Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染付 盆栽文 中皿

2021年07月11日 10時57分24秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 盆栽文 中皿」の紹介です。

 

 

表面

時計の針の2時の方角に欠けがあります。

 

 

盆栽文部分の拡大

 

 

裏面

 

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代前期

サ イ ズ : 口径;20.5cm 高さ;3.8cm 底径;10.5cm

 

 

 厚手でずしりと重く、丈夫そのもので、投げても割れそうもない感じです。でも、現実には、実際に投げられた時に付いた疵なのかどうか判りませんが(笑)、口縁に欠け(口縁の時計の針の2時の方角)があります(爆)。 やはり、これでも、陶磁器のようです(笑)。

 ところで、この「染付 盆栽文 中皿」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で、既に紹介しているところです。

 それで、次に、その時の紹介文を再度掲載し、この「染付 盆栽文 中皿」の紹介とさせていただきます。

 なお、その時の紹介文中には、「古伊万里の分類」の記述が縷々登場してきますが、それは、その時の紹介文を書いた時点での「古伊万里の分類」であることをご承知おきください。「古伊万里の分類」につきましては、古伊万里研究の進展に従って変化しており、現時点での分類とは違いがあります。

 

 

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        <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー153 古伊万里様式染付盆栽文中皿    (平成22年11月1日登載)

 

 

 この中皿は、初期伊万里の特徴を色濃く宿しているわけでもなく、かといって、古九谷の特徴を色濃く宿しているわけでもない。

 人によっては、初期伊万里様式の古伊万里に分類したり、或いは、古九谷様式の古伊万里に分類したりするのではないかと思われる。

 売る側からすれば、その時の相場によって、初期伊万里の方の値段が高い時は「初期伊万里」として売り、古九谷の方の値段が高い時は「藍古九谷」として売るんじゃないかと思われる(~_~;)

 私としても、どのように分類すればいいのかと悩むところだ。

 古伊万里の分類については、「古九谷」が「古伊万里」に含められるようになってからは、それまでの反動からか、初期の頃に作られた古伊万里のうちで、典型的な初期伊万里の特徴を有しないが優品に属するものは、皆、古九谷様式の古伊万里に分類されてきたように思われる。
 その結果、雑多なものがひっくるめられて全て「古九谷様式」とされてしまい、冷静に考えると、では、典型的な古九谷様式というものは一体どのようなものなのかと問われた場合、その返答に迷うのである(>_<)

 そういうこともあってか、最近、戸栗美術館では、色絵製品の一部の「祥瑞手・五彩手・青手」のみを「古九谷様式」と分類し、「古九谷様式」の分野を極めて限定的にしている。
 そうすれば、典型的な「古九谷様式」の姿が浮かび上がってくるわけで、それから外れたものは「古伊万里様式」にすればよいわけである。
 もっとも、それから外れたものでも、典型的な柿右衛門様式に属するものは「柿右衛門様式」に分類するし、典型的な鍋島様式に属するものは「鍋島様式」に分類するようだ。

 この戸栗美術館の方式に従えば、これまで「古九谷」に分類されてきた「吸坂手」、「青磁手」、「瑠璃手」等は、古伊万里様式に分類されることになる。勿論、染付は全て古伊万里様式になるわけである。

 このように分類すれば、かなり明確になるような気がするので、私もそれに従い、この中皿を「古伊万里様式」に分類したのである。

 

江戸時代前期     口径:20.5cm   高台径:10.5cm

 

 

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*古伊万里バカ日誌85 古伊万里との対話(盆栽文の中皿)(平成22年11月1日登載)(平成22年10月筆) 

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  凡 才 (古伊万里様式染付盆栽文中皿)

 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 そろそろ菊のシーズンになってきた。そこで、主人は、菊を描いた古伊万里と対話をしたくなり、押入れ内を物色し始めた。菊を描いた古伊万里は多いので、乏しい主人のコレクションの中にもそれは当然存在するであろうとの算段からである。
 ところが、探し始めてほどなく、主人にとっては新発見のような古伊万里と遭遇してしまい、当初の目的など何のその、さっそく、その古伊万里を引っ張り出して対話を始めた。

 


 

主人: お前のことはすっかり忘れていた。押入れ内を捜していてお前を見つけた時は、「あれっ! 我が家にこんなのがあったっけか?」との思いだった。ホント、すっかり忘れていたよ(~_~;)

凡才: ご主人は私を何時買われたんですか?

主人: 「押入れ帳」を調べてみたら、平成10年に或る骨董市で買っているんだよね。でも、全然その記憶がないんだ。

凡才: どうしてそんなにすっかり忘れられてしまったんでしょうか。悲しくなります(>_<)

主人: 悪い悪い。おそらく買ってきてすぐに押入れに入れてしまい、それっきりにしたからだろうね。
 買うに際しての特別なエピソードもなかったからかな。特に気に入って買ったとか、特別に値切って買ったとか、或いは高く売り付けられたとか、そういうことがなかったんだよね。インパクトがなかったので記憶に残っていないわけだ。

凡才: でも、どうしてそのような、ご主人の胸を打つこともないようなものを買われたんでしょうか。失礼ながら、ご主人はそれほど裕福なわけでもないわけですし、古伊万里を購入する資金も限られているわけですから、もっと、他に、買うべきものがあったと思うんですが。

主人: どうしてなのかな~。名品でもなく珍品でもないお前のような平々凡々なものをどうして買ったのかな~。
 当時の記憶がないので定かではないが、たぶん、「初期伊万里と言えるほどではないが、かなり古い。かといって、古九谷様式と言えるほどの特徴もない。いったい、古伊万里のどの様式に分類すればいいのかな~」と興味を持ったからではないかと思う。また、「この手のものもだんだんと少なくなってきているから、今おさえておかないと、後ではなかなか手に入らなくなるだろう。」と思ったからかもしれないな。

凡才: それじゃ、全くの平々凡々というわけではなく、少しは見所もあるんじゃないですか・・・・・。

主人: そう言われればそうだが、私から見れば、多少の見所があるにしても、やはり平々凡々に映るかな。私の記憶に残らないぐらいなんだから・・・・・。

凡才: 今、「多少の見所があるにしても」と言われましたが、その「多少の見所」というのはどういう所ですか?

主人: そうね。見た目よりも古いというところかな。「表」を見ると、さほどの古さは感じられないのだが、「裏」を見るとかなりの古さを感じるんだよね。
 ただ、手に取ってみるとずしりと重いんだ。それで、なんだ、やっぱりこれは「くらわんか手」の上手ものなのか、それほど古くはなかったんだ、と思うんだけど、親指と中指の間にお前を入れてなぞってゆくと、底の方が厚くなっていて、口縁の方に行くに従って薄くなっていることがわかるわけよ。
 このような成形の仕方は初期伊万里の特徴なんだよね。お前は典型的な初期伊万里の特徴は備えていないが、初期伊万里の名残を宿しているな~と感じさせるわけだ。
 そういうところから、見た目よりも古いなと感じるわけさ。

凡才: それ以外にも「多少の見所」というのはあるんですか?

主人: う~ん。盆栽文が、デーンと真ん中に大きく描かれているところかな。普通、盆栽文は小さく描かれていたり、中心からはずして描かれていることが多いからね。それに反して、花籠文の場合は、真ん中にデーンと大きく描かれていることが多いんだ。その点、、お前は、盆栽文にしては珍しいと思うよ、花籠文みたいだ。

凡才: そうですか。こうして聞いてきますと、「多少の見所」どころか、けっこう見所があるじゃないですか(*^_^*)

主人: まぁな。今、改めて観てみれば、けっこう見所があるのかな・・・・・。お前の名前を、お前のことを「平々凡々」と思ったから、「盆栽」を「凡才」にひっかけて、「凡才」としたが、ちょっと失礼したかな(~_~;)

 

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Dr.kさんへ (遅生)
2021-07-11 12:07:52
盆栽紋がデーンと中皿に鎮座していると、相当の迫力ですね。
厚い器体も迫力を増強。
それに、青?書?の底銘も興味深々。
これは、凡才君ではなく、非凡才君ですね(^.^)
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遅生さんへ (Dr.K)
2021-07-11 16:24:04
盆栽文が真ん中にデーンと大きく描かれているのも珍しいですよね。
普通、盆栽文は、控えめに、慎み深く、もっと小さく、真ん中から外して描かれますよね(^_^)
これは、態度がデカイです(笑)。

この皿の高台内の「青」のような銘は、例の、柴田コレクションⅣの巻末の「17世紀末から19世紀中葉の銘款と見込み文様」にも紹介されていますが、そこでは、それは、「1850~1860年代」とされています。
この皿は、いくらなんでも、「1850~1860年代」とは思えませんものね。
多分、「1850~1860年代」の物の元となった、17世紀末よりも前に作られたものなのではないかと思うわけです。
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Dr.kさんへ (酒田の人)
2021-07-11 21:02:27
寛文期の藍九谷、しかも大きく描かれた盆栽文、個人的に大好きなタイプの品です
裏面を見るとより時代がはっきりわかりますよね!
「青銘」ですが、ウチの「染付岩鳥文五寸皿」
https://blog.goo.ne.jp/sakatanohito/e/72274fa69d57190d1786e6d661dd14a8
も落款は「青」ですので、同じ窯の品なんでありましょうか。
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酒田の人さんへ (Dr.K)
2021-07-12 09:13:46
酒田の人さんの所の「染付岩鳥文五寸皿」を、改めて拝見してきました。

藍九谷の銘では、「金」、「古人」、「車輪福」、「嘉」、「誉」などが有名ですが、「青」は少ないですよね。
同じ窯元なのかもしれませんね。
ただ、この皿は、まだ、典型的な藍九谷になっていませんので、両者には年月の差があるのかもしれませんね。
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こんにちは (つや姫日記)
2021-07-12 12:33:36
盆栽を凡才さんとは
失礼ですよね。(笑)

重厚な格調高い品にかんじます。
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つや姫日記さんへ (Dr.K)
2021-07-12 14:15:20
ははは、「盆栽」の発音と「凡才」の発音が同じなものですから、安易に「凡才」としてしまいました(笑)。
良く見てみれば、古格もあり、堂々としたところもあり、、、で、なかなかな非凡なところを垣間見せるようです(~_~;)
失礼してしまったかもしれません(^-^*)
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