難儀する者からとっていいのか?

2013-01-28 10:02:01 | 議会活動
「盗みの三か条」という言葉をご存知でしょうか。これは伝統的な「本格の盗人(ぬすっと)」が守るべきこととされる掟で「盗まれて難儀をする者へは手を出さぬこと、人を殺めぬこと、女を手込めにせぬこと」の三か条です。池波正太郎さんが書いた「鬼平犯科帳」に出てくる言葉です。泥棒でさえ難儀する者からは盗らなかったのです。

今日の新聞報道によれば政府は生活保護費を740億円削減するとのことです。96%の世帯で受給額が現在よりも引き下げになります。引き下げ額は最大で10%にもなるとか。まさに「難儀する者」を手にかけることになります。生活保護については不正受給の問題や働いている世帯よりも支給額が上回っているなどという批判があります。しかし報道によれば不正受給は1%ということですし、必ずしもすべてで働いている世帯を上回るということでもありません。生活保護を受給している多くの皆さんは、病気や高齢などで働きたくても働けない方です。今回のように一律に削減するというやり方はいかがなものでしょうか。

先日商工会の新年会でベストセラーになった「国家の品格」を書かれた、藤原正彦さんのお話をお聞きする機会がありました。藤原さんはいま日本では武士道精神がすたれている、弱いものにたいする「惻隠の情(そくいんのじょう)」が必要だとおっしゃっていました。生き馬の目を抜くという商売の世界でも、江戸時代の近江商人は「売手よし、買手よし」に「世間よし」を加え「三方よし」の経営哲学を掲げていました。決して自分だけ儲かればいいというのではありませんでした。武士道精神に影響を受けた商人道精神が脈々と生きていました。

(注)惻隠の情 孟子の言葉で相手に対しての思いやりの心です。弱いものをかばう心、親孝行する心などすべて「惻隠の情」です。

安倍政権が掲げる「日本を取り戻す」ということは、こうした日本の良き伝統や文化を守り育てて行くということではないのでしょうか。難儀する者から取って、もうけをため込んでいる大企業には応分の負担を求めないというのであれば、武士道精神からはずれることになります。小泉さんが行った新自由主義がまたもや跳梁跋扈(ちょうりょう・ばっこ)することになるのでしょうか。

(注)跳梁跋扈 「悪者などが勢力をふるい、好き勝手にふるまうこと。「悪徳商法が―する」などと使います。

あの3・11の時も被災地の皆さんは相手を思いやる気持ち忘れず、配給にも混乱することもなく整然と並んで自分の順番を待っていました。その姿が報道されるや、世界中から大きな賞賛の声があがりました。弱いもの困っているものに対する惻隠の情こそが日本の絆の原点ではないでしょうか。難儀する者からさらに引きはがすようなやり方は、為政者としていかがなものでしょうか。                    


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