ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績 [2月7日(金)~9日(日)]

2014-02-11 23:57:52 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 2つ前に<期待以上だったポン・ジュノ監督「スノーピアサー」を観て考えたこと。(ネタバレなし)>というちょっとだけネタバレありの記事をアップしました。思うに私ヌルボ、ポン・ジュノ監督作品についてはフツーの映画ファンより明らかに評価が高いですね。

 1月14日の記事で紹介した「キネマ旬報」の作品賞ベスト・テン[外国映画]を再掲します。詳細は→コチラで見ることができます。。
①愛、アムール ②ゼロ・グラビティ ③ハンナ・アーレント ④セデック・バレ ⑤三姉妹~雲南の子 ⑥ホーリー・モーターズ ⑦ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日 ⑧ザ・マスター ⑨熱波 ⑩もうひとりの息子 <次点>嘆きのピエタ

 「キネマ旬報 2月下旬決算特別号」にその採点表が載っていて、自分のベスト10(→コチラ)と比較してみるのも個人的には興味深いところです。
 で、今回うれしかったのは、佐藤忠男先生と①セデック・バレ ②少女は自転車にのって が一致していたこと。一致していたことだけでなく、それが佐藤忠男先生であることがとくにうれしいところ。「④ハンナ・アーレント」と「⑥もうひとりの息子」もベスト10に入れているので、4/10が重なっています。それより多い5/10重なっているのが森卓也さんで、これまた結構。彼は①少女は自転車にのって ②ハンナ・アーレント ③もうひとりの息子 ⑥嘆きのピエタ ⑧セデック・バレ でした。
 なお、60人以上いる審査員(外国映画部門)の約3分の1はヌルボのベスト10と全然重なる作品ナシでした。本当に、映画の評価というのは専門家の間でも大きく分かれるものです。
 韓国映画を得点&順位の上位から拾っていくと、「嘆きのピエタ」(67点・11位)・「3人のアンヌ」(33点・31位)・「悪いやつら」(20点・49位)・「10人の泥棒たち」(6点・111位)・「王になった男」(4点・126位)・「建築学概論」(4点・126位)・で、2012より明らかに低調。私ヌルボの感触も同じでした。

 この「キネ旬特別号」掲載の今年の外国映画の上映予定作のリストから、韓国映画をみてみると、けっこうたくさんあって、これはとても紹介しきれない・・・と思ったら、<アジア映画巡礼>の2月6日の記事「『キネ旬』情報<その2>2014年アジア映画公開予定作」(→コチラ)で韓国映画の上映予定21作品だけでなく、他のアジア映画についてもバッチリ掲載してくださっています。ホントにありがとうございます!

 その韓国映画中、注目は「チスル」(3月下旬)、「観相」(6月)、ホン・サンス監督の「誰の娘でもないヘウォン」「私たちのソニ」(ともに夏)、第26回東京国際映画祭でコンペティション観客賞を受賞した「レッド ・ファミリー」(秋)、それから「ソウォン/願い」といったところか。
 済州島四・三事件を描いた「チスル」については、すでに公式サイト(→コチラ)ができています。

 今年の<大阪アジアン映画祭>は3月7~16日。公式サイトは→コチラ
 韓国映画は、人気俳優ハ・ジョンウ初監督作の必笑スクリューボール・コメディ「ローラーコースター」と、チョ・ウンソン監督の恋愛コメディ「サンシャイン・ラブ」の2作品だけで、韓国映画ファンにはちょっとさみしい。今回は台湾映画が充実。「日本統治下の台湾で撮られた貴重な短編記録映画も上映」とのことで、その他のアジア映画も含めてここでしか視られないような作品も多く、私ヌルボ、行けるものなら行きたいところ。

 先週も書きましたが、ユーロスペースで2月15~21日の<死刑映画週間>。詳細は→コチラ。私ヌルボ、韓国映画の「執行者」(2009)も含めいくつか観るつもりです。

           ★★★ Daumの人気順位(2月11日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①もうひとつの約束(韓国)  9.7(1209)
②弁護人(韓国)  9.5(29943)
③イングリッシュ、ヴィングリッシュ  9.1(54)
④あまり者たちのヒッチハイキング(韓国)  9.1(93)
⑤怪しい彼女(韓国)  9.1(2225)
⑥アデル、ブルーは熱い色  8.9(89)
⑦あらしのよるに(日本)  8.8(132)
⑧ジャスティン  8.8(45)
⑨ブラック・ゴスペル(韓・米)  8.7(99)
⑩私はロランス  8.6(25)

 大きく入れ替わって、新登場は①③⑦の3作品。
 ①「もうひとつの約束」が「弁護人」の上にきました。サムスン電子で働いていて白血病で亡くなったファン・ユミさんの実話を映画化した作品です。労災の認定を得るため被害者の家族が人々の支援を受け裁判を通じて告発するという内容は、今も韓国では<運動圏>の系譜をひく映画が力を持っているということでしょう。この映画の上映に際しては、上映館の確保をめぐっていろいろせめぎあいがあったようで、その件については<レイバーネット>の記事→123を参照のこと。この映画の原題は「또 하나의 약속」です。・・・しかし、日本でもたとえばブラック企業を糾弾する映画とか作れないものかな?
 ③「イングリッシュ、ヴィングリッシュ」(仮題)は、昨年9月の<あいち国際女性映画祭2013>で上映された監督も主人公も女性のインド映画です。ごくふつうのインドの主婦シャシの悩みは英語ができないこと。ある日ニューヨークに住む姉から姪の結婚式の手伝いを頼まれ、1人でニューヨークへ。しかしコーヒーも頼めず、意地悪な店員の態度にも悲しい思いをさせられてしまう。そんな彼女の目に飛び込んできたのは「4週間で英語が話せる」という英会話学校の広告。彼女は姉たちにも内緒で学校に通うことに・・・。教室には、英語が話せないいろんな生徒たちがいて、仲間とともに順調に英語を学んでいき、そして最終課題はスピーチ。彼女は何を話すのだろうか・・・。この映画、香港でも人気でロングランだったようですよ。またムンバイ在住の方(日本人)が→コチラのブログでとても深いコメントを書いていらっしゃいます。「インドの都市部で「英語を話せない人間」というのはイコール「高等教育を受けていない人間」と見なされる」とか。そんな「社会的に評価される機会のない家庭の主婦が自分の価値を見いだすために苦心している点が非常に共感できる」とのことです。うーむ、これは観てみたい!と思ったら、幸い今夏の日本公開が決定(タイトル未定)したとのことです。韓国題は「굿모닝 맨하탄(グッドモーニング、マンハッタン」です。
 ⑦「あらしのよるに」は日本では2005年公開。そんな前だったか。韓国題は「가부와 메이 이야기(カブとメイの物語)」です。
 なお、⑨「ブラック・ゴスペル」は11月19日の記事で紹介しました。ソウルミュージックを学び、そして現地の人たちとにコンサートを開くというミッションの下に本場ニューヨークのハーレムへと向かった男2人と女1人の仲間のドタバタ音楽旅行を描いた韓・米合作のドキュメンタリーです。

     【専門家による順位】

①インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌  8.8(7)
②ゼロ・グラビティ  8.2(5)
③アデル、ブルーは熱い色  7.8(5)
④風景(韓国)  7.7(4)
⑤そして父になる(日本)  7.6(6)
⑤ある過去の行方  7.6(6)
⑦あまり者たちのヒッチハイキング(韓国)  7.3(3)
⑧弁護人(韓国)  7.2(10)
⑨マイ・プレイス(韓国)  7.1(6)
⑩ウルフ・オブ・ウォールストリート  7.0(6)

 こちらも3作品が入れ替わりましたが、新登場は⑨「マイ・プレイス」だけです。
昨年の全州国際映画祭でも上映されたドキュメンタリーです。カナダへ移民した韓国人の一家=パク・ムンチル監督自身の家族が韓国に帰国してからの姿を描いた物語。とくに監督の妹は韓国になじめない上、シングルマザーになったことから父親との対立が深まるのだが、赤ちゃんの誕生と成長にともない克服されていく。また監督は、それまでの仕事を辞め、映画の道を選ぶ。そんな無数の選択の中で、家族たちは葛藤しつつも「私の席(マイ・プレイス)」を見つけるために生きてきた、その記録です。原題は「마이 플레이스」。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[2月7日(金)~9日(日)] ★★★

         「アナと雪の女王」が再逆転して1位に

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・アナと雪の女王・・・・・・・・・・・・・・1/16 ・・・・・・・・・・1,170,483 ・・・・・・・7,793,158・・・・・・・62,307・・・・・・・・939
2(1)・・怪しい彼女(韓国) ・・・・・・・・・・・・1/22 ・・・・・・・・・・1,042,398 ・・・・・・・5,749,800・・・・・・・41,773・・・・・・・・768
3(3)・・男が愛する時(韓国)・・・・・・・・・・1/22 ・・・・・・・・・・・・212,021 ・・・・・・・1,755,152・・・・・・・12,904・・・・・・・・404
4(新)・・アイ、フランケンシュタイン ・・・・2/06 ・・・・・・・・・・・・186,870 ・・・・・・・・・230,885・・・・・・・・1,693・・・・・・・・376
5(33)・・もうひとつの約束(韓国)・・・・・・2/06・・・・・・・・・・・・・139,120 ・・・・・・・・・175,589・・・・・・・・1,274・・・・・・・・192
6(新)・・レゴ・ムービー ・・・・・・・・・・・・・・2/06 ・・・・・・・・・・・・106,126 ・・・・・・・・・113,423・・・・・・・・・・783・・・・・・・・317
7(7)・・ナット・ジョブ ・・・・・・・・・・・・・・・・・1/29 ・・・・・・・・・・・・・94,362 ・・・・・・・・・433,280・・・・・・・・3,016・・・・・・・・329
        :ピーナツ泥棒たち(韓・カナダ・米)
8(5)・・弁護人(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・12/18・・・・・・・・・・・・・・75,094 ・・・・・・11,311,753・・・・・・・82,446・・・・・・・・302
9(4)・・血沸く青春(韓国) ・・・・・・・・・・・・1/22・・・・・・・・・・・・・・61,314 ・・・・・・・1,646,415・・・・・・・11,482・・・・・・・・289
10(6)・・朝鮮美女三銃士(韓国) ・・・・・・1/29 ・・・・・・・・・・・・・17,766 ・・・・・・・・・473,332・・・・・・・・3,422・・・・・・・・196
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 1・2位が今回もハイレベルの争いの結果、「アナと雪の女王」が「怪しい彼女」を再逆転。累積でも800万人の大台は確実に超えますね。「怪しい彼女」も600万人に迫っています。
 今回の新登場は4・5・6位の3作品です。
 4位「アイ、フランケンシュタイン」は、200年前にフランケンシュタイン博士によって生み出され、その名を引き継いだ人造人間アダム・フランケンシュタイン(アーロン・エッカート)が、不死者の一族同士の長年の戦争に終止符を打つため、たった1人で戦うというという物語。人造人間といってもブキミ系ではなく、鍛えあげられた筋肉が魅力的!みたいです。日本公開は未定のようです。韓国題は「프랑켄슈타인:불멸의 영웅(フランケンシュタイン:不滅の英雄)」。
 5位「もうひとつの約束」は上述しました。こうした映画がこの順位までくるとは、組合等の組織の力だけでもなさそうです。
 6位「レゴ・ムービー」は、アメリカ・オーストラリア合作の3DCGアニメ。レゴとは、あのプラスチック製の組み立てブロック。平凡な男のエメットはレゴの世界を救う特別な存在であると誤解され、平和なレゴの世界を壊そうとするおしごと大王と闘うことになる・・・。予告編(→コチラ)
を見たら、たしかにレゴの世界だ・・・。韓国題は「레고 무비」。日本公開は3月21日です。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・インサイド・ルーウィン・デイヴィス・・・・1/29 ・・・・・・・・・・・・16,235 ・・・・・・・・・・・・・69,408 ・・・・・・・・・542・・・・・・・・・60
             名もなき男の歌
2(3)・・アデル、ブルーは熱い色・・・・・・・・・・・1/16 ・・・・・・・・・・・・・3,077・・・・・・・・・・・・・・42,445・・・・・・・・・・325・・・・・・・・・29
3(新)・・ドリーマーズ・・・・・・・・・・・・・・・2005/3/25 ・・・・・・・・・・・・・2,281・・・・・・・・・・・・・・31,000・・・・・・・・・・207・・・・・・・・・14
4(2)・・そして父になる(日本)・・・・・・・・・・・・・12/19 ・・・・・・・・・・・・・1,968 ・・・・・・・・・・・・113,997・・・・・・・・・・864・・・・・・・・・15
5(新)・・熱いトタン屋根の猫・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・680・・・・・・・・・・・・・・・4,729 ・・・・・・・・・・・・9・・・・・・・・・・1

 3・5位が新登場です。
 3位「ドリーマーズ」は2003年のベルトルッチ監督作品の再上映です。韓国題は「몽상가들(夢想家たち)」。
 5位「熱いトタン屋根の猫」は、エリザベス・テイラー、ポール・ニューマン等が出演した1858年のアメリカ映画の再上映。韓国題は「뜨거운 양철 지붕 위의 고양이」です。(トタンは「양철(洋鉄)」というのか。)
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北朝鮮の地獄のような強制収容所から脱出したシン・ドンヒョクさんの話を聞きに行く

2014-02-11 11:10:49 | 北朝鮮のもろもろ
 1月28日(火)の夜(18:30~19:30)、北朝鮮の強制収容所から脱出した申東赫(シン・ドンヒョク)さんの話を聞くという催しに行ってきました。会場は参議院議員会館です。

 北朝鮮の強制収容所といっても<革命化区域><完全統制区域>の2種類あって、前者は一定期間を経て審査が通れば(ワイロを効かせれば)出所できるのですが、後者は死ぬまで収容される終身収容所です。
 申東赫さんは、その後者の収容所から脱出した唯一の人物です。それも収容所で生まれて、脱出した23歳までの地獄のような生活を経て・・・。
 ※その場所は平安南道价川(ケチョン)の第14号管理所。北朝鮮の強制収容所については、ウィキペディア(→コチラ)にかなり詳しく記されています。

 私ヌルボ、以前彼が書いた「収容所に生まれた僕は愛を知らない」というとても衝撃的な本を読みました。彼とこの本については、過去記事(→コチラや、→コチラ)で書いたことがありますが、彼の想像を絶するような体験は、次の記事に詳細に記されています。

▶<e-Story Post> 「北朝鮮の強制収容所で生まれ育った脱北者が明かす、地獄のような牢獄生活」
▶三浦小太郎(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会代表) 「政治犯収容所で政治犯として生まれた私 (シン・ドンヒョク)」

 2008年以来2度目という彼の今回の来日は、3月1日から渋谷ユーロスペース等で公開されるフランスのドキュメンタリー映画「北朝鮮強制収容所に生まれて」の紹介・アピールが主目的ですが、25日~29日(かな?)の間明治大学での試写会&トーク等の催しのほか、多くのマスコミの取材があったりという過密スケジュールで、28日夜は相当お疲れのようすでした。

 で、やっとその28日夜の催しの報告です。
 最初の有田芳生参議院議員や北朝鮮難民救援基金の加藤博さんの話も含めて1時間という限られた時間で、申東赫さん自身の話は正味15分くらい。あまり具体的な話はなく、残り15分くらいが質問にあてられました。

 加藤博さんの話では、まず上述のような政治犯収容所の概要や、12号・13号・26号の各管理所(収容所)が秘密が露見したため閉鎖されたこと、咸鏡北道の11号管理所は「金日成の別荘を建てるため閉鎖されたこと等が説明されました。
 管理所はとても広大で、行政区画でいえば道の下の郡が丸々相当するほどとのこと。
 ※後で調べたら、咸鏡北道化成(ファソン)郡の第16号収容所は面積約560km²。ソウル市(605.2km²)や東京23区の面積(621km²)にも迫るほどの広さで、そこに約2万人が収容されているとみられているそうです。(2011年時点)
 14号(价川)や15号(耀徳.ヨドク)等の管理所は山奥の谷間に立地していて、そのさらに奥にはダムがある。そして北朝鮮の体制崩壊というような危機の際は、ダムを破壊して管理所全体を水没させ、証拠を隠滅をするということです。(この話は、一昨年12月の小川晴久先生の著書「北朝鮮いまだ存在する北朝鮮強制収容所」の出版記念講演会の時に<NO FENCE>事務局長の宋允復(ソン・ユンボク)さんから初めて聞きました。)
 また、北朝鮮の人権侵害状況を調べる国連調査委員会は、昨年申東赫さんや安明哲さん等から聞いた証言をもとに今年3月に報告書を提出し、10月に総会にかけられるとのことでした。(この件についての関連情報は→コチラ。)

 申東赫さんは、今回の来日で横田さん夫妻と会って、日本にも拉致された人が大勢いることを知ったと語りました。韓国の拉致被害者家族に対して韓国政府は無関心で、支援もないことと比べると、日本の政府や世論は国際社会にアピールしていますが、そのような努力ににもかかわらず解決されないまま迷路にはまっているようなので、もっと強い力をかけていかなければ・・・とも。
 「強制収容所の収容者も拉致被害者も、北朝鮮の独裁者によって受けた苦痛はまったく同じなので、思いを共有することができる」という彼の言葉には、私ヌルボももちろん深く共感しました。
 ただ、「北朝鮮の政権は、対話を通じて問題を解決できるようなものではありません。国際社会は無駄に時間を浪費しているようで、いらだちを覚えます」という発言については、たとえば韓国の進歩陣営や日本の人権派の中では「あくまでも対話重視」という人が多いと思います。(私ヌルボも人権派のはずなんですけど・・・。)

 集会参加者は主催者・関係者等含めて約40人。その会場からの質問で個人的にウンザリしたのは、「収容所でどんな拷問を受けたのですか?」とか「どのようにして脱出したのですか?」というような、本を読まなくても事前にちょっとネット検索をすればわかるような基本事項を質問した人がいたこと。(どちらの質問も同じ人。) それまでの取材の新聞記者の中にもそんな人がいたそうですけど・・・。またその中で「疲れさせるような質問」(母や兄の処刑に関する質問だったようです。)をする人もいたようです。
 ドキュメンタリー映画や、申東赫さんの本の韓国での反応は?・・・という質問の答えは、案の定一言でいえば「無関心」といったものでした。
 今回の映画は韓国では上映されず、前記の著書「収容所に生まれた僕は愛を知らない」日本では1万部売れたそうですが、韓国では3000部印刷して売れたのがわずか500部だったとは!
 その後2012年にアメリカ人ジャーナリストのブレイン・ハーデン氏が彼のインタビューをもとにを刊行した「ESCAPE FROM CAMP 14」(もちろん英語)は25ヵ国で読まれ、大きな反響があって、表彰されたりもしたそうです。
 ※昨年5月の<VOA>の記事(→コチラ.韓国語)によると、スイス・ジュネーブにある国際国連監視機構のUN WATCHから<2013年MORAL COURAGE AWARD>(モラルの勇気賞)を受賞しています。

 「将来の希望は?」という質問に対して、彼の答えは「収容所の地も自然だけは美しかった。星も美しかった。その場所で静かに暮らしたい」というもの。また自ら「(血液型A型のとおりに?)もともと用心深く気が小さい」と語る性格のとおりに、穏やかな感じの、ふつうにどこでもよく見かけるような青年で、私ヌルボとしてはなんとなく少し救われたような気持ちになりました。
 ※「強制収容所で生まれたシン・ドンヒョクさん、自由や家族という言葉は最近まで知らなかった」と題した<シネマトゥデイ>の1月27日の記事(→コチラ)でも同様のことが記されていました。また次のようなことも・・・。

 脱走後、もっとも衝撃を受けたのは、収容所の外の北朝鮮の普通の人たちの暮らしを見たときだったという。「収容所のすぐ外に、好きなものを食べ自由に語り合い、警察に恐怖を感じない世界があった、ということが信じられなかった」とシンさん。

 1月28日の集会については以上ですが、その後「ESCAPE FROM CAMP 14」の日本語訳「14号管理所からの脱出」を読んでみました。
 管理所での体験の部分は「収容所に生まれた僕は愛を知らない」とほぼ同じですが、母と兄の処刑に至る経緯については、ハーデン氏が彼から直接聞いた驚くべき「新事実」が書かれています。
 また、とくにこの本で興味深いのは、収容所を脱出した後がいろいろ書かれていること。北朝鮮領内から中国への脱出、中国での生活、偶然に上海領事館を経て韓国へ、韓国社会での違和感と適応の困難、アメリカでの生活まで。
 すでに2万人を超える韓国内の脱北者が北で受けてきた教育や、そこでの常識といったものがほとんど南では役に立たないどころか障害になり、またそれが感情面や人間関係においても問題を生じることも具体例があげられています。まして彼の場合は北の中でも「特殊」な所だからなおさらです。

     
  【500部しか売れなかったという申東赫の韓国版の著書「世の中の外に出て来る 北韓政治犯収容所 完全統制区域】

※脱出後して韓国に来てからの彼について、韓国紙「中央日報」(日本語版)に詳しい記事がありました。
 →北朝鮮収容所、肉体的拷問より残酷な「表彰結婚」(2012年2月29日)
 →“北朝鮮の政治収容所生まれ”シン・ドンヒョク氏の半生を綴った本が25カ国で出版(2013年5月3日)

※<残虐な人権侵害-決して見逃さない>というブログに、韓国での状況や国連の対応等が記されています。
 → “北朝鮮の政治収容所生まれ”シン・ドンヒョク氏が嘆く 韓国での北朝鮮人権問題の関心の低さ(2013年5月4日)
 →北朝鮮の人権問題の突破口になるか “北朝鮮の政治収容所生まれ”シン・ドンヒョク氏が期待する国連事実調査委員会(2013年5月15日)
 →当事国である韓国の北朝鮮人権問題の世論の関心の低さに国連北朝鮮人権委員会委員長が怒りを表す(2013年8月27日)

※加藤博さんのテーブル上に「北韓人権白書2010」の日本語版が置かれていました。
 「北韓人権白書」は韓国の統一研究院が毎年出しているもので、最新版(韓国語.2013年版)は→コチラで直接ダウンロードできます。英語版は→コチラから。
 ただ、日本語版は2010年版以降は出ていません。しかし、大きくは変わっていないようです。
 この「北韓人権白書2010」は、<北朝鮮難民救援基金>(→公式サイト)中の→コチラのページ(の右上)
からPDFファイルでダウンロードすることができます。(E-bookとして読むこともできる。)
    
        【「北韓人権白書2010」(日本語版)の目次】

    
  【「北韓人権白書2010」(日本語版)中の公開処刑に関する記事。あまりのひどさに言葉を失う。】

※2月4日(火)「産経新聞」<きょうの人>に、申東赫さんがとりあげられていました。→コチラ

☆<アムネスティ>のサイトから ・映画「北朝鮮強制収容所に生まれて」の紹介記事は→コチラ
 ・「朝鮮民主主義人民共和国で、不当に拘禁されている人びとを救う!」ハガキ書きアクション等については→コチラ
 ・「朝鮮民主主義人民共和国:衛星画像が語る収容所の抑圧」→コチラ
 ・「衛星画像が示す抑圧施設の拡大(2013年12月.アムネスティ・インターナショナル報告書)」(PDF)→コチラ
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