ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

日本統治時代の小説・廉想渉「万歳前」は全然おもしろくない、が・・・・

2010-11-12 23:31:22 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 私ヌルボが考えるに、おもしろくない小説はおよそ次の3つに分けられます。

①淡々とした展開で、盛り上がりに欠け、タイクツきわまりない。 
②主人公がイヤな奴で(たぶん作者も)、たいていは性格がひねくれていて、全然共感がもてない。
③言葉や文章が難解で、全然意味がとれない。


 あ、それから④あほらしい内容で、語るに及ばず、というのもあるのですが、これは論外。(比率的には大きな部分を占めるが・・・。)

 さて、ここで大切なことは、おもしろくないからといって、必ずしも読むに値しない、ということではない、ということ。逆におもしろくても薄っぺらで、読んだことを後悔するような小説もたくさんあります。

 上記①に属する小説では、何といっても長塚節「土」のつまらなさは圧倒的でした。ずっと以前の話ですが、そのつまらなさを後輩に語ったら、後日彼が「読みました! 本当につまらなかったです!」と目を輝かせて報告したその表情を今も覚えています。
 翻訳物ではカフカの「審判」なんか、小説の展開もさることながら、なんでこんな小説を苦労して読まないかんのか(←方言)、読んでる自分自身に不条理を感じたものです。
 ②のタイプでは、たとえば島崎藤村の「春」とか「桜の実の熟する時」。一体主人公は何をぐちゃぐちゃ悩んでいるんだろ? 悩む前にせなならんことがいろいろあるんちゃうか?(←方言)と菅直人でなくてもイライラしっぱなしでした。
 ③は、蓮見重彦先生とか何人かの名前は浮かんできますが、小説家では思いつきません。翻訳物では、高3の時授業中に読破したサルトル「嘔吐」! これを読み切った数10年昔の自分をほめてやりたいです。今はたぶん10ページも読めないでしょう。

 ここにあげた数例の作品は、おもしろくなくてもリッパに読むに値する本でした。
 以上が例によって長~い前セツ。

 以下、一昨日イッキ読みした廉想渉(염상섭.ヨム・サンソプ)「万歳前」(勉誠出版.日本語)について。

    

 1924年に京城で刊行された本の翻訳です。
 はっきりいって、この小説はおもしろくないです。分類すると上記②に分類されます。「主人公の性根がひねくれていて、全然共感できない」というヤツです。

 物語の時代背景は、題名の示すように1919年3月1日に始まる万歳事件(三一独立運動)の前年1918年の秋。
 主人公はW大に通う朝鮮人留学生・李寅華(イ・インファ)。彼は数えで23歳くらいですが、京城に残してきた妻が産後の肥立ちが悪く、危篤との電報を受け取ります。
 ※当時の朝鮮では男は15歳前後で早婚するのがふつうだった。この小説では寅華が13歳、妻が15歳の時とある。

 それで、寅華は期末試験途中で一時帰国することになるのですが、神保町方面で旅行用品を買った後もぐずぐずしてて、髪が伸びてもないのに散髪屋に行ったり東京堂書店をのぞいたり、そしてカフェに行ってなじみのカフェガール静子やP子と酒を飲んだり・・・。大分経ってから「実はうちのかみさんが病みついているらしいんだ。危篤で苦しい息をしているというんで・・・」と言うとP子は当然「それじゃ早く帰ってあげなきゃ、・・・」と言うわねー、すると寅華、 「死ぬ者は死ぬようになっているのさ。どうするって、どうしようもないよ」 。
 ・・・とまあ、こんな調子!

 一応夜汽車で出立したものの、汽車の旅に疲れた寅華は神戸で途中下車。そして知り合いの朝鮮女子留学生の乙羅の寄宿舎を訪ねる。・・・って、一体何やってるんだ!(と、すでに怒りが込みあがってくる私ヌルボ・・・。) 引き留める乙羅に別れを告げて寅華はようやく下関に着き、連絡船の待合室へ。ここで刑事の訊問を受け、その後も官憲にはずっとつきまとわれます。

 釜山に着いた寅華、ふらりとうどん屋に立ち寄り(「立ち寄るなっ!」とヌルボは叫ぶ)、2階で女給たちの身の上話を聞いたり、<タバコ節(담바귀타령)>という唄を聴いたりします。やっと汽車に乗った彼、途中兄が迎えに来ていた金泉駅で下車して兄の家に寄ります。普通学校の訓導の兄は妻がいるのに男の子がいないという口実で若い女を同居させたりしています。やれやれ。
 また乗車した寅華、午前零時過ぎ大田で30分ほどの停車の間、釜山等と同様日本人家屋の増えた街を歩き、車内に戻って「共同墓地だ!」とか「すべてがウジ虫だ!」などとつぶやきます。(「アンタ自身がそうなんだよっ」と言ってやりたくなります。)

 やっと、ホントにやっと京城の家に着くと妻は力なく寝ています。しかし寅華はあいかわらずで、乙羅が帰国してるはずだと考え、彼女と怪しい関係(?)の従兄炳華の家を訪ねたりします。
 妻はついに臨終を迎えます。寅華は皆の反対を押し切って簡単に三日葬で済ませ、すぐ日本に戻ることにします。

 乙羅とのモヤモヤも吹っ切り、彼に思いを寄せつつ同志社で学ぶことに決めた静子からの手紙での誘いも拒んで、彼は「我々は何よりも新たな生命が躍動する歓喜を得る時まで、我々の生活を光明と正道へと導いてゆきましょう」と静子への返信で決意をしたためます。(これだけ読者に不信の念を増幅させておいて、最後の最後になって今さら「めざめた」とか「回心」とかゆうても誰が信じますかいな!)

 ウィキペディアによると、廉想渉「朝鮮の自然主義文学の祖となった」とあります。
 私ヌルボ、この主人公の性根のひねくれ具合は島崎藤村等の自然主義作家と通じるものがあるなーと思ったら案の定でしたね。またこの小説を訳した白川豊先生は、「廉想渉によって朝鮮文壇に初めて真のリアリズム文学が定着したのである」と記しています。
 やっぱり、二葉亭四迷「浮雲」の内海文三以来、いわゆる近代的自我なるものはいわばイヤな性格とほとんど同義なんでしょうね。

 その点、読み物としてのおもしろさでいうと、やっぱり尾崎紅葉「金色夜叉」とか小杉天外「魔風恋風」のような前近代的要素が残っている小説の方がずぅっとおもしろかったのと同様、朝鮮人作家の作品では李光洙「有情」(1933)とか蔡萬植「濁流」(1937)の方がなんぼかおもしろかったです。

 以上かなりボロクソに感想を書きつらねましたが、それでもなお読んでよかった本です。(「よっく言うよ」って?)
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[11月5日(金)~7日(日)]

2010-11-09 23:35:12 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 年内に上映予定の韓国映画は、「黒く濁る村」(11月20日~)、「ベストセラー」(12月4日~)、「7級公務員」(12月18日~)と続きますが、今は韓国以外の映画も含めて、「これは観なくっちゃ!」というものがありません。一昨日の日曜日はめずらしくヒマだったのに・・・・。まあそういう時こそツンドクになってる本を読むなり、DVDを観るなりすればいいんですけどね。あ、部屋の掃除ね(汗)、まあね・・・(汗汗)。

   ★★★ Daumの人気順位(11月9日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①泣くな、トンズ(韓国)  9.9(328)
②ゴッドファーザー2  9.7(54)
③Live in 3D フィソン It’s Real(韓国)  9.6(34)
④アジョシ[おじさん](韓国)  9.3(5473)
⑤サンキュー、マスター・キム(豪・日)  9.3(20)
⑥怪盗グルーの月泥棒  9.1(263)
⑦Letters to Juliet  9.0(507)
⑧喝  (韓国)  8.9(22)
⑨奇跡のオーケストラ – エル・システィマ  8.9(20)
⑩招かれざる客(韓国)  8.9(31)

 順位変動全くなし、です。

【専門家による順位】

①ゴッドファーザー2  9.0(3)
②オッキの映画(韓国)  8.5(5)
③ブンミおじさん  8.1(7)
④キム・ポンナム殺人事件の顛末(韓国)  8.0(8)
⑤インセプション  7.7(8)
⑥不当取引(韓国)  7.6(6)
⑦スカイ・クロラ(日本)  7.6(3)
⑦バッハ以前の沈黙  7.6(3)
⑨招かれざる客(韓国)  7.5(2)
⑩サンキュー、マスター・キム(豪・日)  7.2(4)
⑩啓蒙映画(韓国)  7.2(4)

 コチラもまったく変動なし。こういうことはこの1年数ヵ月の間で初めてかも・・・。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[11月5日(金)~7日(日)] ★★★
         今週もダントツ「不当取引」

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・封切り日・・・・・・週末観客動員数累計・・・・観客動員数・・・・上映館数

1・・不当取引(韓) ・・・・・・・・・・・・10/28・・・・・・・・456,589・・・・・・・・・・・・・1,483,725・・・・・・・521
2・・RED/レッド・・・・・・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・185,378 ・・・・・・・・・・・・・・217,443・・・・・・・330
3・・不良男女(韓)・・・・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・174,271・・・・・・・・・・・・・・・218,741 ・・・・・・365
4・・デヴィル・・・・・・・・・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・・57,108・・・・・・・・・・・・・・・・68,709・・・・・・・187
5・・ガフールの伝説・・・・・・・・・・・10/28・・・・・・・・・55,939・・・・・・・・・・・・・・・239,472・・・・・・・239
6・・深夜のFM(韓) ・・・・・・・・・・・・10/14・・・・・・・・・47,294・・・・・・・・・・・・・1,159,746・・・・・・・390
7・・取り返せない(韓)・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・・35,649・・・・・・・・・・・・・・・・42,791・・・・・・・210
8・・唐山大地震・・・・・・・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・24,674・・・・・・・・・・・・・・・・28,386・・・・・・・・92
9・・パラノーマル・アクティビティ2・・10/21 ・・・・・・12,690・・・・・・・・・・・・・・・353,516・・・・・・・・83
10・・ソーシャル・ネットワーク・・・・11/18 ・・・・・・・・・9,580・・・・・・・・・・・・・・・・・9,580・・・・・・・・82

 2・3・4・7・8・10位と、6作品が新しく入り、上掲の人気順位と反対に先週から大きく変わりました。
 2位、心静かに引退後の日々を送っていた元CIAのエージェント(ブルース・ウィリス)。ある日突然何者かの襲撃を受ける。これをきっかけにかつての仲間たち(モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ等)とのチームを再結成して立ち向かうが、その何ものかというのは・・・、というふうに始まるスパイ・アクションムービー。日本公開は来年1月29日。
 3位は韓国のコメディ。借金まみれの刑事(イム・チャンジョン)に対し返済要請の電話をかけてくるカード会社の性格不良女(オム・ジウォン)。30分ごとにかかってくるので犯人を追いかけるにも支障をきたす。そんなお互いに嫌いでたまらない存在の男女が、電話の主だと知らずに会って、お互いにいい印象を持つ、という設定。毎度参考にさせてもらってる「韓国映画スタッフブログ」によると、観客の皆さんは「みんなゲラゲラ笑っていました」とのことです。「オム・ジウォンのかわいいけど、休みなくしゃべりたてるオバちゃんキャラが、この上なく最高」とあって、楽しそうな映画ですね。
 4位、フィラデルフィアの高層ビルのエレベーターが止まり、5人の男女が閉じ込められる。監視カメラでエレベーター内の様子は警備室に映し出される。しかし、突然明かりが消えて真っ暗になった時の一瞬の間に、若い女性が何者かに背中を噛みつかれて怪我をしたのだ。続いて彼らを襲う信じられないような現象が・・・。それは5人の中にいる悪魔のしわざだって!? ・・・というホラーですが、日本公開は未定。デヴィルは韓国語では데블(デブル)。
 7位、原題は「돌이킬 수 없는」なんですが、韓国映画関係のサイトをざっと見たところ、「元に戻せない」「とりかえしがつかない」「取り戻せない」「振り向けない」「取り返せない」とさまざまに訳されています。小さい村で7歳の女の子がいなくなる事件が発生する。父親(キム・テウ)は必死に娘探しを続けるうちに、少し前に一人の青年(イ・ジョンジン)が近所に越してきたことを知る。また彼に前科があったということも・・・。そして青年に疑いがかけられてゆく・・・。うーむ、深刻な話のようですね・・・。
 8位、原題が「唐山大地震」ですが、韓国題は単に「대지진(大地震)」なので、パニックものでは、と誤解されるかもしれません。1976年20万人あまりが死亡したという中国河北省の唐山大地震にまつわる物語です。崩れたアパートの下敷きとなっで身動きのとれない子供二人(息子と娘)。どちらか1人しか救えないという状況のなかで母親の下した判断がその後の家族の運命を変えます。
 中国初のIMAX映画で、7月22日に公開されて初日ですでにアバターを超えたそうです。、3日間で1億元を突破し、「災害を金儲けの道具にした」との批判も出たとのこと。あらすじを記したサイトを見ただけでも涙が出そうです。日本ではいつ公開されるのかなあ?(未定のようです。)
 10位、第23回東京国際映画祭のオープニング作品。SNSサイトのFacebookを創設したマーク・ザッカーバーグらを描いたドラマ映画です。封切り日が11月18日というのは間違いではありません。有料試写会が多くの映画館で開かれ、「反応爆発」だったのでこの数字に。日本公開は来年1月15日。
 韓国のSNSではサイワールド(Cyworld.싸이월드)が圧倒的な人気で、利用者は1800万人。韓国の総人口の約3分の1が参加していることになる。・・・ということですが、私ヌルボ、SNSについては詳しくないので、ベンキョーして(したくないけど)そのうち記事にするかもしれません。
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<金素雲・藤間生大の論争>再考④ 民族主義的な韓国文学史の叙述について

2010-11-08 23:49:14 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 1つ前の記事<金素雲・藤間生大の論争>再考③の最後に「日本統治期の文学の見方について、韓国では近年変化が見えはじめているように思いますが、それについては次回。(・・・って、またいつになることか?)」と記しましたが、一気に続けて書くことにしました。

 先に、韓国では李陸史の「青葡萄」のような一見抒情詩ととれ、それで正しいかもしれない作品についても祖国独立を希求した詩とする見方が強いということを書きました。そればかりか、金素月の詩までもそのように解釈する人さえいます。

 韓国を多少なりとも知る日本人なら、韓国人による歴史叙述のほとんどが民族主義の色濃いレイヤー(色眼鏡といってもいいが・・・)を通して書かれていることを承知していることでしょう。
 10月28日の記事で紹介した富川の漫画ミュージアムの展示も、非常に大きいと思われる日本漫画の影響等は完全に除外されているし、最近目を通したキム・ミヒョン編「韓国映画史」(キネマ旬報社)も、読んで得るところの多い本ですが、日本統治期に上映されたであろう多くの外国(日本・欧米)映画や、その影響等の記述はほとんどありません。戦後についても基調は同じです。

 本論の文学史に戻りますが、以前からなるほど、と思いつつ読んだのが「ハングル工房 綾瀬 - 僕の朝鮮文学ノート 9811」というサイト内の「金素月の「七五調」問題と「比較文学」」と題された記事。
 それによると、学問の分野の常識では(たぶん)驚くべきことですが、北朝鮮・韓国には<比較文学という学問がありえない(orありえなかった>ということです。
 つまり、日本統治下での朝鮮文学に対する日本あるいは西欧文学の影響を論ずること自体が、「韓国の作品は西洋や日本を模倣したというのか。それはわが民族の主体性・独自性を否定するものだ」というように非難される状況が続いてきたそうで、そのような中で「研究者の世界も商売」だから、「あえて反発の予想される論文」は書こうとしなかった、ということです。
 したがって、具体的に金素月の作品について記された論考をみても、彼の七五調の韻律を(そのようなものがなかったにもかかわらず)<伝統的な七五調>に拠っている、と解したりしているそうです。(20年の間で例外的に金允植「韓国文学史」(1973)だけが<日本の七五調>の影響と記しているとか・・・。)

 現在も韓国で最も愛されている詩人金素月は私ヌルボも好きですが、彼の作品の魅力その1の韻律に親しみを覚えるのはやはり日本の七五調と共通したものが感じられるからで、魅力その2のやや退行的なやるせない詩情も、彼が日本にいた当時(1923年)に流行っていた「船頭小唄」(詞・野口雨情)等々、当時の日本詩人の作品にあいつうじるものではないかと思ってきました。
 ※1つ前の記事で紹介した学習書「中学生が必ず読むべき詩」にも金素月の「オンマヤ ヌナヤ」が載っていますが、その説明には「民謡調の3音の伝統的韻律をもっている」とあります。

 「ハングル工房 綾瀬」の記事は次のように結ばれていますが、これこそ私ヌルボの言いたかったことをよくぞ言ってくれました、って感じで、ちゃっかりコピペさせていただきました。

 1920年代、衝撃的であり(現代の感覚でいえば)少女趣味の素月の一連の詩が、新鮮なものとして歓迎された事情は、理解しよう。いや、理解すべきだ。素月の衝撃、それは 1920年代の朝鮮には、あまりにも大きな衝撃だった。 
 そしてそれが「日本の」七五調の「影響」下にあることは、朝鮮文学の恥部ではない。1920年代の青年にとって、それが大きな発見であり、それを自分自身のリズムに取り込んで行く過程こそが、彼の文学的成果ではなかったか。
 もし それが「日本の影響」下にあるから文学的価値がないというなら、植民地下における「ほとんどすべての」文学的努力は価値がない。それは北であれ南であれ、その論理でいくなら、朝鮮人はみずから「ほとんどすべての」文学的価値を否定することになるだけだ。


 さて、冒頭に「韓国では近年変化が見えはじめているように思います」と記しましたので、その根拠を若干あげます。
 ネット上で探すと、日本に来ている(or来ていた)韓国人研究者によって「韓国人留学生文学青年たちの日本近代詩理解および西欧詩との接触」、「朝鮮人詩人への日本近代詩の影響」と題されたまさに比較文学の観点からの論文が書かれています。(後者ではやはり金素月の詩の韻律を「韓国伝統の三・四・五調(七・五調ともいわれる)」としていますが。)

 また、学校での国語教育について、この5月「朝鮮日報」連載の<萬物相>で「文学を殺す国語教育」(日本語版)と題された一文が載せられていました。
 この記事は契約してないと見られないので要点を記します。

 詩や小説のテスト問題は、当の作者自身も答えられないような出題もある。文壇では「国語の教科書が文学を殺している」という批判もある。「詩で『夜』といえば、当然のように時代の闇につながり、『星』が出てくれば理想世界に対する憧れとして解釈される」という指摘が代表的だ。退屈な国語の時間が、楽しいはずの文学を型にはまった知識に塗り替え、未来の読者を追い出している、というのが文壇の意見だ。
 これに対して、直後に高3の女生徒シン・インシルさんの投稿がありました。
 それによると学校では生徒が「自分が感じたように、詩の意味を拡大解釈するのは禁物」で、「真理は、ひたすら文学の参考書解説書のみにある」とのことです。
 シンさんは「文学を愛する学生として、私は学校の文学の授業が、もう少し作品の解釈の自由を可能にしてほしい」とも記しています。「正解だという解釈も一つの視点に過ぎないから作品の内容の意味を問う設問は無意味」、「感想は、文字通りの鑑賞で、作品を感じて自分の人生に照らして、いくつかの考えを交わすことができる授業になってほしい」が、「現在、我が国の教育条件上、期待するの大変なのかもしれない」と結んでいます。

 しかし、「朝鮮日報」にこのような記事が載ること自体、状況が変化してきているのかなと思うのですが、いかがなものでしょうか?
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李陸史の「青葡萄」は祖国独立を希求した詩か? <金素雲・藤間生大の論争>再考③

2010-11-07 20:29:15 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 本ブログでは、完結していないシリーズがいくつもあります。当然ながら、書きにくい所にさしかかるとつい先延ばしにしてしまうためで、中には何ヵ月もほったらかしになっているものも・・・。今回もその1つなんですが、ハラを決めて書き始めます。

 発端は6月21日の記事で紹介した文芸誌「朝鮮文学」(1970~74)。
 その第2号所収の梶井陟「金素雲・藤間生大の朝鮮詩論争」について、次の2回にわたって取り上げました。

 ・7月10日<金素雲・藤間生大の論争>再考①日帝時代の朝鮮詩から、祖国喪失の哀しみと憤りを読みとれるか? 
 ・7月12日<金素雲・藤間生大の論争>再考②えっ、金素月の「つつじの花」も抵抗詩!? 

 今回は、日本統治期の抵抗詩人・李陸史(1904~44)の代表詩「青葡萄」(1939発表)の解釈がテーマです。

 論点は、これが純粋な抒情詩か、それとも祖国独立を希求するという寓意が込められた抵抗詩なのか、という問題です。

 まずはその詩を見てみましょう。

 青葡萄    李陸史 (金素雲訳) 

내 고장 칠월은        わがふるさとの七月は
청포도가 익어가는 시절  たわゝの房の青葡萄。

이 마을 전설이 주절이 주절이 열리고   ふるさとの古き伝説(つたへ)は垂れ鎮み
먼데 하늘이 알알이 꿈꾸며 들어와 박혀  円(つぶ)ら実に ゆめみ映らふ遠き空。

하늘 밑 푸른 바다가 가슴을 열고  海原のひらける胸に
흰 돛단배가 곱게 밀려서 오면    白き帆の影よどむころ、

내가 바라는 손님은 고달픈 몸으로  船旅にやつれたまひて
청포를 입고 찾아온다고 했으니    青袍(あをごろも)まとへるひとの訪るゝなり。

내 그를 맞아 이 포도를 따먹으면  かのひとと葡萄を摘まば
두손을 함뿍 적셔도 좋으련      しとゞに手も濡るゝならむ、

아이야 우리 식탁엔 은쟁반에     小童よ われらが卓に銀の皿
하이얀 모시 수건을 마련해 두렴   いや白き 苧(あさ)の手ふきや備へてむ。

 一読して、この詩のどこが抵抗詩なのか、疑問に思う人がほとんどではないでしょうか?
 7月4日の記事でもふれた林容澤「金素雲『朝鮮詩集』の世界」(中公新書)は、次のような文学評論家・金トクハン氏の所説を紹介しています。

・李陸史の故郷は安東で、そこは内陸で海はない。つまりこの故郷とは、民族全体の郷土=祖国をさす。
・「白き帆舟」はやがて到来すべき「明るい未来」を暗示している。
・「青袍まとへるひと」、原文では「내가 바라는 손님(わが待ちし客)」とは、祖国独立を象徴する語。
・最後の2連は、わが待ちし客(=独立)を迎えての饗宴と、それを待つ憧れの表現。


 この解釈は、まったくの空想の産物でもなく、李陸史が南京にいた時に所持していた翡翠の印章に刻まれていた「詩経」中の詩と、それについての陸史自身の随想等と関連づけられています。
 その説得力が、0%とも100%とも思えないところが問題で、私ヌルボ、正直なところよくわかりません。

 日本の統治期の朝鮮人詩人の作品について、7月12日の記事で分類した次の3つに分けて考えてみると・・・

(A)植民地支配に対する抵抗の意志を持ち、その思いを明確に書いた抵抗詩。 
(B)抵抗の意志はあったが、厳しい状況の中で、直接的な弾圧を避けるため、隠喩等を駆使して書いた作品。
(C)自覚的な抵抗の意志はなく書かれた抒情詩等。


 ・・・この(B)に該当する作品は、まさに(A)の明確な抵抗詩とはとられないように作者が苦心しているわけで、そのようにも解釈できるということが作品の眼目といえるでしょう。

 しかし、この「青葡萄」を抵抗詩とみる解釈が、自然石を旧石器と見誤るのとは違うと言い切れるかどうか?

 ところで、「金素雲・藤間生大の朝鮮詩論争」の中で梶井陟先生は次のように記しています。

 「青ぶどう」「ふるさとの古き伝説」、そして「海原のひらける胸」や「かの人」に、この詩人がどのような想いをこめたものか、わたしにはこうと断定することができない。この詩を「若干のペーソス」「いささかのノスタルヂア」と理解することもできるだろうし、また朝鮮の詩なるがゆえに「日本帝国主義」に結びつける立場も当然あるだろう。
 しかし、ここに一つの仮定を持ちだそう。
 それは、この詩に何の注釈もつけずにこの詩を紹介したばあいと、陸史の「文学を通しての抗日運動」(宋敏鎬)という経歴を、できるかぎり詳細に知らせたのちに読ませたばあいの、読者の受けとめ方のちがいはどうかということなのだ。
 おそらくは十人のうち九人までが、知る以前と以後の反応に大きな差が出てくるにちがいない。それがあたりまえなのだろう。
 これは詩の理解力などというもので律しきれるような性格のものではないと思うのだ。


 この一文が書かれたのが1971年。私ヌルボとしては、以後の40年の時の流れを痛感するばかりです。今、李陸史の抗日の経歴を読み、作品に込められている(かもしれない)寓意を知って、深く感動する人は十人のうち何人くらいいるでしょうか?

 「金素雲『朝鮮詩集』の世界」によると、韓国では以前から上述のような「祖国独立の念願を込めた郷土愛を芸術的に詩化させたものと見る向きが多い」とのことです。

 韓国のサイトをいくつか見てみると、たしかにそのような見方が多いようですが、ほとんどそのような解釈ということでもなさそうです。

 ヌルボが持っている「중학생이 꼭 읽어야할 시(中学生が必ず読むべき詩)」(2003)という学習書にもこの詩が載っているのですが、それには<主題>として<祖国光復に対する熱望(または豊かで平和な現実への渇望)>とカッコつきながら併記されています。さらに<討論する>の項目に、「抵抗詩とみる解釈と、純粋な抒情詩としてみる解釈について、各自の考えを述べなさい」というテーマが掲げられています。

    
【「中学生が必ず読むべき詩」。韓国の中学生レベルの<文学常識>を知るには便利な本。】

 この「青葡萄」の問題にかぎらず、日本統治期の文学の見方について、韓国では近年変化が見えはじめているように思いますが、それについては次回。(・・・って、またいつになることか?)

 →<金素雲・藤間生大の論争>再考④ 民族主義的な韓国文学史の叙述について
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韓国のカップラーメン

2010-11-06 23:57:13 | 韓国料理・食べ物飲み物関係
 9月のソウル旅行の記録を五月雨式にupしてきましたが、ただ歩いて回るだけでほとんどお金を使わなかったです。4日目に仲間と落ち合うまでは、晩飯も1人で安上がりに済ませました。そのうち1回はホテルの近所のコンビニで買ったカップラーメン。
ところが、コンビニでカップラーメンを買う時には、何種類もある中でどれを買うかずいぶん迷いました。
 私ヌルボ、韓国のカップラーメンは辛ラーメン以外はほとんど知りません。また、その辛ラーメンも含めて、赤いスープの辛いラーメンは食べられないことはないが好んで食べるというものでもなく、できれば辛くもなく、こってりもしていないものを食べたいという人柄同様(?)淡白な嗜好の持ち主。
 ところがコンビニに並んでいるカップラーメンは外装の写真を見るとほとんど真っ赤なスープのものばかり。
 その中で1つだけスープが赤くない「오다리라면(オダリラミョン)」というのがあったので、それを買って食べてみました。

    
   【写真だけで「辛くなさそう」と思ってしまいました・・・。】

 いやー、あとになって見てみると、「라면」の字の上にちゃんと「화끈한맛」(かっかと火照る味)と書かれてましたねー。たしかにさほど赤くはないものの、コチュジャンよりも胡椒の辛さが効いた、十二分に辛いラーメンでした。
 ※<オダリ>とは何かと思って調べたら、江南区三成洞にある五多里(オダリ)という店のラーメンをオトゥギ食品が製品化したもの。客・酒の肴・酒・キムチ・思い出の5つが多い店、という意味なんだそうです。


   
    【ヒーヒー言いながらも全部食べましたけどね。】

 カップラーメンといえば、フリーペーパーの「유학생활(留学生活)」10月号に、日本のカップラーメンについての韓国人留学生の立場からの記事が載っていました。

 (컵 누들은) 우리나라 사람들의 입맛에 가장 잘 맞은 라면이 아닐까 생각됩니다. 다른 컵라면은 일본 특유의 간장 맛이 강하여 못 먹는 사람도 많이 있는데, 컵누들은 의외로 외국인들의 입맛에도 잘맞는 것 같습니다.
 (カップヌードルは)韓国人の好みにいちばん合ったラーメンではないかと思われます。ほかのカップラーメンは、日本特有のしょうゆの味が強くて食べられない人も多くいますが、カップヌードルは意外に外国人の好みによく合っているようです。


 ・・・カップヌードルのように辛くなくても好まれるんですね。しかし、しょうゆ味はそんなに忌避されるものなのか・・・・。 ヌルボにしてみれば、生ガキにもコチュジャンをつけて食べるのを見て、韓国人の嗜好にうなってしまったことがあったのですが、その裏返しなんですかねー?

 今日横浜図書館で「新東亜」11月号を見ると「서울의‘일본라면’과 도켜의‘신(辛)라면’(ソウルの<日本ラーメン>と東京の<辛ラーメン>)」と題した記事がありました。
 中国に始まるラーメンが日本で発展し、日清食品の安藤百福氏によってインスタントラーメンが初めて作られ、世界に広まり、とくに庶民層の食に大きく貢献した。韓国でも・・・等々の内容ですが、その中で世界ラーメン協会による国別のラーメン消費量と、国民1人当たりの消費量が紹介されていました。後者では韓国は世界1位なのだそうです。そういえばドラマや映画でもラーメンを食べている場面はよくありますね。

   
【1人当たりの消費量、東南アジア諸国も多いですが、1位韓国は日本の1.7倍なんですね。】
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[韓国語] トゥルリムオプタ(間違いない)は日本語の直訳!?

2010-11-05 23:50:19 | 韓国語あれこれ
 韓国語を読んでいると、しばしば日本語と同じような言い回しがあることに軽い驚きを覚えることがあります。
 私ヌルボの場合、記憶に新しいところでは「만전을 기하다」(万全を期する)というのがありました。

 今回のテーマはこのような日本語と朝鮮語の表現の<共通性>についてです。

 横浜市立図書館の書架でたまたま南富鎭「文学の植民地主義」(世界思想社)という本が目にとまりました。日本統治期の朝鮮人作家と言語の問題等を書いた本のようです。
 パラパラと拾い読みしたら、なかなか興味深い記述がありました。

 林和(임화.1908~53)の、いわゆる「移植文学史」についてです。

 戦前の左翼詩人&文学評論家・林和については松本清張の「北の詩人」を20年ほど前(?)に読んで以来それなりに知っていましたが、南富鎭先生が「かの有名な」と枕詞を付している「移植文学史」については初めて知りました。

 「朝鮮近代文学の形成が日本近代文学の形成が日本近代文学の「移植」によってなされた」というもので、しかもこの問題の深刻性は、(林和の文を引用すれば)「新文学生成期にもっとも重要な問題であった言文一致の文章創造においては、朝鮮文学は全く明治文学を移植してきたことである」というのです。

 本書では、さらに金東仁(1900~51)の回想録からその「移植」の例をあげています。
 彼は明治学院在学中に回覧雑誌に日本語で書いた小説が「正真正銘の処女作」で、これは李光洙・李人植・朱耀翰も同様だそうです。小説の構想も「すべて日本語で想像した」という彼が「最も苦心したのが「用語」の問題だった」そうで、具体的に次のように記しています。

 小説で最も使われている「ナツカシク」「-ヲ感ジタ」「ニ違イナカツタ」「-ヲ覚エタ」のような言葉を「정답게」「을 느꼈다」「틀림없었다」「느끼었다」などというように - 一つの言葉にそれぞれあてはまる朝鮮語を得るため多くの時間を費やした。

・・・ほかにも、金東仁は小説での「過去詞」の使用、日本語の「カノ女」から「그」の採用など、自ら朝鮮語「口語体」を作りあげた苦心と自負を吐露しているそうです。
さらに金東仁の回想録から。

 日本語の「違ヒナカツタ」を直訳して「틀림없다」「다름없다」などと、はじめて書くときの不自然さはいまだにはっきり覚えている。・・・・ いま小説や詩を書く後輩たちのなかで、いったいだれかこのような苦心をしているたろうか。太古の時代よりこのような小説用語がすでに存在していたと思って書いているだろう。わが国の小説用語の建築 - そこには想像もできない苦心と躊躇があり、それを実行するときの果断な蛮勇があり、またそのような蛮勇によって築き上げられたのである。

 えーっ、そういうことだったのか、と私ヌルボ、内心驚きましたねー。
 すると冒頭に記したような日韓の表現の共通性というのは、朝鮮人作家日本の言文一致体を朝鮮語に置き換えていった結果ということなんですか!? (中国語起源の共通表現もあるでしょうが・・・。)
 では、シム・スボンの歌う「百万本のバラ」の歌詞中にもある「아낌없이 아낌없이・・・」という言葉も、たとえば有島武郎の「惜しみなく愛は奪う」の<惜しみなく>をそのまま置き換えたもの、ということなんですか・・・。

 この本でさらに興味深いのは、日本語で完成度の高い小説を書いた張赫宙金史良が、朝鮮語で書いた小説はどれも前近代的な勧善懲悪の累計を呈しているということ。
 小説で用いらる言語は小説の内容まで規定するんですね。村上春樹の作品はあの翻訳文のような文体によって逆規定されている、というようなものですかねー?
 南富鎭先生は次のようにまとめています。

 近代朝鮮語は日本語を合わせ鏡にして形成されてきた。言文一致の構造をはじめ、表現と文章レベル、語彙と表現の形態などの多くは日本語から借りたものである。やや語弊はあるが、現在の韓国人が使用している朝鮮語は、朝鮮王朝時代の朝鮮語とは大きく違う。どちらかといえばより日本語に近いかもしれない。近代日本語をモデルにして、翻案と翻訳、日本文をモデルにした言文一致などによって新しく作り直されたものである。近代朝鮮語と朝鮮近代文学は、近代日本こと日本近代文学に照射されることによって初めて<近代>を獲得することができたのである。

 ・・・民族主義的傾向が強いのがふつう(?)の韓国人の学者の中にもこうした分析をする人がいるんですね。彼は最後に、<旧植民地国家にはたして近代文学が成り立つのか>という問題を提起してこの論考を結んでいます。
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京畿高校という学校のこと  「韓国の日比谷高校」(?)

2010-11-04 23:32:26 | 韓国・朝鮮関係の知識教養(歴史・地理・社会等)
 いきなりクイズです。かなりディープな問題です。
 次の人々の共通点は何ですか?

・孫鶴圭(손학규.民主党代表)
・李会昌(이회창.2度の大統領候補)
・鄭雲燦(정운찬.前総理。元ソウル大総長等。)
・崔圭夏(최규하.朴正熙暗殺後の大統領)
・高建(고건.元首相)
・金宇中(김우중.前大宇グループ会長)
・金敏基(「김민기.歌手・朝露(アチミスル)」の作曲者)
・沈薫(심훈.「常緑樹」で知られる日本統治下の小説家)
・洪世和(홍세화.「コレアン・ドライバーは、パリで眠らない」の作家)
・朴泰桓(박태황.北京五輪水泳400自由形優勝)


 ・・・正解は、全員が京畿高校(or前身の京城第1公立高等普通学校)出身者ということ。

 京畿高校は、これまで各界に数多くの人材を輩出してきた韓国一の名門高校です。いや、「名門校だった」という方が正確かもしれません。昨年10月17日の記事にも記しましたが、1973年から進められた学校格差是正・学閥解消のため無試験&学区制=<高校平準化>によって突出した名門校とはいえなくなってきた、というわけです。
 しかし、今も上記クイズのように、私ヌルボが知るだけでも各界で活躍しているOBは10人前後いて、ましてや財界・官界・学界等では掃いて捨てるほど(たとえが失礼?)います。
 韓国のマスコミ等では、日本の日比谷高校に比していますが(学校群制度による衰退も含めて)、それ以上のようです。

 韓国のウィキによると、1990年代前半には、ソウル大教授の4人に1人は京畿高校出身だった、とあります。
 また<mkニュース>によれば、今年5月のソウル大第25代総長選挙では、当選した呉然天(오연천)も他の2人の候補者も全員京畿高校出身。先の23・24代総長も全員京畿高校出身だったとのことです。
 2007年には、「大統領選:有力候補4名は京畿高・ソウル大卒」ということもありました。

 京畿高校の沿革をみると、1900年京城第1公立高等普通学校として開校した、韓国の公立高校の中でも最も伝統のある高校ですが、ウィキの「江南(カンナム)」の説明にもあるように、江南開発の時期中の1976年に、<高校平準化>と合わせて鍾路区花洞から江南区三成洞に移転されました。
 それでも1980年にやはり西大門区から瑞草区に移転したソウル高校(日本人学校の京城中学校の地に設立)等とともに江南の教育の教育熱過熱の一要因とはなったようです。

 さて、私ヌルボ、なぜ今回この記事を書いたかというと、9月のソウル散策の時にその前を通ったからです。地下鉄三成駅からコーエックス内のキムチ博物館を観て、普恩寺に行って、ゆるやかな坂を越えて(「三成里土城」の碑があった)、清潭に向う途中、道に沿って左側に広々とした敷地の京畿高校がありました。
 門衛さんはいなくて、秋夕の関係か金曜でも生徒の姿は見えませんでしたが、構内に少しだけ入って写真を撮ってきました。中も見てみたかったんですけどね・・・。

  
    【カクチョー高い正門。右手に門衛さんの詰所がある。】

        
       【校訓は、まあこんなもんですか。】

 
      【文化館や生活館というのは何でしょうか?】

    
【公立校なのに学校のバスがあります。彼方に見える高層ビルは9月21日の記事で紹介した高級マンション。】

    
【塀の外にゴルフ大会で優勝した生徒3人を祝う横断幕。いかにも江南か。】
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[韓国] 100万ウォンの安月給でもまだマシ、という人も多い

2010-11-03 23:50:16 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 今上映中の映画「TSUNAMI ツナミ」で、海で溺れてピンチのところを海洋救助隊員のヒョンシク(イ・ミンギ)に助けられたヒミ(カン・イェウォン)は、ヒョンシクの月給が100万ウォン(日本円で73,100円)と聞いて驚きます。「人の命を救ってたったそれだけ!?」

 これも上映中の「義兄弟」。国家情報員をクビになって、逃げたベトナム人妻などを捜す探偵業をやっているイ・ハンギュ(ソン・ガンホ)は、北朝鮮工作員ソン・ジウォン(カン・ドンウォン)に自分の下で働いてほしいと声をかけます。給料を尋ねるジウォンに、ハンギュは「今まで2人で200万ウォンだった」と答えますが、ジウォンは300万ウォンを要求し、ハンギュは受け入れます。

 どちらの場合も、およそ月給100万ウォンあたりが安月給というイメージで語られています。

 そういえば、<88万ウォン世代>という新語がありましたね。およそ1977~86年生まれの、非正規雇用が多い世代のことです。

 ここで2010年の日韓の最低賃金を比較してみると・・・・

 [韓国] ※ウィキの최저임금(最低賃金)による。
 時間給=4,110ウォン(300円)  
 日給=32,880ウォン(2,404円) 
 月給[40時間制]=858,990ウォン(62,792円)・月給[44時間制]928,860ウォン(69,900円)


 [日本] ※厚生労働省のサイトによる。(都道府県により異なる。)
 時間給=東京都821円・神奈川818円。全国平均730円。

 ・・・日本より全般的に低い韓国の物価を考えても、この賃金水準では苦しいでしょうね・・・。

(※横浜のマックでバイトやってる高校生が「時給818円」とハンパな数字を言ってたのは、やっぱりちょうどこの額だったんだな。)

 さて、私ヌルボが、映画の本筋とは関係ない些末な数字をメモしていた理由は、10月13日付「ソウル新聞」の「文化産業の日陰の労働者<万年>アシスタントの自画像」「月最低賃金ももらえず・・・週44時間以上の殺人的労働」という2つの記事を読んでいたからです。
 それによると、ファッション雑誌、写真スタジオのアシスタントや映画のスタッフたちは非常に劣悪な労働環境に置かれているそうです。
 ファッション雑誌社で働く入社4年目の女性(27)は東京とアメリカでファッションデザインを学んだ履歴はあっても正社員でない<専門アシスタント>。激務なのに月給は30万ウォン(!)。3年目以降のアシスタントのことを<専門アシスタント>とよぶそうです。
また写真スタジオのアシスタントすなわち<Aフォト>の男性(29)は月に10日も徹夜勤務で、週5日制はよその国の話とのことです。
 この<専門アシスタント>や<Aフォト>という言葉は新語になっているとか。
 もちろん韓国にも日本の労働基準法同様に勤労基準法(근로기준법)があるのですが、きちんと守られていない実態があるようです。

 そういえば最近「低年齢化進むガールズグループ、労働基準法違反の疑いも」というニュースもありましたね。KARAのカン・ジヨンなど、13~15歳の青少年を雇用する際に取得が義務付けられている就職認可証を取得しないまま活動していたという件。(その後どうなったのかな?)
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[10月29日(金)~31日(日)]

2010-11-02 20:50:46 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 10月は7本の映画を観て、今年通算48本に。この数年とほぼ同じ年間60本ペースです。10月の7本中4本が韓国映画。最新はめずらしく封切日の30日(土)に観た「義兄弟」「ツナミ」「国家代表」と立て続けに昨年~今年の韓国での大ヒット作3つを観たわけですが、個人的には「義兄弟」が断然おもしろかったですね。以下「国家代表」、「ツナミ」と観客動員数とは逆の順位。ま、私見ですけど・・・。
 北朝鮮のスパイ物はどうしても現実の北朝鮮のことがアタマから離れなくて、楽しむにもブレーキがかかってしまうことの多い私ヌルボですが、「義兄弟」は展開の妙と、何よりもソン・ガンホとカン・ドンウォンがそれぞれ持ち味を発揮して◎です。ただ、これも関東地方の上映館はシネマート新宿と109シネマズ川崎の2館だけ。韓国映画はいっときのようなブームは去ったといわれますが、どうも宣伝&上映戦略には首をかしげざるをえません。
 たとえば「過速スキャンダル」なんて観た人はほとんど大満足すると思うんだけどなー・・・。←観てない方はDVDでぜひ! アマゾンのレビューを見たら4人全員星5つで、1人は「星10個くらいあげたい!」と記してますよ。

   ★★★ Daumの人気順位(11月2日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①泣くな、トンズ(韓国)  9.9(314)
②ゴッドファーザー2  9.7(53)
③Live in 3D フィソン It’s Real(韓国)  9.6(34)
④アジョシ[おじさん](韓国)  9.3(5467)
⑤サンキュー、マスター・キム(豪・日)  9.3(20)
⑥怪盗グルーの月泥棒  9.2(260)
⑦Letters to Juliet  9.0(489)
⑧喝  (韓国)  8.9(22)
⑨奇跡のオーケストラ – エル・システィマ  8.9(20)
⑩招かれざる客(韓国)  8.8(29)

 ①は314人に増えても9.9の評点を維持。驚異の数字です。実のところどうなのか、実際に観てたしかめたいという気になってきます。 
 初登場は⑧だけ。ポスターには「2010年10月14日イエスと仏が初めて出会う」とあります。孤児院で兄弟のように育ったウチョンとミカエル。神父になったミカエルの引止めにもかかわらずウチョンは出家する・・・、という宗教をテーマにしたドラマのようです。やはり韓国は日本に比してはるかに宗教関係の映画が多いようです。

【専門家による順位】

①ゴッドファーザー2  9.0(3)
②オッキの映画(韓国)  8.5(5)
③ブンミおじさん  8.1(7)
④キム・ポンナム殺人事件の顛末(韓国)  8.0(8)
⑤インセプション  7.7(8)
⑥不当取引(韓国)  7.6(6)
⑦スカイ・クロラ(日本)  7.6(3)
⑦バッハ以前の沈黙  7.6(3)
⑨招かれざる客(韓国)  7.5(2)
⑩サンキュー、マスター・キム(豪・日)  7.2(4)
⑩啓蒙映画(韓国)  7.2(4)

 ⑥「不当取引」と⑦「スカイ・クロラ」が新登場。
 ⑥「不当取引」については後述。
 ⑦「スカイ・クロラ」、とくに忌避してるわけではないのですが、押井守監督作品は全然観てないし、原作者森博嗣の本も全然読んでないので、なんともコメントしようがありません・・・。クロラというのはCrawlersのカタカナ表記なのか。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[10月29日(金)~31日(日)] ★★★
         「不当取引」が初登場で圧倒的1位に

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・封切り日・・・・・・週末観客動員数累計・・・・観客動員数・・・・上映館数

1・・不当取引(韓)・・・・・・・・・・・・・10/28・・・・・・・・617,386・・・・・・・・・・・・・・・717,814・・・・・・・572
2・・深夜のFM(韓) ・・・・・・・・・・・・10/14・・・・・・・・146,321・・・・・・・・・・・・・1,059,990・・・・・・・390
3・・ガフールの伝説・・・・・・・・・・・10/28・・・・・・・・146,321・・・・・・・・・・・・・・・159,990・・・・・・・295
4・・パラノーマル・アクティビティ2・・10/21 ・・・・・・92,881・・・・・・・・・・・・・・・324,250・・・・・・・217
5・・パンガ? パンガ!(韓)・・・・09/30・・・・・・・・・55,886 ・・・・・・・・・・・・・・・962,869・・・・・・・260
6・・シラノ:恋愛エージェンシー(韓)・・09/16 ・・・・・53,104・・・・・・・・・・・・・・2,683,829・・・・・・・278
7・・ナタリー(韓) ・・・・・・・・・・・・・・10/28・・・・・・・・・44,888・・・・・・・・・・・・・・・・・58,759・・・・・・・210
8・・ジュリエットへの手紙・・・・・・10/07・・・・・・・・・・42,471・・・・・・・・・・・・・・・557,897・・・・・・・175
9・・ウォール・ストリート ・・・・・・・10/14・・・・・・・・・・37,860 ・・・・・・・・・・・・・・・229,159・・・・・・・277
10・・剣雨江湖・・・・・・・・・・・・・・・10/14・・・・・・・・・・12,661 ・・・・・・・・・・・・・・・312,293・・・・・・・155

 1・3・7位が初登場です。
 1位「不当取引」の数字は抜群! 「韓国映画スタッフブログ」の予想通りです。「他に期待作がない」だけではなく、「今年一番のヒットのウォンビンの「おじさん(アジョシ)」を越えた!!という声まで聞こえている」ということだそうです。原題は「부당거래」。「거래(去来)」で「取引」の意、というのは韓国語初級の上レベルですか? で、商売の話かと思ったらさにあらず。連続殺人事件の犯人があがらない、という設定。連続殺人モノといっても「殺人の追憶」や「チェイサー」とはかなり違うようで・・・。もっと詳しく知りたい向きには上記の「韓国映画スタッフブログ」を参照されたし。監督はリュ・スンワン、主演はファン・ジョンミン、リュ・スンボム、ユ・ヘジンです。
 3位、日本では韓国より早く10月1日から公開しているので説明省略。韓国題は「가디언의 전설(ガーディアンの伝説)」です。
 7位、タイトルだけ見ると洋モノかと思ってしまいますが、韓国映画です。ナタリーは彫刻の女性像の題。そのモデル女性をめぐる彫刻家と美術評論家。この3人の男女の時空を超越した愛の交錯と秘密を盛り込んだミステリーメロ、ということです。イ・ソンジェ、キム・ジフン、パク・ヒョンジン主演。
 2つの韓国映画「パンガ? パンガ!」と「シラノ:恋愛エージェンシー」は息が長いですね。とくに低予算映画の前者。どこまで続く?
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