コメントに頂いたテーマがとても大きかったので、私ごときではうまく答えられないかもしれませんが、可能な範囲で書いてみたいと思います。
論点をいくつかに分割しまして、次のようにしました。ご希望に沿ったお答えにはなっていないかもしれませんが、ご容赦下さい。
1)男社会的な問題
2)海外脱出は望ましいか?
3)例えばフランスとの差
4)将来の展望
では、各論点について見て参りたいと思います。
1)男社会的な問題
コメントで指摘されておりますが、”「男は仕事、女は家事育児」という保守的かつ古臭い考え”が今でも強く残されているという傾向はあるかもしれません。私自身も男ですので、そういった考え方は理解できるものであります(失礼、賛成とか肯定とかいうことではなく)。
が、多分かなりの年長者でなければ、こうしたことを言っている人は少ないのではないかと思えます。コメントをされたShinnさんは、春から大卒社会人というお若い方ですので、昔のことはあまりご存知ないかもしれない(熟知しておられたらゴメンなさい)と思い、一応かつての日本の様子を大雑把に書いておきたいと思います。
今から20年くらい前(私が大学生の頃)でも、女性の大学進学率は今よりかなり低く、短大や女子大に進学する人の方が多かったかもしれません。もっと以前だと、女子の新卒者のうち就職する割合は更に低く、2割程度くらいしか働かなかったように記憶しています(高卒女子は忘れました・・・)。今ではほぼ「全員」が就職活動を行ったりして、大卒後就職するのは当たり前だろうと思いますが、昔は違っていたのですね。大卒女子であっても、多くは花嫁修業などと称して「家事手伝い」として過し、仕事をしない人は少なくなかったのです。それでも良かった。結婚年齢が25歳以下が珍しくなく、仕事をしたとしても1~2年程度で辞めることになってしまうからです(女性の平均結婚年齢は判りませんが、大多数が25歳未満である時代はあったでしょう)。そもそも社会制度的な仕組みがそのようにできていたのです。雇用制度も、年金制度も、給与体系も、みんな「一家の大黒柱」である旦那さんが一人で働いて稼ぎ、奥さんは専業主婦で家にいることが可能なようにできていた。それが所謂「標準世帯」(夫婦+子ども2人)という典型的なモデルだったのです。その専業主婦は、家事労働ばかりではなく、年老いた親の面倒をみたり地域社会活動をするというような、別な役割を担わされていたのだろうと思います(例えば、昔病院に入院すると、家族か付添婦―雇われた専門の人―が付きっ切りで看護せねばなりませんでした。看護婦はあれこれと世話をしてくれるなどということはなかったのです。基本的には家族がやってくれ、という時代であったのです)。
しかし、現在は社会制度が実情に合わなくなっている。専業主婦は減少しているし、高齢者単独世帯(独居老人も)が増加している一方で、若年層の方に親との同居が増加しているのです。昔は、若者が「家を出て」(飛び出して、という方が妥当かもしれない)行き、高齢の親が同居していたことが多かった。昔の時代を生きてきた人たちには、女性は専業主婦で家にいろ、的な発想をする人がまだ多いかもしれませんが、今の若年層(40歳未満くらいかな)ではそうした考えを持つ人の割合はむしろ少数派ではないでしょうか。きっと男性像も変わってきたのだろうと思います。Shinnさんの結婚相手になりそうな年齢層の男性では、「結婚したら女性は仕事を辞めてくれ」と求める人はそんなに多くはないだろうな、ということです。
その理由としては、男性の給与体系が昔と違うことが、まず挙げられると思います。かつては年功序列で年数に応じて標準世帯的な家庭が生活することを想定して給与額に織り込まれていたけれども、今は能力主義的、成果主義的な給与体系に変わったと思います。なので、男性の給料だけでは少ない、ということが十分考えられるのです。結婚前に双方が仕事をしていることが多いので、そうなると、結婚後片方が仕事を辞めたりすれば一気に収入は減ります。その生活レベルが受け入れ難い、ということは少なくないでしょう。更に、女性と男性の収入水準を比べると、若年層では男性の方が低い可能性すらあります。若年男性の失業率は同年齢層の女性よりも高いことが一つです。第二に、女性の方が多く派遣・契約社員となっている可能性があり、その分だけ男性の正規雇用が多いわけではなく、派遣等よりも条件の悪いフリーターや不定期雇用、更に悪ければ失業ということがありえます。第三に、女性優位な職場があり、小売・販売・飲食関係では男性よりも女性に需要が多いので採用されやすいのではないかと思われ、看護師や保育士のように男性が圧倒的に少ない職種というのも存在しています。これらを考えると、男性の方が女性よりも収入状況の悪い人が多い可能性があるので、結婚したとしても女性の収入が大変重要なことには変わりない、とも思えます。
職場環境の変化ということで見れば、年長者の時代では「女性の上司」という存在が殆どなかったと思いますが、今の若年層では同じ条件の職場であるとか、女性の先輩や上司が存在していることは普通であると思われ、そういう点でも女性の仕事に対する理解の程度は高いのではないかと思えます。昔は、「女性初の~」というのがニュースになるような時代でしたが(例えば片山さつき議員なんかはそうだったでしょう)、今では珍しくなくなってきています。会社のトップにもたくさんおられます。きっと女性の職業人として、多くの先達が男社会に風穴を開ける努力をしてきた結果であるかと思います。それ故、今では男女ともに新卒で働くというのが当たり前になった、ともいえます。
大まかにまとめますと、男性が女性の仕事に対して理解を示さないとか、結婚を期に退職せざるを得ない、といった状況は、今後ますます少なくなっていくのではないか、というのが、私の印象です。これには人口動態という要因も関係あるので、それは後述したいと思います。
2)海外脱出は望ましいか?
これは賛否分かれるところではないかと思われます。基本的には、「好きな人がいて、その人が暮らす国で一緒に暮らしたい」ということであれば、世界中どこであってもいいと思います。実際、海外で生活する人は少なくないでしょう。その決断は、成功とか失敗とか、どちらともいえないのではないでしょうか。その場になってみないと判らない苦労とか、困ったこととか、あるかもしれないので・・・・。
自分の将来の為とか、実現したい夢があって海外へ行くことは、可能であるならどんどんやった方がいいと思います。今の日本人を見ていて感じる事は、所謂「競争相手」が隣の机の人と思っているのではないか、というような寂しい状況ですので、世界を相手にできる人の方がずっといいと思います。そういう意味では、海外へ行く事は推奨されるべきではないかと思われます。ただし、その間日本国内の時間は確実に過ぎて行ってしまいますので、中には失意で戻ってくる人がいたとしても、その時点では後戻りできない(というか、リカバリーできない?)地点に来ていれば、その後にはもっと厳しい人生が待っていることも有り得るかもしれません。そういうリスクはあると思います。行く前によく考えておくべきかな、と。
3)例えばフランスとの差
女性が働いたり、子育てをする環境を日本と比べるとどうなのか、ということを見てみます。特にフランスの制度に詳しい訳でもないので、本当にザックリとしか言えないですが・・・・。
フランスはかつて少子高齢化が進んでいましたが、出生率は維持されており(1.8~1.9程度、日本は1.26)、移民の流入効果もあって人口増加に結びついています。これは制度が奏功したのか、移民の影響なのか、社会制度や環境の変化によるのか、正確には判りません。でも、日本よりは女性が単独で子育てがしやすい環境になっていると思われます。
日本との違いですが、まず宗教的背景に大きく差があります。大多数がカソリック系(移民などにはイスラム教徒もかなりいる)ですので堕胎については、厳しい制限があります。日本では実態がつかめていませんが、堕胎児は相当数に上ると推測されているようです。フランスでは「産まなければならない」という半強制力が働く面があるのではないか、と思われます。
それから、シングルマザーの割合が高いことが特徴と言えると思います。日本では嫡出子以外の出生は極めて少ないのが現状です(1%未満だったか、5%未満だったかと思いますが、資料は見てないです)。フランス映画に登場する女性像では、結婚していない女性が1人で子育てをしている、という登場人物が珍しくありません。それもそのはず、3~4割くらいが、シングルマザーなのです。シングルマザーは有職率も高く、パートタイマー率はEU中最低水準(殆どが正規の仕事、ということ)です。フランス人女性の多くは結婚してもしなくてもよく、所謂「同棲」が社会的には結婚とほぼ同じ意味合いを持つのです(制度上でも)。なので、結婚していなくとも、同棲していたり出産したりはあるし、シングルのままでも自分1人で子育てといったことがよく行われる、ということだと思います。離婚率も非常に高く、パリでは約半分が離婚しているとも言われます。つまり、社会の結婚観として、日本とは全く異なっていると考えるべきで、それに合わせた制度があるのは、ある意味当然と言えるでしょう。
参考までに、フランスの失業率は常時10数%で、女性の失業率は男性よりも常に高くなっています。大体15%程度です。これはどういうことか?昨年や一昨年の暴動で明らかになったように、若年層や移民等貧困層への仕事の割り当てが非常に厳しく、階級差別的な社会である一面を覗かせます。子育て女性にとって「仕事」が守られるということは、他の誰かがその仕事に就けるという機会を確実に奪っている、ということなのです。シングルマザーが既得権益として守られているということは、逆に立場を変えてみれば、若年層や貧困層への仕事や収入を犠牲にしている、ということでもあるのです。フランス人女性にとって子育てしやすい環境であるかもしれませんが、その分他の誰かが代わりに負担や犠牲を強いられる、ということになります。日本でも似たような制度設計ができるか、というと、これは熟慮を要するのではないかと思うのですが・・・・ただ、日本では支援が少ないと思います(それゆえ内閣府では少子化対策を専門に考えるようになってきました)。社会的な因習というか、「世間の目」というものを一朝一夕で変えることは難しく、日本でも嫡出子以外の出生を増やし、シングルマザーを応援しよう、と決めたところで、直ぐには人々の考え方を変えられないのではないかと思えます。でも、悪いニュースばかりではないことは確かです。それは次の項で触れたいと思います。
4)将来の展望
今後の日本がどうなっていくかというと、年寄りが今まで以上に増加し、若者が減っていく、ということは言えるでしょう。団塊世代の引退が言われる昨今ですので、これから数年で団塊世代が大体65歳以上になっていきますから、相当大きな「空き」(数百万人規模)が出来てくるでしょう。その分は若年層へのポスト割り当てに繋がるので、雇用環境は改善されてくるのではないかと思われます。現在のフリーターやパートの方々にも、従来の正規雇用の需要が増えてくるのではないかと思われます。
更に年数が進んで2040年頃になれば、15~65歳の労働可能人口が今よりも約2500万人減少するので、専業主婦などという悠長なことは言ってられない状況が想定されるでしょう。つまり、女性の労働力化率が極めて高くなり、夫婦共働き世帯が大半7~8割くらい(今のフィンランドなんかもそうだったと思います)に行くようになると思います。女性が男性と全く同じように働いても、現在の就業人口より少なくなってしまうかもしれません。教育の高度化によって、大学院とかロースクールのような年限延長傾向は続くので、若者は直ぐには労働市場には参入してこないことが予想される(昔で言えば中卒とか高卒で働き、金を稼いで消費していたが、大卒が増えれば増えるほどその分遅れ、大学院や専門課程に行く人たちが増えればもっと遅れる)のではないかと思います。なので、元気な人は70歳くらいまで仕事をするかもしれない(というか、貧乏人は働かざるを得ない?)し、女性労働力への依存度は確実に高まる一方になるでしょう。
そこで問題になってくるのは、これまで女性が家庭内で行っていた労働ですね。昔の専業主婦の役割のような仕事、ということです。子育てや親の介護関係、家事労働等は「外部委託化」が進むのではないかな、ということです。今でも、塾とか、介護保険サービスとか、そういう方向に進んで来ていると思いますけれども、もっと外部委託化されていくかもしれません。昔の日本でも、ちょっとした家庭では所謂「お手伝いさん」がいて(今ではかなり裕福な家庭だけかもしれませんが)、家事労働を請け負っていたので、それと似た状況が起こってくる可能性があります。有能で生産高の多い女性は、こうした家事労働や介護労働なんかを委託して、家庭外でみんなの代わりにガンガン稼ぐ方が、日本全体の生産力がアップするし効率的であると思います。手の空いている年寄りは、子どもの面倒を見たり、あれこれ教育したりということが求められるかもしれません。おばーちゃん、おじーちゃんの役割を、家族に限定せずに地域内とかでやっていく、ということです。人口が減っていってるので、できるだけ人数が少ない中でも運営していける体制を作っていかねばならないでしょう。
たとえ労働力人口が減少しても、今の低賃金の仕事なんかを海外に出すとか、各部門で機械化したり進めれば、人数がそれほど必要ではない環境にできるかもしれません。ロボット化とか。なので、割と生産性の高い(一人当たり、時間当たりの売上高の多い仕事)が優先的に残され、今の不人気で賃金の安い仕事はずっと少なくなるはずです。それで案外と丁度いい具合になるかもしれません。例で考えてみましょう。今でも、学食だとか空港のレストランなんかでは「セルフサービス」で運営されていたりするので、同じように考えれば飲食店の店員などは大幅に削減可能です。フリーターなんかがやっている仕事の大半は、機械化によって取って代わられるか、客が自ら労力負担を「ちょっぴり」増やして補うか、ということだろうな、ということです。高級レストランに行かないと、客に注文を聞きに来たり、食事を運んでくれるようなサービスはなくなる、ということです。それでも、大して困ることはないかもしれないです。上に述べたように、家事労働や介護労働などのような、基本的に人的サービスに依存する部門については、海外労働者を受け入れるということが起こってくる可能性は有り得ます。ロボットの性能が実用的水準に達していれば、海外労働者を受け入れる必要性すらなく、全てロボットがやってくれるかもしれません。建設現場やゴミ・資源回収などのような業務は残るので、低賃金労働の為に海外労働者が必要とされる可能性はありますね。
どんな未来が待っているか判りませんが、時間が経過すればするほど「女性の労働力」はとても貴重な戦力として価値が高まり、きっと暗い未来ばかりではないと思います。ただ、今すぐにそうした変化が期待できるかというと、それは難しく、ここ暫くをどうやって乗り越えていくか、という切羽詰った問題を抱えている方々にとっては、厳しい環境であることは否めません。「海外逃避は待ってください」とか、今は「とりあえず安い賃金の仕事で我慢して下さい」とか言う権利は私にはないので、やはり個人の選択にお任せするしかないのですけれども・・・・・。
あまりお役に立つ答えではないかもしれませんが、私なりの考えを書いてみました。ワーキング・プア問題、少子化対策やひとり親家庭への施策などについて、今後の議論を注視して参りたいと思います。
論点をいくつかに分割しまして、次のようにしました。ご希望に沿ったお答えにはなっていないかもしれませんが、ご容赦下さい。
1)男社会的な問題
2)海外脱出は望ましいか?
3)例えばフランスとの差
4)将来の展望
では、各論点について見て参りたいと思います。
1)男社会的な問題
コメントで指摘されておりますが、”「男は仕事、女は家事育児」という保守的かつ古臭い考え”が今でも強く残されているという傾向はあるかもしれません。私自身も男ですので、そういった考え方は理解できるものであります(失礼、賛成とか肯定とかいうことではなく)。
が、多分かなりの年長者でなければ、こうしたことを言っている人は少ないのではないかと思えます。コメントをされたShinnさんは、春から大卒社会人というお若い方ですので、昔のことはあまりご存知ないかもしれない(熟知しておられたらゴメンなさい)と思い、一応かつての日本の様子を大雑把に書いておきたいと思います。
今から20年くらい前(私が大学生の頃)でも、女性の大学進学率は今よりかなり低く、短大や女子大に進学する人の方が多かったかもしれません。もっと以前だと、女子の新卒者のうち就職する割合は更に低く、2割程度くらいしか働かなかったように記憶しています(高卒女子は忘れました・・・)。今ではほぼ「全員」が就職活動を行ったりして、大卒後就職するのは当たり前だろうと思いますが、昔は違っていたのですね。大卒女子であっても、多くは花嫁修業などと称して「家事手伝い」として過し、仕事をしない人は少なくなかったのです。それでも良かった。結婚年齢が25歳以下が珍しくなく、仕事をしたとしても1~2年程度で辞めることになってしまうからです(女性の平均結婚年齢は判りませんが、大多数が25歳未満である時代はあったでしょう)。そもそも社会制度的な仕組みがそのようにできていたのです。雇用制度も、年金制度も、給与体系も、みんな「一家の大黒柱」である旦那さんが一人で働いて稼ぎ、奥さんは専業主婦で家にいることが可能なようにできていた。それが所謂「標準世帯」(夫婦+子ども2人)という典型的なモデルだったのです。その専業主婦は、家事労働ばかりではなく、年老いた親の面倒をみたり地域社会活動をするというような、別な役割を担わされていたのだろうと思います(例えば、昔病院に入院すると、家族か付添婦―雇われた専門の人―が付きっ切りで看護せねばなりませんでした。看護婦はあれこれと世話をしてくれるなどということはなかったのです。基本的には家族がやってくれ、という時代であったのです)。
しかし、現在は社会制度が実情に合わなくなっている。専業主婦は減少しているし、高齢者単独世帯(独居老人も)が増加している一方で、若年層の方に親との同居が増加しているのです。昔は、若者が「家を出て」(飛び出して、という方が妥当かもしれない)行き、高齢の親が同居していたことが多かった。昔の時代を生きてきた人たちには、女性は専業主婦で家にいろ、的な発想をする人がまだ多いかもしれませんが、今の若年層(40歳未満くらいかな)ではそうした考えを持つ人の割合はむしろ少数派ではないでしょうか。きっと男性像も変わってきたのだろうと思います。Shinnさんの結婚相手になりそうな年齢層の男性では、「結婚したら女性は仕事を辞めてくれ」と求める人はそんなに多くはないだろうな、ということです。
その理由としては、男性の給与体系が昔と違うことが、まず挙げられると思います。かつては年功序列で年数に応じて標準世帯的な家庭が生活することを想定して給与額に織り込まれていたけれども、今は能力主義的、成果主義的な給与体系に変わったと思います。なので、男性の給料だけでは少ない、ということが十分考えられるのです。結婚前に双方が仕事をしていることが多いので、そうなると、結婚後片方が仕事を辞めたりすれば一気に収入は減ります。その生活レベルが受け入れ難い、ということは少なくないでしょう。更に、女性と男性の収入水準を比べると、若年層では男性の方が低い可能性すらあります。若年男性の失業率は同年齢層の女性よりも高いことが一つです。第二に、女性の方が多く派遣・契約社員となっている可能性があり、その分だけ男性の正規雇用が多いわけではなく、派遣等よりも条件の悪いフリーターや不定期雇用、更に悪ければ失業ということがありえます。第三に、女性優位な職場があり、小売・販売・飲食関係では男性よりも女性に需要が多いので採用されやすいのではないかと思われ、看護師や保育士のように男性が圧倒的に少ない職種というのも存在しています。これらを考えると、男性の方が女性よりも収入状況の悪い人が多い可能性があるので、結婚したとしても女性の収入が大変重要なことには変わりない、とも思えます。
職場環境の変化ということで見れば、年長者の時代では「女性の上司」という存在が殆どなかったと思いますが、今の若年層では同じ条件の職場であるとか、女性の先輩や上司が存在していることは普通であると思われ、そういう点でも女性の仕事に対する理解の程度は高いのではないかと思えます。昔は、「女性初の~」というのがニュースになるような時代でしたが(例えば片山さつき議員なんかはそうだったでしょう)、今では珍しくなくなってきています。会社のトップにもたくさんおられます。きっと女性の職業人として、多くの先達が男社会に風穴を開ける努力をしてきた結果であるかと思います。それ故、今では男女ともに新卒で働くというのが当たり前になった、ともいえます。
大まかにまとめますと、男性が女性の仕事に対して理解を示さないとか、結婚を期に退職せざるを得ない、といった状況は、今後ますます少なくなっていくのではないか、というのが、私の印象です。これには人口動態という要因も関係あるので、それは後述したいと思います。
2)海外脱出は望ましいか?
これは賛否分かれるところではないかと思われます。基本的には、「好きな人がいて、その人が暮らす国で一緒に暮らしたい」ということであれば、世界中どこであってもいいと思います。実際、海外で生活する人は少なくないでしょう。その決断は、成功とか失敗とか、どちらともいえないのではないでしょうか。その場になってみないと判らない苦労とか、困ったこととか、あるかもしれないので・・・・。
自分の将来の為とか、実現したい夢があって海外へ行くことは、可能であるならどんどんやった方がいいと思います。今の日本人を見ていて感じる事は、所謂「競争相手」が隣の机の人と思っているのではないか、というような寂しい状況ですので、世界を相手にできる人の方がずっといいと思います。そういう意味では、海外へ行く事は推奨されるべきではないかと思われます。ただし、その間日本国内の時間は確実に過ぎて行ってしまいますので、中には失意で戻ってくる人がいたとしても、その時点では後戻りできない(というか、リカバリーできない?)地点に来ていれば、その後にはもっと厳しい人生が待っていることも有り得るかもしれません。そういうリスクはあると思います。行く前によく考えておくべきかな、と。
3)例えばフランスとの差
女性が働いたり、子育てをする環境を日本と比べるとどうなのか、ということを見てみます。特にフランスの制度に詳しい訳でもないので、本当にザックリとしか言えないですが・・・・。
フランスはかつて少子高齢化が進んでいましたが、出生率は維持されており(1.8~1.9程度、日本は1.26)、移民の流入効果もあって人口増加に結びついています。これは制度が奏功したのか、移民の影響なのか、社会制度や環境の変化によるのか、正確には判りません。でも、日本よりは女性が単独で子育てがしやすい環境になっていると思われます。
日本との違いですが、まず宗教的背景に大きく差があります。大多数がカソリック系(移民などにはイスラム教徒もかなりいる)ですので堕胎については、厳しい制限があります。日本では実態がつかめていませんが、堕胎児は相当数に上ると推測されているようです。フランスでは「産まなければならない」という半強制力が働く面があるのではないか、と思われます。
それから、シングルマザーの割合が高いことが特徴と言えると思います。日本では嫡出子以外の出生は極めて少ないのが現状です(1%未満だったか、5%未満だったかと思いますが、資料は見てないです)。フランス映画に登場する女性像では、結婚していない女性が1人で子育てをしている、という登場人物が珍しくありません。それもそのはず、3~4割くらいが、シングルマザーなのです。シングルマザーは有職率も高く、パートタイマー率はEU中最低水準(殆どが正規の仕事、ということ)です。フランス人女性の多くは結婚してもしなくてもよく、所謂「同棲」が社会的には結婚とほぼ同じ意味合いを持つのです(制度上でも)。なので、結婚していなくとも、同棲していたり出産したりはあるし、シングルのままでも自分1人で子育てといったことがよく行われる、ということだと思います。離婚率も非常に高く、パリでは約半分が離婚しているとも言われます。つまり、社会の結婚観として、日本とは全く異なっていると考えるべきで、それに合わせた制度があるのは、ある意味当然と言えるでしょう。
参考までに、フランスの失業率は常時10数%で、女性の失業率は男性よりも常に高くなっています。大体15%程度です。これはどういうことか?昨年や一昨年の暴動で明らかになったように、若年層や移民等貧困層への仕事の割り当てが非常に厳しく、階級差別的な社会である一面を覗かせます。子育て女性にとって「仕事」が守られるということは、他の誰かがその仕事に就けるという機会を確実に奪っている、ということなのです。シングルマザーが既得権益として守られているということは、逆に立場を変えてみれば、若年層や貧困層への仕事や収入を犠牲にしている、ということでもあるのです。フランス人女性にとって子育てしやすい環境であるかもしれませんが、その分他の誰かが代わりに負担や犠牲を強いられる、ということになります。日本でも似たような制度設計ができるか、というと、これは熟慮を要するのではないかと思うのですが・・・・ただ、日本では支援が少ないと思います(それゆえ内閣府では少子化対策を専門に考えるようになってきました)。社会的な因習というか、「世間の目」というものを一朝一夕で変えることは難しく、日本でも嫡出子以外の出生を増やし、シングルマザーを応援しよう、と決めたところで、直ぐには人々の考え方を変えられないのではないかと思えます。でも、悪いニュースばかりではないことは確かです。それは次の項で触れたいと思います。
4)将来の展望
今後の日本がどうなっていくかというと、年寄りが今まで以上に増加し、若者が減っていく、ということは言えるでしょう。団塊世代の引退が言われる昨今ですので、これから数年で団塊世代が大体65歳以上になっていきますから、相当大きな「空き」(数百万人規模)が出来てくるでしょう。その分は若年層へのポスト割り当てに繋がるので、雇用環境は改善されてくるのではないかと思われます。現在のフリーターやパートの方々にも、従来の正規雇用の需要が増えてくるのではないかと思われます。
更に年数が進んで2040年頃になれば、15~65歳の労働可能人口が今よりも約2500万人減少するので、専業主婦などという悠長なことは言ってられない状況が想定されるでしょう。つまり、女性の労働力化率が極めて高くなり、夫婦共働き世帯が大半7~8割くらい(今のフィンランドなんかもそうだったと思います)に行くようになると思います。女性が男性と全く同じように働いても、現在の就業人口より少なくなってしまうかもしれません。教育の高度化によって、大学院とかロースクールのような年限延長傾向は続くので、若者は直ぐには労働市場には参入してこないことが予想される(昔で言えば中卒とか高卒で働き、金を稼いで消費していたが、大卒が増えれば増えるほどその分遅れ、大学院や専門課程に行く人たちが増えればもっと遅れる)のではないかと思います。なので、元気な人は70歳くらいまで仕事をするかもしれない(というか、貧乏人は働かざるを得ない?)し、女性労働力への依存度は確実に高まる一方になるでしょう。
そこで問題になってくるのは、これまで女性が家庭内で行っていた労働ですね。昔の専業主婦の役割のような仕事、ということです。子育てや親の介護関係、家事労働等は「外部委託化」が進むのではないかな、ということです。今でも、塾とか、介護保険サービスとか、そういう方向に進んで来ていると思いますけれども、もっと外部委託化されていくかもしれません。昔の日本でも、ちょっとした家庭では所謂「お手伝いさん」がいて(今ではかなり裕福な家庭だけかもしれませんが)、家事労働を請け負っていたので、それと似た状況が起こってくる可能性があります。有能で生産高の多い女性は、こうした家事労働や介護労働なんかを委託して、家庭外でみんなの代わりにガンガン稼ぐ方が、日本全体の生産力がアップするし効率的であると思います。手の空いている年寄りは、子どもの面倒を見たり、あれこれ教育したりということが求められるかもしれません。おばーちゃん、おじーちゃんの役割を、家族に限定せずに地域内とかでやっていく、ということです。人口が減っていってるので、できるだけ人数が少ない中でも運営していける体制を作っていかねばならないでしょう。
たとえ労働力人口が減少しても、今の低賃金の仕事なんかを海外に出すとか、各部門で機械化したり進めれば、人数がそれほど必要ではない環境にできるかもしれません。ロボット化とか。なので、割と生産性の高い(一人当たり、時間当たりの売上高の多い仕事)が優先的に残され、今の不人気で賃金の安い仕事はずっと少なくなるはずです。それで案外と丁度いい具合になるかもしれません。例で考えてみましょう。今でも、学食だとか空港のレストランなんかでは「セルフサービス」で運営されていたりするので、同じように考えれば飲食店の店員などは大幅に削減可能です。フリーターなんかがやっている仕事の大半は、機械化によって取って代わられるか、客が自ら労力負担を「ちょっぴり」増やして補うか、ということだろうな、ということです。高級レストランに行かないと、客に注文を聞きに来たり、食事を運んでくれるようなサービスはなくなる、ということです。それでも、大して困ることはないかもしれないです。上に述べたように、家事労働や介護労働などのような、基本的に人的サービスに依存する部門については、海外労働者を受け入れるということが起こってくる可能性は有り得ます。ロボットの性能が実用的水準に達していれば、海外労働者を受け入れる必要性すらなく、全てロボットがやってくれるかもしれません。建設現場やゴミ・資源回収などのような業務は残るので、低賃金労働の為に海外労働者が必要とされる可能性はありますね。
どんな未来が待っているか判りませんが、時間が経過すればするほど「女性の労働力」はとても貴重な戦力として価値が高まり、きっと暗い未来ばかりではないと思います。ただ、今すぐにそうした変化が期待できるかというと、それは難しく、ここ暫くをどうやって乗り越えていくか、という切羽詰った問題を抱えている方々にとっては、厳しい環境であることは否めません。「海外逃避は待ってください」とか、今は「とりあえず安い賃金の仕事で我慢して下さい」とか言う権利は私にはないので、やはり個人の選択にお任せするしかないのですけれども・・・・・。
あまりお役に立つ答えではないかもしれませんが、私なりの考えを書いてみました。ワーキング・プア問題、少子化対策やひとり親家庭への施策などについて、今後の議論を注視して参りたいと思います。