前回に続いて補遺及び1999~現在までの推薦書リストのその2です。
今回はエンタメ系の文庫15冊。
☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
☆ 20 | 金庸 | 笑傲江湖 | 徳間文庫 | 19=読み出したらやめられない金庸の武侠小説(中国風チャンバラ)。荒唐無稽といわば言え。東アジア各国中なんで日本はこのジャンルの人気が今ひとつなんだろ? 21=1912年のタイタニック号沈没、1941年真珠湾攻撃直前のハワイでのアメリカ人観光客夫妻の殺人事件。そして1962年タイタニック引き揚げに関わる人々。スケールの大きい設定の下に展開される謎の解明とアクション。 22=前作の「半身」(創元文庫)を読んだ人のほとんどはきっとラストで「あっ」と叫んだだろう。物語的展開ならこちらをおすすめ。 23=「1 ドラゴン・タトゥーの女」以下全3部、各上下2巻で計6冊。10日間ひたすら耽読。世界的ベストセラーというのも納得。 以下、23~28はSFです。 24=遠い未来、遅くなりつつあった地球の自転はついに止まる。永久に太陽に熱せられる部分では人類も他の動物も退化し、代わりに奇妙な植物がはびこる。この世界を旅する運命となった男は・・・。 25=なんとまあ壮大なSF叙事詩! すごい想像力&創造力。 26=今、世界的に(だろうな?)一番人気のSF作家。「順列都市」(早川文庫)もお薦め。よくこんな発想が出てくるもんだなあ。 27=科学文明の批判から1つの原始的なコミューンを創った老人。そこでくりひろげられる皮肉で痛切なエピソードを綴ったアンソロジー。とくに「空にふれた少女」は思い出しただけで泣ける。うるうる。 28=スケールの大きい海洋(&海底)SF(&活劇)。冒頭から引き込まれ、ぶあつい3巻本が苦にならない。クジラや海洋資源の知識一杯! 29=近未来のタイを舞台に、エネルギー問題や種子の管理等をめぐる国や穀物メジャーの争闘に、日本製の女性アンドロイドも奮闘。 30=90年代の代表的社会派ミステリーその2。グリコ・森永事件に題材を取り、日本の政官財の癒着と、それに立ち向かう男たちを描く。 31=どれも鳥に関係する6つの短編の連作。物語も文章も端正で美しい。 32=ヘンな精神科の医者と患者たちの笑っちゃう話の数々は現代社会の縮図。ドタバタ群像劇の「最悪」や「邪魔」も一気読み必至! 33=「アラビアンナイト」風?物語の妙味。ちょっとRPG風。戦中~戦後を軍用犬をメインに描いた「ベルカ、吠えないのか?」もお薦め。 34=青雲の志を抱けた明治前半とは違って、<時代閉塞の現状>を<煩悶>しながら生きる 明治末の知識青年群像を漫画5部作で描く。 |
21 | スタンウッド | エヴァ・ライカーの記憶 | 創元文庫 | |
☆ 22 | ウォーターズ | 荊の城 | 創元文庫 | |
☆ 23 | ラーソン | ミレニアム | 早川文庫 | |
24 | オールディス | 地球の長い午後 | 早川文庫 | |
25 | シモンズ | ハイペリオン | 早川文庫 | |
☆ 26 | イーガン | 宇宙消失 | 創元文庫 | |
27 | レズニック | キリンヤガ | 早川文庫 | |
28 | シェッツィング | 深海のYrr(イール) | 創元文庫 | |
29 | バチガルピ | ねじまき少女 | 早川文庫 | |
30 | 高村薫 | レディ・ジョーカー | 新潮文庫 | |
31 | 稲見一良 | ダック・コール | 早川文庫 | |
32 | 奥田英朗 | イン・ザ・プール | 文春文庫 | |
☆ 33 | 古川日出男 | アラビアの夜の種族 | 角川文庫 | |
34 | 関川夏央 谷口ジロー | 『坊っちゃん』の時代 | 双葉文庫 |
実は前回のリストに後からこっそり足立巻一「やちまた」を追加しておきました。高校生にはちょっと、いやそれ以上に手強い作品ですが・・・。1月6日の「東京新聞(夕刊)」掲載の<名著の衝撃>で呉智英が「人生誤らせる悪魔の書」という見出しで絶賛していたから、・・・というわけではないのですが、90年代に読んだ質・量ともに圧倒的な5つばかりの作品中の1つです。
今回のエンタメ系では日本のミステリーがほとんどなし。今世紀に入ってからあまり読んでないし・・・。この数ヵ月、話題になった本(横山秀夫、貫井徳郎等)をいくつか読んだのですが、どうも小手先のワザを弄している感じで、私ヌルボの好みではありません。
この<高校生にすすめる本360冊>シリーズ、いよいよあと1回を残すのみです。
別に食わず嫌いしている訳ではないのですが、どうもエンターテインメント系は余り得意ではなく(子供の頃はSFや推理モノなどを読み漁ったのですが)、皆さんが絶賛されているものでも大抵途中で挫折してしまいます。
特にある時期からやたらと長い作品が増えたような気がしており、それらに費やす時間やお金のことを考え、電子書籍ではただ(あるいはただ同然)で読める、未読のままの東西の古典の山のことを思うと、エンターテインメント系にかぎらず、今回挙げられている高村薫や古川日出男など現代の作家のものにすら、食指が伸びなくなってしまっています。
今回紹介されている足立巻一の「やちまた」は是非読んでみたいと思いますが、ますます現代モノから遠ざかってしまいそうです(苦笑)。
残すところあと1回とのこと、果して次回のリストに読んだことのある作品があるかどうか。いずれにしても楽しみにしております。