「毎日新聞」で4月4日から毎週木曜日連載してきた<新世紀 世界文学ナビ>。先週「韓国編」が終わり、昨日から「中国編」に。第1回は蘇徳(スードォ)という29歳の女性作家。私ヌルボは初めて知った名前です。記事は→コチラ。
ナビゲーターの桑島先生、彼女の作品「エマーソンの夜」について決定的なネタバレ書いちゃってて、これは作者&翻訳者にメイワクですよ。・・・って、ご自身が訳されてるわけね、なーんだ。
・・・ということはおいといて、記事にもあるように、この蘇徳さんも本ブログ先々週の記事でちょっとふれた東アジア文学フォーラム2010と、その前の同2008に連続して参加してるんですね。ということは、次回以降もこれに参加した作家たちが主に取り上げられるのかも・・・。
さて、日本・韓国・中国の文学交流といえば、私ヌルボ、近年はめったに月刊文芸誌を手に取ることもなくなったのですが、たまたま「新潮」6月号にこの3国の作家たちの小説競作プロジェクトが載っていることを教えられ、読んでみました。
韓国の文学と人文を扱う季刊誌「子音と母音」(イルム出版社)と、中国の文芸誌「小説界」(上海文芸出版社)との提携の下に「文學アジア3×2×4」と銘打って始められたプロジェクトで、実は昨年の6月に第1回がスタートしていて、以後第2回が昨年12月号、そして今回の号が第3回なんですね。
【韓国の季刊文芸誌「子音と母音」は1100ページで、この厚さ!(7㎝)】
3ヵ国の作家が、毎回に割りふられたテーマに沿って各2人ずつ短編を掲載し、それを4回続ける、ということで3×2×4ということです。
これまでのテーマは、第1回=「都市」、第2回=「性」、第3回=「旅」でした。
この機会に、ざっと3国の文学の現況を概観してみるかなと思って、第1回と第2回の掲載号は図書館で借りて約1週間で3×2×3の計18編を読んでみました。
作家・作品は以下の通りです。
第1回 2010年 6月号 テーマ「都市」
日本①島田雅彦「死都東京」
韓国①イ・スンウ「ナイフ」
中国①蘇童「香草営」
日本②柴崎友香「ハルツームにわたしはいない」
韓国②キム・エラン「水の中のゴライアス」
中国②于暁威「きょうの天気は」
第2回 2010年12月号 テーマ「性」
日本③河野多惠子「緋」
韓国③チョン・イヒョン「午後4時の冗談」(訳:金明順)
中国③葛水平「月明かりは誰の枕辺に」(訳:桑島道夫)
日本④岡田利規「耐えられるフラットさ」
韓国④キム・ヨンス「4月のミ、7月のソ」(訳:崔真碩)
中国④須一瓜「海鮮礼賛」(訳:堀内利恵)
第3回 2011年 6月号 テーマ「旅」
日本⑤江國香織「犬とハモニカ」
韓国⑤チョウ・ヒョン「ゴッホとの一夜」(訳:金明順)
中国⑤叶弥「もう一つの世界で」(訳:垂水千恵)
日本⑥町田康「先生との旅」
韓国⑥パク・ミンギュ「ロードキル――Roadkill」(訳:渡辺直紀)
中国⑥徐則臣「グスト城」(訳:上原かおり)
※韓国作家中、キム・エラン、チョン・イヒョン、キム・ヨンスについては上記の「毎日」のシリーズでも取り上げられ、パク・ミンギュについては本ブログ昨年3月8日の記事で紹介しました。
さて、全体を通しておおよそいえることは、中国の作品がおもしろくて、日本の作品がおもしろくないこと。
ただし、これは必ずしも文学としての評価とは一致しませんので、あしからず。
※たとえば長塚節「土」のように感動的なまでに「おもしろくない小説」もあります。この件については昨年11月12日の記事に書きました。
中国の小説が「おもしろい」理由は、ストーリーが「この先どうなるんだろう?」という興味津々の展開になっていること。于暁威の「きょうの天気は」は、刑務所から仮釈放された男、今一緒に歩いている兄貴分はまた良からぬことを企んでいる。自分は兄貴には逆らえない。しかし今度捕まるとホントにヤバい。どうしよう・・・、という話。
それから変貌しつつある社会の中で、俗世間の人たちのくり広げる悲喜交々の人間臭い話の魅力ですね。たとえば蘇童の「香草営」。患者たちの評価も高い梁医師は病院の近くに女性薬剤師との密会の場として家を借りたのだが、なんか変な物音が・・・、という話。
また、精霊とか幽霊等、現代でも「唐代伝奇」や「聊斎志異」等の世界がちゃんと受け継がれているようです。以前鄭義の「神樹」や莫言の作品を読んだ時にも思ったのですが・・・。
それぞれにおもしろかった中国作品中で、とくに1つあげると須一瓜「海鮮礼賛」。主人の留守中にテレビドラマに熱中したり、盗み食いもひどい家政婦の少女がカワイイ。
→<(下) 日本を追っておもしろくなくなる? 韓国の純文学>に続く
ナビゲーターの桑島先生、彼女の作品「エマーソンの夜」について決定的なネタバレ書いちゃってて、これは作者&翻訳者にメイワクですよ。・・・って、ご自身が訳されてるわけね、なーんだ。
・・・ということはおいといて、記事にもあるように、この蘇徳さんも本ブログ先々週の記事でちょっとふれた東アジア文学フォーラム2010と、その前の同2008に連続して参加してるんですね。ということは、次回以降もこれに参加した作家たちが主に取り上げられるのかも・・・。
さて、日本・韓国・中国の文学交流といえば、私ヌルボ、近年はめったに月刊文芸誌を手に取ることもなくなったのですが、たまたま「新潮」6月号にこの3国の作家たちの小説競作プロジェクトが載っていることを教えられ、読んでみました。
韓国の文学と人文を扱う季刊誌「子音と母音」(イルム出版社)と、中国の文芸誌「小説界」(上海文芸出版社)との提携の下に「文學アジア3×2×4」と銘打って始められたプロジェクトで、実は昨年の6月に第1回がスタートしていて、以後第2回が昨年12月号、そして今回の号が第3回なんですね。
【韓国の季刊文芸誌「子音と母音」は1100ページで、この厚さ!(7㎝)】
3ヵ国の作家が、毎回に割りふられたテーマに沿って各2人ずつ短編を掲載し、それを4回続ける、ということで3×2×4ということです。
これまでのテーマは、第1回=「都市」、第2回=「性」、第3回=「旅」でした。
この機会に、ざっと3国の文学の現況を概観してみるかなと思って、第1回と第2回の掲載号は図書館で借りて約1週間で3×2×3の計18編を読んでみました。
作家・作品は以下の通りです。
第1回 2010年 6月号 テーマ「都市」
日本①島田雅彦「死都東京」
韓国①イ・スンウ「ナイフ」
中国①蘇童「香草営」
日本②柴崎友香「ハルツームにわたしはいない」
韓国②キム・エラン「水の中のゴライアス」
中国②于暁威「きょうの天気は」
第2回 2010年12月号 テーマ「性」
日本③河野多惠子「緋」
韓国③チョン・イヒョン「午後4時の冗談」(訳:金明順)
中国③葛水平「月明かりは誰の枕辺に」(訳:桑島道夫)
日本④岡田利規「耐えられるフラットさ」
韓国④キム・ヨンス「4月のミ、7月のソ」(訳:崔真碩)
中国④須一瓜「海鮮礼賛」(訳:堀内利恵)
第3回 2011年 6月号 テーマ「旅」
日本⑤江國香織「犬とハモニカ」
韓国⑤チョウ・ヒョン「ゴッホとの一夜」(訳:金明順)
中国⑤叶弥「もう一つの世界で」(訳:垂水千恵)
日本⑥町田康「先生との旅」
韓国⑥パク・ミンギュ「ロードキル――Roadkill」(訳:渡辺直紀)
中国⑥徐則臣「グスト城」(訳:上原かおり)
※韓国作家中、キム・エラン、チョン・イヒョン、キム・ヨンスについては上記の「毎日」のシリーズでも取り上げられ、パク・ミンギュについては本ブログ昨年3月8日の記事で紹介しました。
さて、全体を通しておおよそいえることは、中国の作品がおもしろくて、日本の作品がおもしろくないこと。
ただし、これは必ずしも文学としての評価とは一致しませんので、あしからず。
※たとえば長塚節「土」のように感動的なまでに「おもしろくない小説」もあります。この件については昨年11月12日の記事に書きました。
中国の小説が「おもしろい」理由は、ストーリーが「この先どうなるんだろう?」という興味津々の展開になっていること。于暁威の「きょうの天気は」は、刑務所から仮釈放された男、今一緒に歩いている兄貴分はまた良からぬことを企んでいる。自分は兄貴には逆らえない。しかし今度捕まるとホントにヤバい。どうしよう・・・、という話。
それから変貌しつつある社会の中で、俗世間の人たちのくり広げる悲喜交々の人間臭い話の魅力ですね。たとえば蘇童の「香草営」。患者たちの評価も高い梁医師は病院の近くに女性薬剤師との密会の場として家を借りたのだが、なんか変な物音が・・・、という話。
また、精霊とか幽霊等、現代でも「唐代伝奇」や「聊斎志異」等の世界がちゃんと受け継がれているようです。以前鄭義の「神樹」や莫言の作品を読んだ時にも思ったのですが・・・。
それぞれにおもしろかった中国作品中で、とくに1つあげると須一瓜「海鮮礼賛」。主人の留守中にテレビドラマに熱中したり、盗み食いもひどい家政婦の少女がカワイイ。
→<(下) 日本を追っておもしろくなくなる? 韓国の純文学>に続く
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