどうなのか、というと、司法組織の一部であろう、ということではあっても、裁判所に不服・異議申立てができるわけではない。検察審査会に対する異議申立ての制度はない。


5)「検察審査会の強制起訴は違憲である」と主張する


これまでの検討から、検察審査会の強制起訴に関する手続がかなり危険なものであると判断せざるを得ないだろう。
個人的には、検察審査会法が違憲立法であると主張するべきであると考えている。小沢の弁護団が提起したような、行政訴訟というのは方向違いではないか。前提からして、検察審査会のの出した議決が行政処分である、ということを主張、立証するのは困難であろう。それよりも、刑事事件の手続き論として大きな問題が存在するということを言う方が妥当ではないかと思える。

まず憲法の条文から見てみよう。

▼憲法 第三十一条  
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

▼憲法 第三十七条  
すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

主張としては、「法律の定める手続きによる」という憲法31条に違反している、というのが第一。強制起訴が刑訴法に拠らないから、である。第二として、憲法37条の「公平な裁判所」の部分である。議決はこれに違反している、ということである。最後に、ちょっとテクニカルな感じになってしまうかもしれないが、(行政機関ではなく)司法機関である、という論点についてである。

▼憲法 第七十七条  
最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
○2  検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
○3  最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。


憲法77条第二項の「最高裁判所の定める規則」に従っていない、という主張である。

以下、この3つの論点について、個別に述べる。


①憲法31条違反

検察審査会法における公訴提起の規定は、刑事訴訟法に定められた権限ではない。刑事事件は、一般に刑事訴訟法に手続きが規定されており、この手続きによらない公訴は存在してこなかった。刑訴法247条の検察官の公訴権と、この例外規定である「みなし公訴」が刑訴法266条に規定されていることから、刑事訴訟法の手続きに拠らない公訴はない、ということである。検察審査会法が刑事訴訟法の上位法規であるという判例ないし法的見解が存在しているならばまだしも、そのような見解はみたことがない。
少なくとも、刑事訴訟法247条に反して公訴権が付与されており、刑訴法に定めのない公訴手続きは憲法31条違反である。


②憲法37条違反

刑訴法256条によれば、公訴提起には起訴状提出が必要であるが、起訴状に記載すべき公訴事実について、第三項に『公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。』と規定されている。
訴因明示、すなわち「以て罪となるべき事実を特定」が必要になるのであり、検察審査会の議決においては、これが守られていない。殊に同法第六項においては、『起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。』と規定され、事件につき予断を生じせしめる虞のある「内容を引用」してはならないはずである。
にも関わらず、本件検察審査会の議決においては、検察官が不起訴処分とした事件の検察官が特定していない事実を列記し、予断を生じせしめる虞のある内容について言及・記載したものである。
このような予断を生じせしめる虞があれば、裁判所の公平が保たれているとは言えず、憲法37条違反というべきである。


③憲法77条違反

第二項によれば検察官は「最高裁判所の定める規則に従う」ことになっているが、検察審査会による公訴提起規定においては、検察官が存在していない。ただ、検察官の職務を行う弁護士が選任されることから、当該弁護士が検察官というべきであり、当該弁護士は当然のことながら、憲法77条第二項の遵守が求められるはずである。そうすると、「最高裁判所の定める規則」とは何か、ということになるが、これは最高裁判所規則であろう。これには、刑訴法266条第二号による「みなし公訴」における規定(最高裁判所規則第174条、175条)が存在しており、検察官による公訴権の例外であっても、最高裁判所規則に則るものである、ということが言える。
しかしながら、検察審査会法による公訴提起は最高裁判所規則に従うということが言えるものではなく、最高裁判所規則の範囲外にあるとしか見えないのであって、憲法77条2項に反するものと言えるのではないか。

※※追記(18日10時頃)

「司法機関である」ということについての記述が抜けておりましたので、追加いたします。
検察審査会はこれまで示したように行政機関ではなく司法機関の一部である、ということであるから、最高裁がその頂点にあるべきである。憲法77条1項の、最高裁が「訴訟手続、司法事務処理等について、規則を定める権限を有する」ということになっているが、検察審査会は指揮監督権が検察審査会長に存すると規定(20条4項)されており、最高裁判所の指揮命令・監督権が及ぶと判断することはできない。やはり憲法77条違反と言うべきである。



④検察審査会の手続きは問題がある

違憲かどうか、ということはとりあえずおいておくとして、最後に裁判員との比較などから問題点を挙げてみる。

裁判所の決定(例えば刑訴法266条)であれば、

・裁判所は裁判所法に拘束される
・最高裁判所の指揮監督が及ぶ
・最高裁判所は判事が国民審査を受け間接的に国民の監督下にある

のに、検察審査会は

・裁判所法に規定がない
・最高裁の指揮監督は及ばない
・検察審査員は国民の監督下にない
(検察組織ならば法務大臣権限が及ぶ)

また、

・検察審査員選任に異議申立てができない
・不服請求を裁判所や検察審査会に出せない
・名簿の公開請求もできない
・行政機関の情報公開法も対象外
・裁判所決定の裁判官や裁判員は公開部分があるが審査員にはない

と、非常に問題が多い。


以上のように見てくると、検察審査会という仕組みそのものの改善が必要ではないか。もう少し公開部分や検証可能部分を増やすべきである。



検察審査会の有する問題点について~2

2010年10月17日 19時45分43秒 | 法関係
(続き)

3)強制起訴に関する法手続上の問題点

①検察官以外の公訴

基本的な大原則として、検察官の独占的公訴権がある。

▼刑事訴訟法 第二百四十七条
 公訴は、検察官がこれを行う。

検察審査会には「公訴権」は存在していない。刑事訴訟法上には、検察審査会による公訴権限の規定は存在していないからである。

検察官による公訴以外については、例外規定が刑事訴訟法に設けられている。

▼刑事訴訟法 第二百六十二条
 刑法第百九十三条から第百九十六条まで又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条若しくは無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成十一年法律第百四十七号)第四十二条若しくは第四十三条の罪について告訴又は告発をした者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官所属の検察庁の所在地を管轄する地方裁判所に事件を裁判所の審判に付することを請求することができる。

例えば刑法194条の特別公務員職権濫用罪や195条の特別公務員暴行陵虐罪(先日のこ告訴が報じられた)について、検察官が不起訴としたような場合に「身内だから庇ったんだろう」というような疑いを向けられないとも限らないわけである。
そうすると、この262条規定によって公訴提起しなかったという処分に対する不服を申立てることができ、地方裁判所の審判請求で公訴するかどうかを決めてもらう、という手続きをとるわけである。この規定で公訴が発動される場合があり、それは、やはり刑事訴訟法の規定による。

▼刑事訴訟法 第二百六十六条
 裁判所は、第二百六十二条第一項の請求を受けたときは、左の区別に従い、決定をしなければならない。
一 請求が法令上の方式に違反し、若しくは請求権の消滅後にされたものであるとき、又は請求が理由のないときは、請求を棄却する。
二 請求が理由のあるときは、事件を管轄地方裁判所の審判に付する。


▼刑事訴訟法 第二百六十七条
 前条第二号の決定があつたときは、その事件について公訴の提起があつたものとみなす。

このように、「公訴提起があったものとみなす」場合には、刑事訴訟法上での規定が定められているわけである。これが検察官以外の公訴権についての例外、ということであって、検察審査会の議決については「公訴提起があったものとみなす」とは書かれていない。


②「刑訴法266条第二号」による公訴は検察審査会と類似

前項で述べた「刑訴法第266条第二号」の決定が裁判所で行われた場合には、同267条により自動的に公訴提起となり、この検察官役を弁護士から指定する、という仕組みになっている。これは、検察審査会の強制起訴の場合と、ほぼ同様のものである。

▼刑事訴訟法 第二百六十八条
 裁判所は、第二百六十六条第二号の規定により事件がその裁判所の審判に付されたときは、その事件について公訴の維持にあたる者を弁護士の中から指定しなければならない。
○2 前項の指定を受けた弁護士は、事件について公訴を維持するため、裁判の確定に至るまで検察官の職務を行う。但し、検察事務官及び司法警察職員に対する捜査の指揮は、検察官に嘱託してこれをしなければならない。
○3 前項の規定により検察官の職務を行う弁護士は、これを法令により公務に従事する職員とみなす。

(以下略)

条文を比べてみる。

▼検察審査会法 第四十一条の九  
第四十一条の七第三項の規定による議決書の謄本の送付があつたときは、裁判所は、起訴議決に係る事件について公訴の提起及びその維持に当たる者を弁護士の中から指定しなければならない。
○2  前項の場合において、議決書の謄本の送付を受けた地方裁判所が第四十一条の七第三項ただし書に規定する地方裁判所に該当するものではなかつたときも、前項の規定により裁判所がした指定は、その効力を失わない。
○3  指定弁護士(第一項の指定を受けた弁護士及び第四十一条の十一第二項の指定を受けた弁護士をいう。以下同じ。)は、起訴議決に係る事件について、次条の規定により公訴を提起し、及びその公訴の維持をするため、検察官の職務を行う。ただし、検察事務官及び司法警察職員に対する捜査の指揮は、検察官に嘱託してこれをしなければならない。
○4  第一項の裁判所は、公訴の提起前において、指定弁護士がその職務を行うに適さないと認めるときその他特別の事情があるときは、いつでもその指定を取り消すことができる。
○5  指定弁護士は、これを法令により公務に従事する職員とみなす。
○6  指定弁護士には、政令で定める額の手当を給する。


制度としては似ているが、検察審査会の強制起訴については、刑訴法266条第2号のような刑訴法上の特例としての扱いにはなっていないのである。また、裁判所が決定を下すのと、一般人のみの構成からなる検察審査会が議決を出すのは、当然意味合いが異なっている。


③「刑訴法266条第二号」のみなし公訴に関する法の支配

請求は裁判所に出され、裁判所が決定を下すものだ。裁判所は、裁判所法に支配されており、上級組織である最高裁判所の指揮監督も当然受けることになる。また、刑訴法に基づく刑事事件の手続きであって、最高裁判所規則の適用も受けるわけである。

▼最高裁判所規則 第百七十四条 
法第二百六十六条第二号の決定をするには、裁判書に起訴状に記載すべき事項を記載しなければならない。
2 前項の決定の謄本は、検察官及び被疑者にもこれを送達しなければならない。


▼最高裁判所規則 第百七十五条 
裁判所は、法第二百六十六条第二号の決定をした場合には、速やかに次に掲げる処分をしなければならない。
一 事件をその裁判所の審判に付したときは、裁判書を除いて、書類及び証拠物を事件について公訴の維持にあたる弁護士に送付する。
二 事件を他の裁判所の審判に付したときは、裁判書をその裁判所に、書類及び証拠物を事件について公訴の維持にあたる弁護士に送付する。


また、最高裁判所というのは、最高裁判事が国民審査の対象となっていることから、間接的には国民の監視監督を受けている、という制度になっているわけである。

つまり、このみなし公訴というのは、刑訴法、裁判所法、最高裁規則、などで支配されており、国民からの監督は最高裁を通じて間接的に効いている、ということになっているわけである。


④検察審査会の強制起訴はどのような支配を受けているのか

そもそも、検察審査会議決による公訴提起については、刑訴法上では規定がない。最高裁規則にもない。組織としての指揮命令については、前記1)及び2)から、行政組織でなく、司法組織の一部のようではあるけれども、最高裁の指揮命令権が及んでいるとも言えない。検察審査会法には、そのような規定が存在しないからである。更に、裁判所法にも規定がない為、法文上では全くの「自主独立機関」に近いように見受けられる。
指揮命令は前述した検察審査会法20条第四項の通りに、「検察審査会長」ということになっており、この会長は互選であるから、上位機関からの指揮命令は効いていない、というふうに解釈せざるを得ないのである。そうすると、間接的にも国民からの統制は及ばない組織、ということになり、指揮監督権が独立した存在ということになってしまうのである。
唯一あるのは、検察審査会法、である。

(続く)



検察審査会の有する問題点について~1

2010年10月17日 19時45分21秒 | 法関係
今年、脚光を浴びることになった検察審査会であるが、実はよく知らないことが多いということを気付かされた。制度変更で導入されて間もない「強制起訴」という強力な武器についても、制度上の危うさが気になるところである。また、検察審査会の議決を巡って、行政訴訟提起との報道もあり、個人的見解について述べてみたい。


1)検察審査会の議決は行政処分ではない

過去に最高裁判例があるらしい、ということだが、当方は法律について素人であり、判例集も持っていないことから、当該判決文を見てはいない(最高裁の見解がどういうものであったかは、自身で調べて下さい)。当時には強制起訴制度が存在していなかったことから、あくまで現行制度について検討をする。

①検察審査会は行政機関なのか

議決が処分に該当するのかどうか、というのがポイントとなろう。行政訴訟提起に当たっての前提とは、検察審査会が行政機関でなければならない、ということになろう。処分の妥当性を争う、ということなのだから。
名称からして「検察」と付いていることから検察庁の下部組織なのかと思ったら、どうやらそうではないようだ。検察庁からの権限が及ばないということであり、法務大臣の指揮監督も及ばない、ということになろう。


②「行政機関」説を否定する理由

行政手続法による規定から判断できると思われる。

▼行政手続法 第二条
二  処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
五  行政機関 次に掲げる機関をいう。
 イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関若しくは内閣の所轄の下に置かれる機関、宮内庁、内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項 若しくは第二項 に規定する機関、国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 に規定する機関、会計検査院若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員
 ロ 地方公共団体の機関(議会を除く。)


定義から判るように、第二号の「行政庁の~行為」が処分であり、第五号のイに掲げられる国家行政組織法等の法律規定に基づく組織には、検察審査会は該当していない。


③行政不服審査法の対象にもならない

これも条文からすると、判りやすいのではないか。

▼行政不服審査法 第四条  
行政庁の処分(この法律に基づく処分を除く。)に不服がある者は、次条及び第六条の定めるところにより、審査請求又は異議申立てをすることができる。ただし、次の各号に掲げる処分及び他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分については、この限りでない。
六  刑事事件に関する法令に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が行う処分


他の号は略してあるが、行政庁の処分であれば原則として異議申立ては可能であるが、除外規定も存在する。それが、刑事事件に関する処分である。一般的に言う「検察官の行った処分を行政訴訟の対象にするのはヘンだ」という言い分は、こうした規定からも窺われるわけである。

同様の規定は行政手続法にも存在しており、
▼行政手続法 第三条
次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章までの規定は、適用しない。
五  刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分及び行政指導


この第五号規定があることから、「仮に検察審査会が行政機関であるとしても、不服申立てや行政訴訟の対象とすることは困難」であると考えてよいだろう。


従って、
・検察審査会は行政機関(組織の一部)とは認められない
・行政手続法や行政不服審査法の適用対象外
・仮に議決が行政処分の一種であると仮定しても、行政訴訟は困難
ということになろう。


2)検察審査会は司法組織の一部である

行政機関ではないことが判ったとして、では何に当てはまるのか、というのが気になるところである。最高裁判所のHPには検察審査会が載せられており、検察審査会事務局の規定からすると、恐らくは司法の一部と看做して良いのではないか。

▼検察審査会法 第二十条  
各検察審査会に最高裁判所が定める員数の検察審査会事務官を置く。
○2  検察審査会事務官は、裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを命じ、検察審査会事務官の勤務する検察審査会は、最高裁判所の定めるところにより各地方裁判所がこれを定める。
○3  最高裁判所は、各検察審査会の検察審査会事務官のうち一人に各検察審査会事務局長を命ずる。
○4  検察審査会事務局長及びその他の検察審査会事務官は、検察審査会長の指揮監督を受けて、検察審査会の事務を掌る。


最高裁判所が裁判所事務官に命じて検察審査会事務官とし、更に各地方裁判所等に事務局を置くことから、司法組織の一部と判断したわけである。ただし、組織上は独立的であり、指揮命令・監督権というのは「検察審査会」にあるようである。

▼検察審査会法 第三条  
検察審査会は、独立してその職権を行う。


(続く)