今回は、「色絵 桜御所車文 小皿」の紹介です。
表面
表面の一部の拡大
桜花文は、まず薄い染付の輪郭線を描き、その上を赤線でなぞって表わしています。
鍋島の特徴を示しています。
側面
斜め上から見た底面
底面
生 産 地 : 肥前・鍋島藩窯
製作年代: 江戸時代末期~明治
サ イ ズ : 口径;14.9cm 底径;7.0cm 高さ;4.3cm
なお、この「色絵 桜御所車文 小皿」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介しているところです。
つきましては、その際の紹介文を次に再度掲載することをもちまして、この「色絵 桜御所車文 小皿」の紹介とさせていただきます。
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<古伊万里への誘い>
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*古伊万里ギャラリー192 伊万里鍋島様式色絵桜御所車文小皿 (平成26年4月1日登載)
御所車(牛車)の車輪を図案化した家紋の源氏車を二輪描いて御所車を連想させ、それに桜花を添えている。
御所車も桜花も、それぞれ、単体でも十分に豪華絢爛さを忍ばせるのに、御所車と桜花とを合わせて描いて、いやがうえにも華やかさを際立たせている。
この、御所車と桜花を描いた文様のものは、
「桜花と御所車を華やかに描いた文様は盛期以後、後期、幕末、更には明治以降まで色絵、染付共に継続製作されている。人気の高い文様であったことが判る。
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(小木一良著 「鍋島Ⅱ─後期の作風を観る─」(創樹社美術出版)P.83) 」
とあるように、人気が高く、長い間、作り続けられたようである。
この小皿は、鍋島としては、比較的に雑な絵付けであり、幕末から明治頃に作られたものであろう。
それでも、造形的には、口縁から底の方に行くに従って厚作りにするとともに木盃形とし、色絵の桜花文については、まず薄い染付の輪郭線を描き、その上を赤線でなぞって描くなど、一応、「鍋島」の矜持を保っている。
江戸時代末期~明治 口径:14.9cm 高台径:7.0cm 高さ:4.3cm
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*古伊万里バカ日誌122 古伊万里との対話(御所車文の小皿)(平成26年4月1日登載)(平成26年3月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
御所車 (伊万里鍋島様式色絵桜御所車文小皿)
・・・・・プロローグ・・・・・
「桜花爛漫の候」ももうすぐである。
主人は、「桜花爛漫の候」を直前にして、ちょっとばかり時間を先取りし、絢爛たる桜花文の古伊万里と対話をしたくなったようで、それらしきものを「押入れ」から引っ張り出してきては対話を始めた。
主人: もうすぐ「桜花爛漫の候」だね。日本人は、皆、桜花爛漫を待ち焦がれているな~。今日は、待ちきれなくなって、時間を少しばかり先取りしてお前と対話をしたくなった。
御所車: そうですね。皆さん、待ち焦がれているようですね。特に今年の冬は例年に比べて寒かったようですから、尚更ですね。
主人: ところで、私は、これまで、ず~っと、お前のような文様は、山間にある水車小屋とその近くに咲く桜を組み合わせて描いてあるものとばかり思っていたんだ(~_~;) つまり、山間の、水車小屋のある、のどかな春の光景を描いてあるものとばかり思っていたんだ。
お前のように、車輪と桜花を組み合わせて描いたものは、よく「鍋島」の図録や本には登場してくるんだから、よく注意して読んでいれば、そうではないことは判ったんだろうけれど・・・・・。しかし、なにせ、「鍋島」のこの有名な車輪と桜花を組み合わせた文様の皿など、頭っから、とても買えるわけがないと思っていたものだから、よく注意して読んでもいなかったんだね。「私には関係ないよ!」とばかりに!
ところが、偶然にお前を手に入れ、実際に手に取って眺めてみると、山間ののどかな春の光景とは違和感を感じたんだ。鄙びたのどかな山間の春の光景とは思えないんだよ。華やか過ぎるんだ。
御所車: それでどうしたんですか。
主人: ちょっと調べてみた。有名な文様だけに、調べるのは簡単だった。
「車輪」は正に「車輪」を描いたものであって、「水車」を描いたものではなかったんだね。結局、この「車輪」は、御所車(牛車)の車輪を意味しているので、この「車輪」から御所車を連想させるんだね。だから、この「車輪」だけで華やかさを連想させてしまうんだね。
また、御所車の車輪を図案化した家紋まであることもわかったよ。「源氏車」というらしい。
御所車: そうですか。「車輪」だけで御所車を連想させ、それだけでも十分に華やかさを連想させますのに、更に桜花を付加して華麗さを増幅させますから、全体として絢爛豪華になるんですね。
主人: そうなんだ。山間ののどかな光景ではなく、都(みやこ)の絢爛豪華な光景だったんだね。
御所車: ところで、ご主人は、私をどこから買ってきたんですか?
主人: うん。そうだよね。こんな華やかな物は、我が家の所在する周辺の、こんな鄙びた場所では手に入らないからね。インターネットを通じて購入したんだよ。
私は、ネットオークションをやらないし、インターネットを通して購入することは極めて稀なんだけれど、その稀な方法で手に入れたわけだ。
そもそも、私は、古い人間なので、インターネットの画像だけで判断して購入する気にはならないんだよ。現物を直接手に取って、その手取りの重さ加減とか、土の質とか、釉薬の微妙な違い、色絵の場合にはその色絵具の微妙な色合いなどから判断して、全体として訴えるものがある場合に購入することにしているんだよ。画像だけからの、見た目だけからの判断では購入していないんだ。もっとも、典型的なものは、画像を見ただけでも、その手取りの重さとか土の質、釉薬の具合等を想像できるので、画像を見ただけで購入することはあるけれどね。
お前の場合は、ネットショップというやつで手に入れたんだ。そのネットショップを開いている現実のお店は、我が家からははるか遠くにあって、おいそれと行ける所ではないんだ。ただ、以前に、その現実のお店には実際に一度だけだが行ったことがあり、それで、そのお店の主人の人柄や実力を知っているので、そのお店の主人を信用して購入したんだよ。ということは、ネットショップの画像だけから判断して購入したわけではないことになるのかな・・・・・。
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追 記 (令和3年12月1日)
今日、調べもののために、「鍋島Ⅱ─後期の作風を観る─」(小木一良著 創樹社美術出版 平成16年発行)をパラパラとめくっていましたら、この「色絵 桜御所車文 小皿」とよく似たものが載っていることを発見しました。
参考までに、同書のP.117を次に抜粋して紹介いたします。
色使いや絵付けの特長、櫛歯文の丁寧さ、色々と判断するポイントはあるようですが
私の場合は伊万里を収集し始めた早い時期から、「鍋島は手を出したらアカン」と思っていました。
それでも二つばかり買ってしまう訳ですから、難儀な趣味なのは確かです。
この品は図録で見かけるタイプの品ですが、裏面とかを見ると確かに幕末~明治という感じがしますが
そこは鍋島ですんで、同時代の小皿とは存在感が違いますよね!。
とても品格があります。
後期には、うわべだけなぞったような鍋島が増えてくる気がしますが、この皿は鍋島の精神を保っていると思います。
リスク承知のうえ、ネットショップで入手した価値は十分ありますね。
でも、やはり、伊万里好きは憧れてしまうんですよね(^_^)
私も、伊万里の収集を始めた頃から、鍋島には手を出してはいけない、と肝に銘じてきました。
でも、だんだんと、盛期鍋島だけではなく、後期鍋島というものが存在し、それも一応「鍋島」ということが分かってきてから、後期鍋島には手を出すようになりました。
このような文様の盛期鍋島など、とても手に入りませんが、後期鍋島なら手が届くようになりましたものね。もっとも、これは、厳密には後期鍋島に入るのかどうかは問題ですが、、、。
わざわざ、記事を遡ってごらんいただき、ありがとうございます。
後期鍋島も、確かに「うわべだけなぞったような鍋島が増えて」きているように思えますね。
その点、これは、薄い染付線で文様の輪郭線を描き、その線をなぞって色絵を付けていたりしますので、「鍋島の精神を保っている」と思います(^_^)