何度も繰り返すようだが最近は性懲りもなく仕事の夢ばかり見る。夢の中の自分はいつも何かに追われるようにして毎日をアクセクと過ごしている。それらの夢は多かれ少なかれ今の生活状態を反映したものだろうと思う。生活状態というよりは生活の輪郭ないし生活の雰囲気といったほうが近いかも知れない。目覚めるといつも後ろ髪を引かれる思いで夢の中の出来事を今一度反芻しようと試みる。けれど無情にも記憶の方は急速にフェイド・アウトしてゆく。夢はマボロシであり夢は手の届かぬものであり夢は可能ならざるもの。そういった苦々しい思いだけが残る。
ジャック・ブレルJacques Brelの古い歌がデジタル・リマスター盤として新たに発売されるというアナウンスを耳にしたのは確か三年前の夏のことだ。未発表曲も何曲か含まれているというので発売前からアマゾン・フランスに速攻で予約注文を入れた。品物が手元に届くとすぐに昂ぶる気持ちを抑えつつ2枚組CDの1枚目をオーディオ装置にセットした。冒頭の曲はミュージカル「ラ・マンチャの男」のメインテーマ《見果てぬ夢La quete》だった。1960年代の末に唄われた歌だ。はるかな昔にラジオ番組でその歌を初めて聴いた時に受けた「決然たる寂寞さ」といった重い印象が歳月を隔てて再び蘇った。私の中でブレルは未だ生きていたのだ。ただし以前のものに比べると新しいCDは非常に臨場感に溢れたワイドでクリアでヴィヴィッドな音源に変貌していることに驚いた。技術もまた芸術の一要素であるという陳腐な道理を今更ながら再確認した次第だ。そしてブレル本人がそのことに一切関与できない不幸を少しだけ悲しんだ。
不可能を夢見ること
旅立ちの悲しみを心に抱くこと
可能なかぎり情熱を燃やすこと
誰も行かない場所に向けて出発すること
心引き裂かれるまでに愛すること
余計だろうが 悪かろうが 愛すること
非力だろうが 無防備だろうが 試みること
手の届かぬ星に到達するために!
最近ではそのブレルの新しい音源を含むマイ・フェイバリット・ソングズの数々をMP3プレイヤーなんぞに詰め込んで外出の際に持ち歩いている。いわゆる老人の手慰みである。野外のさまざまな場所さまざまな機会さまざまな場面でイヤホンを通じてそれらの歌々を聴いている。何のことはない。かつてウォークマン世代に強く反発し対峙した偏屈者が何のハズミかその後宗旨替えして晩節を汚すようになっただけのことである。清貧の思想が物欲の論理に駆逐され倹約の美徳が贅沢は素敵だ!に変貌する。単純生活者(シンプルライフ)を目指していた者のナレノハテ斯くの如しである。ちなみに歩行中は原則として聴かない。この年になっても未練がましく交通事故には絶えず気をつけているのである。自重が悦楽を抑制する臆病者の人生を生きているのである....
ジャック・ブレルJacques Brelの古い歌がデジタル・リマスター盤として新たに発売されるというアナウンスを耳にしたのは確か三年前の夏のことだ。未発表曲も何曲か含まれているというので発売前からアマゾン・フランスに速攻で予約注文を入れた。品物が手元に届くとすぐに昂ぶる気持ちを抑えつつ2枚組CDの1枚目をオーディオ装置にセットした。冒頭の曲はミュージカル「ラ・マンチャの男」のメインテーマ《見果てぬ夢La quete》だった。1960年代の末に唄われた歌だ。はるかな昔にラジオ番組でその歌を初めて聴いた時に受けた「決然たる寂寞さ」といった重い印象が歳月を隔てて再び蘇った。私の中でブレルは未だ生きていたのだ。ただし以前のものに比べると新しいCDは非常に臨場感に溢れたワイドでクリアでヴィヴィッドな音源に変貌していることに驚いた。技術もまた芸術の一要素であるという陳腐な道理を今更ながら再確認した次第だ。そしてブレル本人がそのことに一切関与できない不幸を少しだけ悲しんだ。
不可能を夢見ること
旅立ちの悲しみを心に抱くこと
可能なかぎり情熱を燃やすこと
誰も行かない場所に向けて出発すること
心引き裂かれるまでに愛すること
余計だろうが 悪かろうが 愛すること
非力だろうが 無防備だろうが 試みること
手の届かぬ星に到達するために!
最近ではそのブレルの新しい音源を含むマイ・フェイバリット・ソングズの数々をMP3プレイヤーなんぞに詰め込んで外出の際に持ち歩いている。いわゆる老人の手慰みである。野外のさまざまな場所さまざまな機会さまざまな場面でイヤホンを通じてそれらの歌々を聴いている。何のことはない。かつてウォークマン世代に強く反発し対峙した偏屈者が何のハズミかその後宗旨替えして晩節を汚すようになっただけのことである。清貧の思想が物欲の論理に駆逐され倹約の美徳が贅沢は素敵だ!に変貌する。単純生活者(シンプルライフ)を目指していた者のナレノハテ斯くの如しである。ちなみに歩行中は原則として聴かない。この年になっても未練がましく交通事故には絶えず気をつけているのである。自重が悦楽を抑制する臆病者の人生を生きているのである....