ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績 [1月31日(金)~2月2日(日)]

2014-02-04 23:54:23 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 今夜のシネマ・ベティ(「鉄くず拾いの物語」)は私ヌルボを入れて観客2人。昨晩の109シネマズMM横浜(「新しき世界」)は8人。どちらも夜遅い回ではありましたが・・・。

 その今年最初の韓国映画「新しき世界」は見応えがありました。いくつかのブログ記事でも同様のコメントがありましたが、ファン・ジョンミンがいい味出してましたねー。チェ・ミンシクは「酔画仙」(2002)、「悪魔を見た」(2010)等々を思い起こしてみると、だんだん太ってきてるんでないの? 変わらないのはイ・ジョンジェ。ドラマ「砂時計」以来ずっと表情を変えないキャラクターばかりにような・・・。

 先週「近日中にをアップする予定」と書いたシン・ドンヒョクさんの話を聞く催しの報告記事はまだ書いてません。
 その代わり、ユーロスペースのサイトに3月公開予定の「北朝鮮強制収容所に生まれて」の詳しい説明があったのでコピベしておきます。

 世界中の映画祭で衝撃的な内容が大きな話題を呼んだドキュメンタリー!!
 北朝鮮の政治犯強制収容所第14号管理所で、政治犯の両親の“表彰結婚”の結果として生を受け、生まれながらの政治犯として育った申東赫(シン・ドンヒョク)。「北朝鮮強制収容所に生まれて」は、2005年、収容所から脱出して現在は韓国に暮らすシン・ドンヒョクの想像を絶する半生と、北朝鮮強制収容所の実態を、本人へのインタビューをもとにドイツ人監督が描きだしたドキュメンタリーです。映画は脱北した元北朝鮮の秘密警察員オ・ヨンナムと、虐待、拷問、処刑を行っていたクォン・ヒョクにも取材。衝撃的な内容に、世界の映画人が驚きの声を上げた作品です。
[14号管理所について]
 14号管理所は“完全統制区域”で、1つの都市ほどの大きさを持ち、500㎢に4万人が収容されている。首都平壌の80キロ北、平安南道の价川(ケチョン)市外東(ウェドン)里に位置するこの管理所の中には、炭鉱、セメント工場、セラミックやゴムの加工場、縫製工場のほか、牧場もある。食事は粗末だ。1日につき、大人700グラム、子供300グラムのトウモロコシと、ごく少量の白菜の塩漬けだけである。最厳重警備の“完全統制区域”では、収容された人々は決して釈放されない。死ぬまでそこに閉じ込められる。


 また、これもユーロスペースでの上映で、同じくアムネスティにも関係あるのが2月15~21日の<死刑映画週間>。詳細は→コチラ。韓国映画の「執行者」(2009)も上映されます。

           ★★★ Daumの人気順位(2月4日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①弁護人(韓国)  9.5(29804)
②八月のクリスマス(韓国)  9.5(546)
③あまり者たちのヒッチハイキング(韓国)  9.2(82)
④アンニョン?! オーケストラ(韓国)  9.1(31)
⑤怪しい彼女(韓国)  9.1(1816)
⑥ワイルド・ビル  9.1(79)
⑦スターリングラード  9.0(22)
⑧ラブ・アクチュアリー  9.0(624)
⑨アデル、ブルーは熱い色  9.0(79)
⑩サンダーと魔法の屋敷  8.9(56)

 新登場は⑦「スターリングラード」だけ。1993年の独・米合作映画の再上映です。韓国題は「스탈린그라드-최후의 전투(スターリングラード-最後の戦闘-)」です。

     【専門家による順位】

①インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌  8.8(7)
②楽園の瑕  8.5(2)
③ゼロ・グラビティ  8.2(5)
④アデル、ブルーは熱い色  7.8(5)
⑤グロリアの青春  7.7(4)
⑤風景(韓国)  7.7(4)
⑦そして父になる(日本)  7.6(6)
⑦ある過去の行方  7.6(6)
⑨イントゥギ(韓国)  7.6(3)
⑩あまり者たちのヒッチハイキング(韓国)  7.3(3)

 ①「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」だけが新登場です。コーエン兄弟の2013年カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞作。デイブ・バン・ロンクの生涯を下敷きにして、1960年代のニューヨーク・グリニッチヴィレッジを舞台に、売れないフォークシンガー・ルーウィン(オスカー・アイザック)の1週間をユーモラスに描いた作品。キャリー・マリガンや、「ソーシャル・ネットワーク」で注目を集めたジャスティン・ティンバーレイクが共演。韓国題は「인사이드 르윈(インサイド・ルーウィン)。日本公開は初夏。これは早く観たいな。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[1月31日(金)~2月2日(日)] ★★★

         「怪しい彼女」が驚異の観客増で「アナと雪の女王」を逆転し、1位に

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・怪しい彼女(韓国) ・・・・・・・・・・・・1/22 ・・・・・・・・・・1,755,157 ・・・・・・・3,920,438・・・・・・・28,654・・・・・・1,022
2(1)・・アナと雪の女王・・・・・・・・・・・・・・1/16 ・・・・・・・・・・1,642,573 ・・・・・・・6,004,146・・・・・・・47,713 ・・・・・・・969
3(4)・・男が愛する時(韓国)・・・・・・・・・・1/22 ・・・・・・・・・・・・341,911 ・・・・・・・1,326,375・・・・・・・・9,786・・・・・・・・470
4(3)・・血沸く青春(韓国) ・・・・・・・・・・・・1/22 ・・・・・・・・・・・・280,944 ・・・・・・・1,501,404・・・・・・・10,471・・・・・・・・422
5(5)・・弁護人(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・12/18 ・・・・・・・・・・・・278,912 ・・・・・・11,145,710・・・・・・・81,239・・・・・・・・408
6(17)・・朝鮮美女三銃士(韓国) ・・・・・・1/29・・・・・・・・・・・・262,071 ・・・・・・・・・402,269・・・・・・・・2,927・・・・・・・・380
7(31)・・ナット・ジョブ・・・・・・・・・・・・・・・・1/29 ・・・・・・・・・・・・215,976 ・・・・・・・・・304,401・・・・・・・・2,148・・・・・・・・372
        :ピーナツ泥棒たち(韓・カナダ・米)
8(57)・・ポリス・ストーリー2013・・・・・・・1/29 ・・・・・・・・・・・・・80,620・・・・・・・・・・121,751 ・・・・・・・・・909・・・・・・・・250
9(99)・・インサイド・ルーウィン・デイヴィス・・1/29・・・・・・・・・・22,235・・・・・・・・・・・38,260 ・・・・・・・・・301・・・・・・・・・70
         名もなき男の歌
10(新)・・ダイナソー・キングダム~DINOTASIA~・・1/29・・・14,394・・・・・・・・・・・20,411 ・・・・・・・・・144・・・・・・・・128
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 旧正月の連休で、とくに1・2位が大幅観客増。「アナと雪の女王」は40万人先週から増やしましたが、「怪しい彼女」は倍増以上の驚異的数字で逆転1位。3・4位も逆転しましたが、5位までは新登場なし。「弁護人」は「シルミド」を抜いて韓国映画歴代8位に達しました。
 一方、6~10位は全部新登場です。
 6位「朝鮮美女三銃士」は娯楽アクション時代劇。女性3人の賞金稼ぎの面子はリーダーの万能剣客ジノク(ハ・ジウォン)、主婦剣客ホンダン(カン・イェウォン)、言葉よりこぶしが先に出るタフ剣客カビ(ソン・ガイン)。消えた十字鏡を探してほしいとの王の密命を受けた彼女たち三銃士の手に懸賞金ではなく朝鮮の運命がかかっている! <韓国映画スタッフブログ>によると「チャーリーズ・エンジェルの韓国版として企画されたものだと思います」とのこと。その記事中の予告編を見るとハチャメチャでやりたい放題。振袖の日本娘?が川に落ちちゃったり、ヘソ出しねーちゃんたちの踊りがあるかと思えばハ・ジウォンがハンググライダーというより(犬じゃない方の)リリエンタールのような飛行機で空中を飛んでたり・・・。いったい何なんだ!? 原題は「조선미녀삼총사」です。
 7位「ナット・ジョブ:ピーナツ泥棒たち」は、「中央日報」の記事によると朴槿恵大統領が1月29日ソウルの大韓劇場で児童・青少年160人余りと一緒に観た映画だそうですよ。韓国の資本と技術で制作されたコメディ・アニメで、監督はカナダのレペニオティス監督で、1月17日に北米全域で公開され、韓国映画としては過去最高の興行記録を更新しているとか・・・。公園から追放されたずる賢いリスのサーリー、腹ペコでさまようが、ナッツを売っている店を見つけ、商品の強奪を企てて仲間をかき集めるが・・・。韓国題は「넛잡: 땅콩 도둑들」です。
 8位「ポリス・ストーリー2013」はジャッキー・チェンの人気シリーズ最新作。ジャッキーはヘアスタイルを角刈りにして、シリーズでは初めて香港ではなく中国の警官を演じるとのこと。韓国題は今年公開ということで「폴리스 스토리 2014」に変えています。日本公開は初夏。
 9位「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」については前述の通り。
 10位「ダイナソー・キングダム~DINOTASIA~」は2012年のアメリカのアニメ・アドベンチャー。2億5千万年前の二畳紀→1億5千万年前のジュラ期→7千万年前の白亜紀後期の恐竜たちの生き残りを賭けた闘争や、家族愛(?)を雄大に描く。日本では劇場未公開ですが日本語版DVDが出ているようです。韓国題は「디노타샤:공룡대탐험(ディノタシャ:恐竜大探検)」。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(29)・・インサイド・ルーウィン・デイヴィス・・・1/29 ・・・・・・・・・・・・22,235 ・・・・・・・・・・・・・38,260 ・・・・・・・・・301・・・・・・・・・70
             名もなき男の歌
2(2)・・そして父になる(日本) ・・・・・・・・・・・・12/19 ・・・・・・・・・・・・・5,194 ・・・・・・・・・・・・110,316・・・・・・・・・・836・・・・・・・・・31
3(1)・・アデル、ブルーは熱い色・・・・・・・・・・・1/16 ・・・・・・・・・・・・・4,858・・・・・・・・・・・・・・33,276・・・・・・・・・・261・・・・・・・・・38
4(新)・・ニュー・シネマ・パラダイス・・・1990/7/07 ・・・・・・・・・・・・・2,122・・・・・・・・・・・・・・29,154・・・・・・・・・・202・・・・・・・・・・1
5(3)・・オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ・・1/09 ・・・・・・・・・・・・1,165・・・・・・・・・・・・・・31,194・・・・・・・・・・236・・・・・・・・・13

 1・4位が新登場です。
 1位「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」は上述しました。
 4位「ニュー・シネマ・パラダイス」はいうまでもなくトルナトーレ監督の名作の再上映です。この作品の韓国題は「시네마 천국(シネマ天国)」です。
 2位の「そして父になる」、なかなか息長く健闘しています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辻原登「韃靼の馬」  歴史ロマンを楽しみつつ、朝鮮通信使等について学ぶ

2014-02-04 18:11:14 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 辻原登「韃靼の馬」を読了しました。

 この小説の時代設定は18世紀初め。将軍の侍講として幕政を担当していた新井白石が<正徳の治>とよばれる幕政の改革を進めていた時期です。

       
      【600ページを超える大部ですが、読み始めたら一気!】

 主人公は対馬藩士の青年・阿比留克人。雨森芳洲の薫陶を受けて朝鮮語に通じている彼は、朝鮮の倭館にあって、朝鮮側の役人等と直接交渉にあたる任務を担当しています。また彼は薩南示現流の使い手として武芸にも秀でています。

 物語は大きく第一部と第二部に分かれています。
 第一部では、1711年(正徳元年)朝鮮通信使を迎え入れ、その一行の対馬を経て江戸まで往復する間の物語で、幕府と朝鮮、そして対馬藩のせめぎ合いと、その中での阿比留克人の活躍が描かれています。

 読んでいて思うのは、この作家が史実をディテールまで詳しく書き込むとともに、そこに巧みにフィクションを織り交ぜてのびやかにストーリーを展開しているということ。
 日本史の教科書にも書かれている<朝鮮使節の待遇簡素化>という新井白石の基本施策とその背景もきちんと説明されているし、また朝鮮側からの将軍の呼称を<日本大君>というから<日本国王>に改めさせるという史実については、そのまま物語のひとつの動因にもなっています。
 読み進むうち、書名がなんで「韃靼の馬」なの?という疑問が起こりました。
 それが解けるのはやっと第二部に入ってからです。第一部から十数年後。将軍吉宗所望の「韃靼の馬」を求めて主人公たちがモンゴルまで冒険の旅に出るというのが物語の主軸です。
 辻原登の言によれば「馬将軍と言われる吉宗が『清馬より、いい馬はないか』と望んだのは史実」で、「この小説はまずタイトルが浮かんだ」のだそうです。(→コチラ参照。)

 第一部が日朝間の貿易や文化交流や通信使をめぐる挿話等の史実に密着したオーソドックスな歴史小説であるのに対して、第二部は朝鮮~モンゴルを主舞台にした冒険小説的な要素が色濃くなっています。
 ※ラスト近くには鬱陵島まで出てきます。そしてこんな会話もちゃっかり入れています。
 「やあ、きょうはよくみえるぞ、あそこからはもう日本だと先生が教えてくれた。松島(現・竹島)というらしいが、岩だらけのちっぽけな島だ」。

 私ヌルボの10段階評価では(←よくないクセかも)、第一部が9、第二部が7.5で、全体としては8.5といったところ。
 第一部の緻密な描写の魅力が第二部では薄れてやや大味で、展開もほぼ予定調和的になっている印象を受けました。

 ただ、近年の芥川賞作品では心を病んだ主人公の身辺雑記的なものが多く、読んでいる自分まで鬱々とした気分になってしまうのに対して、この芥川賞作家・辻原登の小説は「おもしろくてためになる」ストーリーテリングの魅力は十分。また別の作品を読んでみようという気になりました。
 なお、純文学系の歴史小説では、以前よく読んだ井上靖の歴史小説(「蒼き狼」等)を思い出しました。アクション度(←こんな言葉ある?)では「韃靼の馬」に軍配が上がりますが、抒情性という点では井上靖が優っていると思います。)

 上記のように、史実と虚構が巧みに組み合わされているため、そこにこだわる私ヌルボとしてはその判別にかなり手間取りました。まだわからない点も多々あります。
 以下、それら「ためになった」箇所のメモを列挙しておきします。

阿比留文字・・・トンデモ本ぽい神代文字の1つかな? ハングルと共通点多し。→ウィキペディア

広大(クァンデ)=旅芸人の演じるチュルタギ(綱渡り)は次の4つの基本芸の組み合わせからなる。以下は本書の引き写し。辻原さん、どこで調べたんだろ?(その1)
 ①トゥイサンホンジァビ=綱の真ん中に立ち、1回宙返りのあと、綱を両足で挟んですわる。②トゥムルプクルキ=すわった状態から跳び上がり、降りる瞬間身体を45度ひねって両膝で綱にすわる。③トゥムルカセトゥルム=両膝ついた姿勢から跳び上がり、左に180度ひねって両爪先で綱に乗る。④ホゴンチャビ=宙返りの連続技。

雲南白葯(うんなんびゃく(はく)やく)・・・漢方の秘薬。ネット通販だと10ml×30本で1万5千円とあるのを見たなー、うーむ・・・。

ヒトツバタゴ・・・対馬には3千本を越える自生木があり、5月初旬にいっせいに花をつける。「この木が雪を被ったように一面に白い花をつけ、散った花で海が真っ白になる」とか。その時期に対馬に行ってみたいなー。姉妹都市の岐阜県中津川市もヒトツバタゴの自生地。

保命酒・・・福山の健康酒、かな? 東京駅近くの<TAU-広島ブランドショップ->でも売っているようです。

アストロラーベ・・・天体観測機器。これも知らなかったなー。→ウィキペディア

通信使メンバーによる鶏泥棒・・・ネット上でも話題(議論)になっていますが、その<事件>は1748年の通信使のことで場所も大坂(本書では福山)です。

伝書鳩・・・この時代の日本で用いられることがあったのか。伝書鳩で堂島の米相場の情報を伝えたかどで罰せられた大坂の相場師もいたことは→ウィキペディアで知りました。

・通信使一行は大坂の浪華江(淀川)の河口の九条の港で朝鮮船から航川用の平底船に乗り換える。これを「船改め」という。(数万の群衆が見物に押しかける。←ホンマかいな?)
 西進すると川は堂島川と土佐堀川に分かれるが、船は土佐堀からに入り、天神橋で上陸。行列は土佐堀通り→北浜→堺筋→道修町→御堂筋を進んで・・・。

北御堂(西本願寺津村別院)客館・・・大阪駅からほど近い(地下鉄本町駅から至近)のここが朝鮮通信使の迎賓館だったのか。参考→コチラと→コチラ

・通信使の一員(従事官)が案内されて行った堂島米会所のようすは興味深い。米会所といっても米俵等はなく、つまりは「たてり」(先物取引)が行われていたのです。登場人物の言葉で、読者にもわかりやすく説明されています。(それでもフクザツ。)
 ※西鶴の「日本永代蔵」に唐金屋という大坂人がたてり商いで大もうけする話がある、と本書中の登場人物の唐金屋が語っています。
 ※その従事官の心中の描写。これはフィクションでしょう。「口外しないでおこう」とあるし・・・。
 「きょう、米会所で体験したこと、・・・垣間見た奇妙な世界については決して口外しないでおこう。・・・わが朝鮮は、儒教の教えで国を支え律しているが、それとは全く異質の思想がこの国で生まれ、深く根付いている。数字にもとづいて符牒を操り、巨額の金銭を動かすという方法が発明され、それを体現した人間が商品経済の中心にいる。このことは、我が国や大陸の将来に暗い影を投げかけてくるような気がしてならない・・・・。」

李礥(イヒョン)・・・通信使の製述官という重要なポストにある彼は実在の人物なんですね。「野牛村の領主であった新井白石が李礥に書いてもらった」という扁額が埼玉県白岡市野牛の久伊豆神社にあるそうです。(→コチラ参照。)
 「科挙でトップ合格」したが「庶子の生まれ」ということが大きな「泣きどころ」とは(事実だとすると)、どこで調べたんだろ?(その2) しかし「極端に原則を振りかざす性格」とか、さらには彼のもう1つの「泣きどころ」というのが痔疾というのはどこまでホントなんだか・・・。

「<恵比須堂>の不思議膏」が痔疾に効果、とあるのは<大黒堂>のことかな?虎斑

虎斑(とらふ)ヤマネコ・・・・と本書にあるのはツシマヤマネコのことと思われます。日本国内のネコは、イエネコ以外では対馬のツシマヤマネコと西表島のイリオモテヤマネコの2種のヤマネコのみ、だそうです。ともに絶滅が危惧される希少動物です。→ウィキペディア

諱(いみな)法・・・将軍から朝鮮国王への返書の文中に、16世紀の国王・中宗の諱の「懌(エキ)」の字があることを正使・趙泰億が強く抗議。幕府側はこれに対して朝鮮の国書中に3代将軍家光の諱「光」があることを指摘。結局双方が改めることとなった。←これも史実に基づいているのでしょうか?

キタタキ・・・キツツキ科の鳥。もともと朝鮮半島と日本の対馬で確認されていたが、対馬では森林伐採で生息地が失われたり、博物館の標本用等のため乱獲されてほとんど姿を消してしまった。1920年に対馬で1つがいの標本が発見され、1923年には天然記念物に指定されたが、50年間確認がされなかったため1972年に指定が解除された。
 韓国でも森林伐採の拡大により希少種となり、1952年に保護動物に指定されたが、1978年までにほとんど姿を見ることができなくなった。1993年に南北間の非武装中立地帯で1つがいが発見されている。現在は京畿道の国立樹木園の森林に数つがいが生息しているとされる。今日、この亜種が最も多く生息するのは北朝鮮である。→ウィキペディア

哥老会・・・中国近代の反体制秘密結社。哥弟会などともいう。その起源はアヘン戦争以前にさかのぼるようだが、太平天国滅亡後の湘軍解散にともない長江流域一帯に広く勢力を分布するにいたった。もともと<反清復明>の伝統をもつ下層民衆の相互扶助的組織だったが、排外暴動の組織者として著名である。のち辛亥革命の際にも重要な役割をはたした。→コトバンク

大宛(フェルガーナ)の汗血馬・・・世界史でちょっと出てきたな。→ウィキペディア。本書では、張騫のこと等けっこう詳しく書かれています。

「♪サケサオ サケサオ オラムバエトルリ サケオサ」・・・鞦韆(ぶらんこ.クネ)に乗って歌う歌の歌詞。意味不明。→그네뛰기(ぶらんこ遊び)の風俗等について記した→コチラの韓国サイトに海州(ヘジュ)地方のぶらんこ関係の民謡が紹介されていますが、その歌詞中に「사게사오 사게 사오/오람배 뚤리 사게사오(サゲサオ サゲサオ/オラムベトゥルリ サゲサオ)」という一節があります。しかし、こんな歌について辻原さん、どこで調べたんだろ?(その3)

海参・・・いりこ(干しナマコ)のこと。その効果が高麗人参に匹敵し、かついりこの形状が人参に似ているところから海参と名付けられた。・・・って、ナマコのことを韓国語ではふつうに해삼(ヘサム)というのですが、その漢字表記がこれで、こういう意味だったとは知らなかったわー!

会寧の市・・・公市→私市→馬市の順に開かれ・・・とか、とか、街のようすとか、史実と作者の想像との境目がわかりません。会寧窯は昔から知られた陶器の産地で、唐津焼にも影響を及ぼした(?)とか・・・。→参考

・主人公夫婦が吐含山(トハムサン)の樹木と藪に埋もれてしまった石窟に行き、御堂の中央に安置されている高さ十六尺余(4.84m)の釈迦如来像の前に立つ場面があります。つまり、あの石窟庵。ホントにサービス満点、というか・・・。しかしウィキペディアによると像の高さは3.4mとなってるんですけど。まあいいですけど。

・最後の方でロシア人まで登場。「(ピョートル)大帝は只今、御不例・・・」なんて言葉も・・・。
 また「ネルチンスク条約はロシア語と満語、それに羅甸語で書かれている。おそらくこのたびのキャフタでもそうなるだろう」とも。
 ※キャフタを漢字で「怡古图」と書いてあって、「そーか、知らなかったなー」と思いつつ、一応確認したら「恰克图」が正しいみたいですよ。

※この小説にハマった<かぶとん>さんのブログ記事は→コチラ。いろいろ詳しく書かれているので、参考にさせていただきました。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする