現状と比較的短期の見通しを考えてみることにする。
基本的な影響を分析した、次のペーパーを参考にした。
ESRIESRI Discussion Paper No173 短期日本経済マクロ計量モデル(2006年版)の構造と乗数分析
①公共投資
政府の基本的姿勢は、プライマリーバランスの改善を目指しているので、公共投資は伸びがマイナスということになるだろう(予算案ではそうだったよね?)。ペーパーでは拡大で調べているので、この逆(数字が同じだけマイナスになるとは限らないでしょうが)に動くことは、当然予想できる。投資額がGDP比でどの程度マイナスとなっているか、調べていないのでアレだが、基本線は実質、名目、ともにマイナスの影響となると考える。
②定率減税廃止
個人に対する影響を見れば、段階的に定率減税は廃止となるので、昨年と一昨年に比べれば「増税」と同じ意味合いであると思う。短期的には減税効果の逆に動くことが十分考えられると思う。一昨年に比べれば、GDP比で1%もマイナスにはなっていないと思うが(所得税のうち定率減税幅はどのくらいか忘れた、確か2兆円超とかそういう規模であったと思うけど・・・・)、仮に-0.5%程度のマイナスとなれば、実質、名目、消費、住宅投資等でマイナスとなることが考えられる。つまり、定率減税廃止という影響は、今年や来年に出てくる可能性が高いであろう。
③短期金利引き上げ
1ポイントの引き上げには至らないであろうが、もしも06年度内(1~3月)で引き上げられた場合、昨年7月と合わせると0.5%の引き上げに相当し、実質、名目ともに下押し要因である。特に影響が大きいのは、設備投資とか住宅投資の大きなマイナスになると思われる。この影響度はかなりあるのではないかと思うが。
④外生的ショック
短期金利の引き上げによって考えられるのは、為替の変動であろう。③の項目でも検討されているが、これとは異なった影響が出てくる可能性は有り得るであろう。昨年3月の量的緩和解除の際には、ドル円が120円近かったのが一気に115円程度まで円高が進んだはずだ。金利の引き上げ幅以上に、為替市場が反応してしまうことはあると思う。4~5%程度の変動は覚悟せねばならないかもしれない。
他には、政治的なショック要因というのも可能性は有り得ると思うが。具体的には、地方選と夏の参院選だ。この辺りで、万が一自民党が敗北するようなことがあり、安倍政権の基盤にヒビが入ろうものなら、間違いなくマイナスの影響があると思う。つまり、ある程度景気減速が起こったとしても、自律的反発が可能な程度には「緩めておく」ことが必要であろう。それくらいの慎重さが求められて然るべきであると思う。
これだけ、リスクが揃っていながら、なぜ日銀が利上げを目論んでいるのか、明らかにするべきである。何を根拠にしているのか、説明できるはずであろう。
それから、日銀のアンケート調査を見てみよう。
生活意識に関するアンケート調査(第28回)
景況感は、06年6月以降、徐々に悪化しているんですよ。先行き(1年後)の見通しにしても、同じく悪化しています。よくなる材料なんて何もないのですよ、今の所。当たり前だっての。
家計調査では、勤労者世帯の消費はマイナスが依然として続いているのですよ。それは、所得が伸びていないということもあるだろう。暮らしの余裕がなくなった、という割合は多く、楽になった、というのはごく一部だ。暮らし向きD.I.と景況感D.I.ともに、3月以降下降気味じゃないか。量的緩和解除、利上げ後、ともに、悪化を招いている傾向が窺えなくもないのだ。収入の現在水準や先行きも、改善しているというのは見られないが。こんな状況で、ULCは大幅にアップしてきたのか?(笑)プラスに転じたのか?雇用不安にしても、全然消えていないんですよ。求人が逼迫してきて、売り手市場なんてこともないし、雇用関係においては依然として労働者側が「弱い立場」におかれていることに変わりはないでしょうね、きっと。
日本の成長予測に関しても、悲観的な見方が広がっており、特に12月調査では、悪くなっていますね。まあ、そうでしょうな。これが普通の感覚だと思いますよ。景気拡大とか言いながら、給料も増えず、雇用も大して増えず、先行き暗い話題ばかりで、これで「成長していける」などと思えというのは無理でしょう。量的緩和解除の3月以降、どんどん落ちていっているのが、くっきり現れていますね(笑)。
これらの結果などを見ても、どういう利上げの根拠があるのか、本当に謎です。でも日銀は、やる気満々なんですよね。本当に不思議です。
金利や物価に関するアンケート結果ですけれども、答えた人たちの思い込みとかバイアスの存在が窺えますね。これはある意味当然かもしれません。これはもうちょっと検討してみたいと思いますので、今はとりあえず放置。後日別な記事に書くことにします。
最後に、日銀の信頼性のことを少し。
「組織や職員に誠実なイメージを持っていないから」という項目が、9月にダントツに多かったのは、明らかに福井総裁の疑惑のせいでしょう。そういうことをやるような日銀総裁ならば、そりゃ信頼なんてできんと思う人たちは出てくるわな。これも当たり前の話なので、日銀の信頼性を地に落とした福井総裁の罪は大きいと思うよ。でも、普通は日銀なんて何やってるか分らんし、興味もないので、人々の関心は直ぐに薄れるということなのだろう。
人々がよく知らないことをいいことに、好きにやっているというのが日銀の政策なのかもしれんね。
基本的な影響を分析した、次のペーパーを参考にした。
ESRIESRI Discussion Paper No173 短期日本経済マクロ計量モデル(2006年版)の構造と乗数分析
①公共投資
政府の基本的姿勢は、プライマリーバランスの改善を目指しているので、公共投資は伸びがマイナスということになるだろう(予算案ではそうだったよね?)。ペーパーでは拡大で調べているので、この逆(数字が同じだけマイナスになるとは限らないでしょうが)に動くことは、当然予想できる。投資額がGDP比でどの程度マイナスとなっているか、調べていないのでアレだが、基本線は実質、名目、ともにマイナスの影響となると考える。
②定率減税廃止
個人に対する影響を見れば、段階的に定率減税は廃止となるので、昨年と一昨年に比べれば「増税」と同じ意味合いであると思う。短期的には減税効果の逆に動くことが十分考えられると思う。一昨年に比べれば、GDP比で1%もマイナスにはなっていないと思うが(所得税のうち定率減税幅はどのくらいか忘れた、確か2兆円超とかそういう規模であったと思うけど・・・・)、仮に-0.5%程度のマイナスとなれば、実質、名目、消費、住宅投資等でマイナスとなることが考えられる。つまり、定率減税廃止という影響は、今年や来年に出てくる可能性が高いであろう。
③短期金利引き上げ
1ポイントの引き上げには至らないであろうが、もしも06年度内(1~3月)で引き上げられた場合、昨年7月と合わせると0.5%の引き上げに相当し、実質、名目ともに下押し要因である。特に影響が大きいのは、設備投資とか住宅投資の大きなマイナスになると思われる。この影響度はかなりあるのではないかと思うが。
④外生的ショック
短期金利の引き上げによって考えられるのは、為替の変動であろう。③の項目でも検討されているが、これとは異なった影響が出てくる可能性は有り得るであろう。昨年3月の量的緩和解除の際には、ドル円が120円近かったのが一気に115円程度まで円高が進んだはずだ。金利の引き上げ幅以上に、為替市場が反応してしまうことはあると思う。4~5%程度の変動は覚悟せねばならないかもしれない。
他には、政治的なショック要因というのも可能性は有り得ると思うが。具体的には、地方選と夏の参院選だ。この辺りで、万が一自民党が敗北するようなことがあり、安倍政権の基盤にヒビが入ろうものなら、間違いなくマイナスの影響があると思う。つまり、ある程度景気減速が起こったとしても、自律的反発が可能な程度には「緩めておく」ことが必要であろう。それくらいの慎重さが求められて然るべきであると思う。
これだけ、リスクが揃っていながら、なぜ日銀が利上げを目論んでいるのか、明らかにするべきである。何を根拠にしているのか、説明できるはずであろう。
それから、日銀のアンケート調査を見てみよう。
生活意識に関するアンケート調査(第28回)
景況感は、06年6月以降、徐々に悪化しているんですよ。先行き(1年後)の見通しにしても、同じく悪化しています。よくなる材料なんて何もないのですよ、今の所。当たり前だっての。
家計調査では、勤労者世帯の消費はマイナスが依然として続いているのですよ。それは、所得が伸びていないということもあるだろう。暮らしの余裕がなくなった、という割合は多く、楽になった、というのはごく一部だ。暮らし向きD.I.と景況感D.I.ともに、3月以降下降気味じゃないか。量的緩和解除、利上げ後、ともに、悪化を招いている傾向が窺えなくもないのだ。収入の現在水準や先行きも、改善しているというのは見られないが。こんな状況で、ULCは大幅にアップしてきたのか?(笑)プラスに転じたのか?雇用不安にしても、全然消えていないんですよ。求人が逼迫してきて、売り手市場なんてこともないし、雇用関係においては依然として労働者側が「弱い立場」におかれていることに変わりはないでしょうね、きっと。
日本の成長予測に関しても、悲観的な見方が広がっており、特に12月調査では、悪くなっていますね。まあ、そうでしょうな。これが普通の感覚だと思いますよ。景気拡大とか言いながら、給料も増えず、雇用も大して増えず、先行き暗い話題ばかりで、これで「成長していける」などと思えというのは無理でしょう。量的緩和解除の3月以降、どんどん落ちていっているのが、くっきり現れていますね(笑)。
これらの結果などを見ても、どういう利上げの根拠があるのか、本当に謎です。でも日銀は、やる気満々なんですよね。本当に不思議です。
金利や物価に関するアンケート結果ですけれども、答えた人たちの思い込みとかバイアスの存在が窺えますね。これはある意味当然かもしれません。これはもうちょっと検討してみたいと思いますので、今はとりあえず放置。後日別な記事に書くことにします。
最後に、日銀の信頼性のことを少し。
「組織や職員に誠実なイメージを持っていないから」という項目が、9月にダントツに多かったのは、明らかに福井総裁の疑惑のせいでしょう。そういうことをやるような日銀総裁ならば、そりゃ信頼なんてできんと思う人たちは出てくるわな。これも当たり前の話なので、日銀の信頼性を地に落とした福井総裁の罪は大きいと思うよ。でも、普通は日銀なんて何やってるか分らんし、興味もないので、人々の関心は直ぐに薄れるということなのだろう。
人々がよく知らないことをいいことに、好きにやっているというのが日銀の政策なのかもしれんね。