今更ではないが、政権寄りとか「自民党広報紙」などと揶揄されている産経新聞や讀賣新聞による世論調査結果は数字的にバイアスがかかっている。
特に内閣支持率と政党別支持率では顕著である。
ところが、産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が5月30、31日に実施した世論調査で、安倍内閣の支持率は前回調査から7.7ポイント減の36.4%、不支持率はナント10.6ポイント増の52.5%に達した。
不支持率は毎日新聞の調査(24日)で64%、朝日新聞(25日)でも52%と増加傾向だが、産経の調査でも50%を超え、与党内には驚きの声が上がっているという。
「河井夫妻逮捕ならトドメ 自民で激化『安倍降ろし』の動き」
さて、2兆3176億円という壮大な予算額を計上し、2020年5月1日より受付が開始された政府の「持続化給付金」。
所管は経済産業省(正確にはその外局たる中小企業庁)だが経産省はその執行にあたって「民間団体等に委託する」旨を、当初から明らかにしてきた。
民間団体への委託規模としては、類例を見ないほどに巨額国費が動く今回の持続化給付金。
しかも委託先にはその事務費(手間賃)として約769億円が支給されており、その胴元といわれる「一般社団法人サービスデザイン推進協議会に疑惑の矛先が集まり、とりわけ東京新聞は連日の取材で徐々に明らかになる実態を報道している。
「給付金業務、『電通系』中心に回す 外注先の全容が判明」
<持続化給付金事業を受託した法人、経済産業省が設立に関与か> 2020年6月3日 東京新聞 国の持続化給付金事業を担う一般社団法人サービスデザイン推進協議会について、法人の定款をインターネット上で調べると、ファイルの作成者名が経済産業省内部になっていることが分かった。経産省が法人の設立に関与したとみて野党は同省を追及している。 (森本智之) 定款の作成者名には「情報システム厚生課」と記されていた。経産省内のシステム運用などを担当する部署だ。 経産省は作成者名について、省内の部局と認めた上で「企業から定款の作成方法の問い合わせを受け過去に作成したデータを提供することはある。それを基に作成された可能性は否定できない」と説明。ただ「法人にも確認したが経緯は分からない」とする。 ファイルのタイトルが「補助金執行一般社団法人(仮称)定款(案)」となっていることも経産省関与の疑いを強める。行革で人員削減が進み、事業を外部委託するケースが多い。持続化給付金事業で、中小企業庁の担当者自身も「役人だけでは到底できない」と外部委託の利点を認める。 野党は「経産省が、補助金事業を執行させるために付き合いのあった企業を通じて法人を設立し、定款の作成にも関わった」と指摘。これにも、経産省は「(なぜタイトルがそうなっているか)われわれとしては分からない」と具体的な反論はできていない。 持続化給付金事業では委託費の97%が再委託先の電通に流れ、他の企業に外注されている。法人の実体は乏しく、事業の実際の担い手は委託先の企業などになっている。法人は設立から4年で、給付金を含め14件総額1576億円の事業を受託するなど経産省とは密接な関係。給付金以外でも、再委託や外注を繰り返してきた。偶然なのか、最初に受託した事業の公募開始日が、法人の設立日だった。経産省の担当者は、同省が法人の設立に関与しているという指摘について「全く違う」と否定。その上で「設立は、産業界の皆さんがこれから、この政策が盛り上がると空気を読んだのではないか」と話した。 |
こんな経産省の担当者の話をまともに信じる者はおるまい。
「役人だけでは到底できない」と外部委託の利点を認めるならば、その外部委託先の選定が大きな問題となる。
「公益法人等との随意契約の適正化について」によれば、競争入札(公募)が前提とされ、随意契約(決め打ち)は、例外とされている。
ところが、お上である経産省が胴元として怪しげな幽霊組織を作り、再委託先はすべて「息のかかった」地回りの子会社等に発注するという、腐敗しきった江戸幕府の末期を思わせられる。
なお、この間の詳細な調査はすべて「東京蒸溜所 蒸溜日誌」というアカウントで以下のように継続的に調査結果が報告されている。
「一般社団法人サービスデザイン推進協議会とは何者か。『持続化給付金』事務局の謎めいた正体を考える。」
「【続報】資金の流れから一般社団法人サービスデザイン推進協議会の実態を考える。/「持続化給付金」事務局の謎めいた正体を考える(その2)」
「一般社団法人サービスデザイン推進協議会の裏側に潜むもの/『持続化給付金』事務局の謎めいた正体を考える(その3)」
それにしても、補償なき休業要請で2か月余りも収入が途絶えた疲弊し破産寸前の業者らを本当に救う気が合ったのだろうか。
一体何を「持続化」させようとしたのか、どう見ても経産省の省益と「天下り先」の持続化としか思えない。
やはり、こんな時こそ政治の出番なのだが、その政治のトップが幸か不幸か、早稲田大学法学学術イ院の水島朝穂教授によるとこんな人間だという。
安倍首相は歴代首相に見られない特徴を持っている。それは「ネバーエンディング無責任」である。一見極めて明白な誤りでも決して認めない。これは天性かもしれない。父・安倍晋太郎元外相が「こいつはね、言い訳をさせたら天才的なんだよ」と語ったというのもうなづける。(週刊金曜日1282号より) |
そんな人物を総裁としている自民党の政治屋連中はもっと酷いのかもしれないが、最近話題になっている自民党議員がいる。
民間鉄道会社から税理士として独立し、麻生派所属ながら「日本の未来を考える勉強会」を立ち上げ、今年2月に議員連盟となり、会長に就任した「モノ言う永田町の変人」と言われる安藤裕議員。
「物言う永田町の変人」か。
— 串焼き (@dr_kusiyaki) June 2, 2020
安藤さんが変人扱いって事は、マトモだと称される人達って巷では…https://t.co/UtKb1faSMt
ようやく??????
— 本田 宏 (@honda_hiroshi) May 31, 2020
真水100兆円と消費税ゼロはれいわ新選組の山本太郎代表の主張と同じです。ツイッターでも「れいわに来い」と書き込まれています。党派が違っても経済政策を突き詰めれば同じ結論に達するのは自然なことでしょう。
コロナ禍こそ平成の経済対策に終止符を https://t.co/m47zxn4nl2
<安藤裕氏 コロナ禍こそ平成の経済対策に終止符を打つべき> 2020/06/02 日刊ゲンダイ ――真水100兆円の提言について党内議員の約2割、80人が同意しているそうですね。 ありがたく思っています。昨年の消費税増税前にも、むしろ減税すべきだとの提言にも、70人程度が賛同してくれました。積算根拠はコロナ危機により、年間GDPが20%喪失と想定しました。財源は全て新規国債の発行で賄う。緊急事態宣言が解除されても、売り上げが100%戻ってくるとは誰も思っていません。いつまで低空飛行が続くのか、分からない状況です。 ――既に実質GDPは2期連続の大幅マイナス。今年4~6月期は年率20%以上のマイナスと予想されています。 だから、政府には力強いメッセージを打ち出して欲しい。100兆円全額を使い切らなくてもいい。これだけの予算を準備し、全ての生活を守り抜く。廃業や倒産はさせない、得られたはずの利益は全額補償します。そう訴えれば国民も安心して自粛できる。政権が痛手を負った今こそ、なおさら強い決意を示すべきです。1次、2次補正と合わせて事業規模200兆円超。「空前絶後」「世界最大」と胸を張っても、「融資」中心の中身では効果は限定的です。 ■性風俗も含めた裏稼業まで「粗利補償」を ――提言の柱も補償ですね。「持続化給付金」の予算規模を現状の2.3兆円から50兆円への大幅拡充を主張しています。 2018年度に中小企業全体の税引き前純利益は約21兆円。岡三証券の試算によると、コロナ危機で仮に売上高が3割減れば27兆円の損失が出る。赤字27兆円から21兆円の黒字まで回復させるには、ほぼ50兆円が必要です。この予算を「粗利補償」に充てるのです。 ――粗利とは? 売上高から仕入れ原価を差し引いた額です。企業はそこから人件費、家賃、水道光熱費などの固定費を払い、法人税を納め、最後に借入金を返済する。与党内では人件費だ、家賃だ、と個別の支援策を議論していますが、極めて非効率。私は税理士ですから、手続きに手間暇がかかることが事業者にとって大きな負担となることは痛いほど分かります。しかも固定費の支援だけでは、借入金の返済までお金が回りません。どこかで必ず資金ショートが起こる。返済に支障を来す企業が続出すれば金融危機を招く。資金繰りに窮した企業が不動産や株を投げ売りしたら、深刻な資産デフレを引き起こす恐れもあります。 ――恐慌到来です。 回避には、国が損失を全て補償し、生産能力や雇用を維持するしかない。表稼業はもちろん、性風俗も含めた裏稼業まで、あらゆる社会の矛盾はあるけれど、そのままキープする。そうすれば終息後はV字回復し、コロナ後の世界で日本は存在感を発揮できます。これだけ大規模な対策を打てる国は世界を見渡しても、ごくわずかです。 ――どういうことですか。 条件はまず、国の経済的基盤がしっかりしていること。日本は先進国で生産能力があり、金融システムと法律も整備されています。あとは通貨の問題です。日本は自前の中央銀行があり、自国通貨建てで国債を発行できる。この条件を満たすのは他に米英両国と中国ぐらい。イギリスがEU離脱前から通貨を統合しなかったのは賢明でした。ドイツやフランスは財政規律を取り払って、特例的に巨額のコロナ対策を打ち出していますが、自国通貨で国債を刷れない以上、財政破綻の懸念は拭えません。 ――独仏両国はEU加盟国の経済回復に向け、融資ではなく、59兆円規模の補助金計画を発表。これを上回る財政出動が日本にできるのですか。 可能です。極めて有利な条件にあることを、日本政府が気づいていないだけです。国の借金は「悪」で将来にツケを残すな、と唱える財政規律派はいまだに多い。財務官僚をはじめ、政治家や学者、マスコミにも数多くいます。彼らが自動的に財政出動を拒み、非常時でも「平時の政策」から抜け出せないのです。 ――平成の時代から引きずっている構図です。 財務省ですら、自らHPで「先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と認めています。私が新規国債発行の「真水」にこだわるのも、国の借金は国民の資産だからです。分かりやすい例が一律10万円給付です。約13兆円の財源は全額国債。国の負債により、皆さんの懐に10万円の資産をお配りできるのです。今、財政支出を拡大しないと、企業も雇用も守れません。 ■倒産企業の技術は取り戻せない ――現実には上場企業のレナウンが経営破綻し今年の倒産は1万件超、休廃業は2.5万件との予測もあります。 企業が倒産・休廃業すれば培われた技術や伝統、文化も途絶え、回復は困難です。潰さなくてもよい会社を1社でも潰せば約560兆円の日本のGDPは維持できません。400兆円、300兆円と縮小すれば元に戻るのに途方もない時間がかかる。財政出動をためらう方が、よっぽど将来世代に禍根を残します。 ――「消費税ゼロ」への党幹部の反応は? 「消費税を上げるのには苦労した」と嘆く幹部が多いですね。しかし、昨年10~12月期のGDPは年率マイナス7.1%と衝撃的な落ち込みを記録。明らかに消費税増税の影響です。政府が強調した「万全の対策」は役に立たなかったと言わざるを得ません。それでも政府は今年2月まで「景気は緩やかに回復」との判断を維持した。「増税対策は間違っていた」とキチンと総括しないから、政権不信につながる。不要不急の検察庁法改正案があれだけ反対されたのも仕方ありません。 ――コロナ禍以前に日本経済の土台は崩れかけていた、と。 そうです。われわれが政権を取り戻した時の最初の目標はデフレ脱却でした。もう7年半も経つのに残念ながら実現できていません。どう考えても、この間の経済政策を見直す必要がある。 ■緊縮派主流の政治は全て誤り ――アベノミクスは失敗との認識ですか。 「始まっていない」と捉えています。金融緩和の第1の矢は打ち続けても、財政出動の第2の矢を放ったのは1年目だけ。2年目以降は緊縮財政に逆戻りし、その象徴が2度の消費税増税です。財政出動を続けていればデフレ脱却は達成できたはず。アベノミクスは原点に立ち返るべきです。 ――真水100兆円と消費税ゼロは、れいわ新選組の山本太郎代表の主張と同じです。ツイッターでも「れいわに来い」と書き込まれています。 党派が違っても経済政策を突き詰めれば、同じ結論に達するのは自然なことでしょう。 ――共産党の小池晃書記局長も提言に賛同しています。実現に向け与野党の垣根を越えた部分的な共闘は考えませんか。 何らかの協力はできるかもしれませんが、共闘は考えていません。日本の政策を変えるには自民党の政策を変えるのが一番早いと思っていますので。私は、緊縮派が主流だった平成の政治を終わらせたい。構造改革の加速で皆、散々痛い目に遭ったでしょう。緊縮財政で通貨供給量が増えないから、奪い合いになる。勝ち組はホンの一握りで大半は貧困化。1億総中流の昭和の成功が破壊されてしまいました。 ――ムダ撲滅の事業仕分け、公共事業・公務員削減などを掲げた民主党政権も緊縮路線でした。 与野党とも緊縮派だった平成の政策は大部分が間違っていたのです。維新なんて大阪で医療機関のリストラを徹底した結果、コロナ禍で医療崩壊しかけました。敵をつくって叩いて喝采を浴びる手法は非常に危うい。 ――維新こそ緊縮政党の極みですからね。 この20年、世界の経済成長の度合いで見れば日本は完全な劣等生。コロナは産業の空洞化やインバウンド頼みなど、やみくもなグローバル化の弊害も可視化させました。今の日本の対立軸は「右か左か」ではなく、「緊縮か反緊縮か」。令和の政治は奪い合いから、皆が豊かになる経済政策に変えなくてはいけません。 |
税理士らしいそれなりなことを主張しているのだが、「実現に向け与野党の垣根を越えた部分的な共闘は考えませんか。」との質問に対して、「何らかの協力はできるかもしれませんが、共闘は考えていません。日本の政策を変えるには自民党の政策を変えるのが一番早いと思っていますので。私は、緊縮派が主流だった平成の政治を終わらせたい」と大きな政府を目指しているらしい。
しかし今まで自民党の政策を変えることにより日本の政策を変えるということがあっただろうか。
それが出来ないとみて自民党を飛び出した連中は過去には存在するが、それ以上ではなかった。
あくまでも強力な総裁候補を有する「反主流派」が存在した状態でなければ、自民党の自浄作用は期待できないことは言うまでもない、とオジサンは思う。