1つ前の記事の続きです。
下の画像は、原書の表紙です。
【「북한체류기(北韓滞留記)」上巻(左)が「남쪽 손님(南側のお客さん)」、下巻が「빗장열기(カンヌキを開ける)」。表紙は日本版の方がよさそう。】
[B] 北朝鮮の体制いろいろ
①できうるかぎり情報を統制する。
▶車を運転していた呉英進さん、背中に赤ちゃんを負い、両手に荷物を持った女性が歩いていたので乗せてあげたいと思った・・・が、南北の議定書では「韓国の車に北の住民を乗せてはならない」と規定されているし、女性も車が眼中にないように歩いていくので、そのまま。
・・・極力北の一般人との接触をさせないという方針。また北の人が韓国人の車に乗せてもらったりすると、生活総和の場で反省を迫られます。
▶武器・爆発物・劇薬以外で北朝鮮が搬入を禁止しているものには、高倍率の望遠鏡や双眼鏡・強力なズーム付のカメラやビデオカメラ・無線通信機器・新聞・雑誌・フィルムやビデオがある。
▶工事現場の工程写真を撮る時には、北の労働者は身を隠す。北当局は、対北宣伝に利用するかもしれないという理由で労働者の撮影を禁じている。
▶北の電信柱は韓国より低く、倒れそうに見える。北では、道端に建てた韓国の電信柱をなぜか黒く塗りたてている。(韓国製であることをわからせないため?)
▶将軍様のお名前や革命スローガンを損なうような写真は持ち出し禁止。将軍様の銅像をバックにピースサインで撮った記念写真はダメ。
・・・国内の状況を伝える映像等が外に漏出したり、外国の情報がチェックもなく入ってくることを警戒している。将軍様は絶対不可侵。
▶理髪店には「労働新聞」、グラビア誌、文芸誌、革命小説等を常備。それらを読んで呉英進さんが気づいたことは「北朝鮮の歴史には金日成時代以前がない」。
▶「将軍様の写真が載った新聞は折りたたんではいけない」ということは、外の世界でもかなり知られるようになった。
▶「労働新聞」には北の新聞は社会面がない。つまり、事件や事故の記事が全然ない。スポーツ・芸能面、広告も。「黒羊の乳で豆腐をこしらえた」とか、「咸鏡道の女子小学生がウサギ2匹を10数匹に増やして党から表彰された」という、韓国では子ども新聞で見るような記事が載っている。
▶グラビアには80年代半ば、水害で被害を蒙った韓国に支援の米をした時の写真が。
▶スペイン・セビリアの世界陸上の女子マラソンで鄭成玉選手が優勝。北のメディアは数日後に報道。
・・・北朝鮮で「正しい」報道とは、体制をきちんと維持するためのものであり、言論・報道の自由についての考え方が国際通念とは根本的に違います。
②北朝鮮の体制ならではのシステム、ルールがいろいろ。
▶線路の枕木交換作業を見ると、女性もツルハシを持って重労働。「共和国は男女平等ですから」。
▶田植え期間になると、「総進軍 田植え戦闘へ!」と書かれた赤い旗を立てて開始。
▶村と村の境界線には検問所があり、木のバーが渡してあるだけだが、通行証や訪問証がないと越えられない。そこは村人たちの物々交換の場所でもあり、親戚や友人が会う場所でもある。
▶呉英進さんのように、訪朝者の中で平壌以外の所に行くのは稀である。訪問先が平壌の場合は、宿舎(ホテル)に行く前に万寿台の金日成銅像をまわって献花と黙禱をすることになる。北の住民が外国出張から帰国した時の規定のコースである。
・・・こうした北での「常識」の中で暮らした人が脱北して韓国で生活するとなると、非常な困難があるのも当然。
[C] 北朝鮮の人たちとの会話
①神聖にして侵すべからず
▶1対1の個人的な会話でも「敬愛する指導者同志のご配慮で・・・」という枕詞がちょくちょく付く。
▶韓国に国際郵便を出すため琴湖国際通信所(郵便局)に行った呉さん、「この金正日のもの(切手)いくら?」と言って女性局員に激怒される。
▶クリスマスイブの日、食堂で酒を飲みながら、奉仕員(接待員)の女性に「今日は何の日かわかる?」と訊くと、「抗日女性英雄の金正淑同志の誕生日ですよ!!」
▶革命歌謡の流れるバーで接待員に「金正日委員長のお子さんは何人いるの?」と訊くと「ここではあんまり多くのことを知ろうとしてはいけません。先生様、いま南朝鮮では「知ろうとするな! 怪我するよ」という言葉が流行ってるってね」
・・・昔の日本臣民は、陰では天皇について語る場面もありましたが・・・。
②教育の成果
▶タラタラしてる労働者を叱ると、軽水炉事業についての議論に。核査察を口にすると、米帝こそ査察を受けるべき、とか。「いろんな国から金を集めて発電所を作っているのをありがたく思わなきゃ!」というと「その言いぐさは何ですか!! 軽水炉事業はどこまでも我が偉大な将軍様がクリントンの首を締めつけて勝ち取ったものです!」
▶南朝鮮(韓国)の車を道で見ると、子どもたち硬い表情で目を背ける。
・・・教育の力が大きいのはどこの国も共通。韓国の「独島はわれらが地」も。教育というより教化。
③プライドは高い
▶「配給はきちんと出てるか?」とか「飢えている人はいないのか?」と訊ねると「一体何が知りたいんですか!」と語気を強める。デリケートな話は避けるようになる。
▶北の労働者「われわれ人民には不足なものは1つもありませんよ」
南の労働者「じゃ家に冷蔵庫あるか?」
北「冷蔵庫? ア! 冷凍機のことか! そんなの!ありますよ!」
南「そうだよ。上に冷凍庫がついているやつさ」
北「オレはそんなの知りませんよ! うちのオンマがみんな管理しているからオレの知ったことじゃないんだ!」
・・・プライド(自尊心)の高さは南北共通かも。\t
④ふとホンネが・・・
▶並んで座ってタバコを吸いながら北の班長が呟く。「それでも首領様の時代はよかったですね」
・・・このホンネは北の人たちに共通なようで、いろんな本で見ましたね。
あと1回続きます。
下の画像は、原書の表紙です。
【「북한체류기(北韓滞留記)」上巻(左)が「남쪽 손님(南側のお客さん)」、下巻が「빗장열기(カンヌキを開ける)」。表紙は日本版の方がよさそう。】
[B] 北朝鮮の体制いろいろ
①できうるかぎり情報を統制する。
▶車を運転していた呉英進さん、背中に赤ちゃんを負い、両手に荷物を持った女性が歩いていたので乗せてあげたいと思った・・・が、南北の議定書では「韓国の車に北の住民を乗せてはならない」と規定されているし、女性も車が眼中にないように歩いていくので、そのまま。
・・・極力北の一般人との接触をさせないという方針。また北の人が韓国人の車に乗せてもらったりすると、生活総和の場で反省を迫られます。
▶武器・爆発物・劇薬以外で北朝鮮が搬入を禁止しているものには、高倍率の望遠鏡や双眼鏡・強力なズーム付のカメラやビデオカメラ・無線通信機器・新聞・雑誌・フィルムやビデオがある。
▶工事現場の工程写真を撮る時には、北の労働者は身を隠す。北当局は、対北宣伝に利用するかもしれないという理由で労働者の撮影を禁じている。
▶北の電信柱は韓国より低く、倒れそうに見える。北では、道端に建てた韓国の電信柱をなぜか黒く塗りたてている。(韓国製であることをわからせないため?)
▶将軍様のお名前や革命スローガンを損なうような写真は持ち出し禁止。将軍様の銅像をバックにピースサインで撮った記念写真はダメ。
・・・国内の状況を伝える映像等が外に漏出したり、外国の情報がチェックもなく入ってくることを警戒している。将軍様は絶対不可侵。
▶理髪店には「労働新聞」、グラビア誌、文芸誌、革命小説等を常備。それらを読んで呉英進さんが気づいたことは「北朝鮮の歴史には金日成時代以前がない」。
▶「将軍様の写真が載った新聞は折りたたんではいけない」ということは、外の世界でもかなり知られるようになった。
▶「労働新聞」には北の新聞は社会面がない。つまり、事件や事故の記事が全然ない。スポーツ・芸能面、広告も。「黒羊の乳で豆腐をこしらえた」とか、「咸鏡道の女子小学生がウサギ2匹を10数匹に増やして党から表彰された」という、韓国では子ども新聞で見るような記事が載っている。
▶グラビアには80年代半ば、水害で被害を蒙った韓国に支援の米をした時の写真が。
▶スペイン・セビリアの世界陸上の女子マラソンで鄭成玉選手が優勝。北のメディアは数日後に報道。
・・・北朝鮮で「正しい」報道とは、体制をきちんと維持するためのものであり、言論・報道の自由についての考え方が国際通念とは根本的に違います。
②北朝鮮の体制ならではのシステム、ルールがいろいろ。
▶線路の枕木交換作業を見ると、女性もツルハシを持って重労働。「共和国は男女平等ですから」。
▶田植え期間になると、「総進軍 田植え戦闘へ!」と書かれた赤い旗を立てて開始。
▶村と村の境界線には検問所があり、木のバーが渡してあるだけだが、通行証や訪問証がないと越えられない。そこは村人たちの物々交換の場所でもあり、親戚や友人が会う場所でもある。
▶呉英進さんのように、訪朝者の中で平壌以外の所に行くのは稀である。訪問先が平壌の場合は、宿舎(ホテル)に行く前に万寿台の金日成銅像をまわって献花と黙禱をすることになる。北の住民が外国出張から帰国した時の規定のコースである。
・・・こうした北での「常識」の中で暮らした人が脱北して韓国で生活するとなると、非常な困難があるのも当然。
[C] 北朝鮮の人たちとの会話
①神聖にして侵すべからず
▶1対1の個人的な会話でも「敬愛する指導者同志のご配慮で・・・」という枕詞がちょくちょく付く。
▶韓国に国際郵便を出すため琴湖国際通信所(郵便局)に行った呉さん、「この金正日のもの(切手)いくら?」と言って女性局員に激怒される。
▶クリスマスイブの日、食堂で酒を飲みながら、奉仕員(接待員)の女性に「今日は何の日かわかる?」と訊くと、「抗日女性英雄の金正淑同志の誕生日ですよ!!」
▶革命歌謡の流れるバーで接待員に「金正日委員長のお子さんは何人いるの?」と訊くと「ここではあんまり多くのことを知ろうとしてはいけません。先生様、いま南朝鮮では「知ろうとするな! 怪我するよ」という言葉が流行ってるってね」
・・・昔の日本臣民は、陰では天皇について語る場面もありましたが・・・。
②教育の成果
▶タラタラしてる労働者を叱ると、軽水炉事業についての議論に。核査察を口にすると、米帝こそ査察を受けるべき、とか。「いろんな国から金を集めて発電所を作っているのをありがたく思わなきゃ!」というと「その言いぐさは何ですか!! 軽水炉事業はどこまでも我が偉大な将軍様がクリントンの首を締めつけて勝ち取ったものです!」
▶南朝鮮(韓国)の車を道で見ると、子どもたち硬い表情で目を背ける。
・・・教育の力が大きいのはどこの国も共通。韓国の「独島はわれらが地」も。教育というより教化。
③プライドは高い
▶「配給はきちんと出てるか?」とか「飢えている人はいないのか?」と訊ねると「一体何が知りたいんですか!」と語気を強める。デリケートな話は避けるようになる。
▶北の労働者「われわれ人民には不足なものは1つもありませんよ」
南の労働者「じゃ家に冷蔵庫あるか?」
北「冷蔵庫? ア! 冷凍機のことか! そんなの!ありますよ!」
南「そうだよ。上に冷凍庫がついているやつさ」
北「オレはそんなの知りませんよ! うちのオンマがみんな管理しているからオレの知ったことじゃないんだ!」
・・・プライド(自尊心)の高さは南北共通かも。\t
④ふとホンネが・・・
▶並んで座ってタバコを吸いながら北の班長が呟く。「それでも首領様の時代はよかったですね」
・・・このホンネは北の人たちに共通なようで、いろんな本で見ましたね。
あと1回続きます。
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